先日紹介した「居場所のない子どもたち」を書かれた鳥山敏子さんの本です。
実は、こちらを先に読み始めたのですが、途中でやめていました。
と言うのは、国旗を掲揚するときや国歌斉唱のときに起立させることに、反対しているかのような記述が最初の方にあったので、単に戦争反対を訴えるだけの思想の持ち主かと思って、少々がっかりしていたのです。
それが悪いということではありませんが、相手には相手の正当な理由があるわけですから。自分の考えだけが正しく、相手は間違っていると切り捨てる考え方には、私は賛同できないのです。
それでもせっかく買った本なので、もう1冊の方はどうかと思って、「居場所のない子どもたち」を先に読んだのです。
すると、そちらにはそういった左翼思想的な記述がなく、もっと精神的に深遠な内容だったため、著者に対する考えを改めました。
そしてこの本を読んだのですが、読み進めるについれて、鳥山さんの精神レベルの深さに感動しました。
鳥山さんは、私が評するのもなんですが、頭でっかちなタイプではなく、体で感じて動きながら思索を深めるタイプではないでしょうか。
それにしても、よくぞここまで深いレベルに到達されたものだと、精神世界の師と仰ぎたくなるほどです。
鳥山さんが感じられたのは、子どもは親の課題を解決するという使命を担っているということです。
たとえば子どもが問題行動を起こすとき、親の育て方が悪いという見方を、一般的にはされます。
けれども鳥山さんは、そんな単純な問題ではないと考えておられます。
親自身に何か解決しなければならない人間としての課題があり、その課題に気づかせ、必死で取り組ませるために、子どもはあえて問題行動を起こすのだという見方なのです。
まるで1つにつながった生命が、分化した魂同士を結びつけながら、その生命全体として進化しようとしているかのようです。
ですから、子どもの問題行動に限らず、起こる出来事はすべて必然で、起こるべくして起こるのだと言うのです。
「問題に対する考え方次第で、一見まずいと思えるようなことも、新しい気づきをくれたり、行動を触発してくれたりするために起きているともとれ、その人にとって必要だから起きているだけだということにもなっていきます。こういうことが分かってくると、自分の身や家族、学校、社会に起きていることには、何一つ悪いことも無駄なこともないとも言えるのです。」(p.84)
「子どもたちのからだにいま起きているさまざまな問題は、教師や親が子どもを見る目がなかったことが原因です。「何が本当の教育なのか考えろ」というメッセージとして受け止め、取り組むまで続くということに私たちは早く気づかなければならないでしょう。すべての問題は、起きるべくして起き、事の本質、事そのものからのメッセージを、大人たちが全身全霊で感じ取れる次元に立つことができるようになるためのものでもあると考えられます。」(p.181 - 182)
このように言って、私たちの人生に起こるやっかいな出来事というのは、それぞれの人、特に大人の、人間としての課題を成し遂げさせようとするメッセージであり、その機会を与えてくれる贈り物なのだと訴えます。
ですから問題から目をそらさず、臭いものにフタをするのではなく、しっかりと受け止めることが重要になります。
最近は宇宙からのメッセージを伝えるような、面白い子どもが増えてきたそうです。
前に紹介した「自分をえらんで生まれてきたよ」の印鑰理生(いんやくりお)くんもそうでしたが、この本では日木流奈(ひき・るな)くんのことが紹介されています。
流奈くんは重度の脳障害で体が不自由ですが、両親は流奈くんのことを嘆いていないそうです。
その流奈くんが語っていることが、また素晴らしいのです。
「私の母など私が苦しんでいても決して代わってあげたいと思ったことはないと断言します。父などはもっとひどくて私の管だらけの姿を指さして笑っていました。目の手術のあとなどもっとひどくて、顔中に包帯が巻いてあったため、再起不能の赤ちゃんモードの私を見せ物にして見せ物料を取ろうなどと冗談を言ってました。もしかしたら本気だったのかもしれませんが、ただ能天気な親たちと言ってしまえばそれまでなのですが、おかげで私は物事を悲観的にとらえる術を学ぶことなく、身体を動かすこともままならないというのに結構気楽な気持ちで生きています。プラス思考でという言葉をよく聞きますが、そう思考しようとしてもなかなか難しいもののようです。世間ではプラスに考えるというより、目の前のことを嘆くことなくそれを受け止め、最善を尽くせばいいのではないでしょうか」(p.214 - 215)
これを読むと、流奈くんが素晴らしいのも、その障害を持った流奈くんを、そのままで受け止めているご両親が素晴らしいからだとわかります。
嘆くのではなく、そうなった事実を受け止めること。
結果にこだわることなく、やることをやればそれでいい。
流奈くんは、こんな風に言っているそうです。
「幸せへの道はずばり能天気になることでしょう。思い煩うことはありません。何かに囚われる心が人を不幸にするのです。」(p.215)
※日木流奈(ひき・るな)くんは、こんな本も書いています。
「伝わるのは愛しかないから」は、私も以前読んで、すごく感動した本です。
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