ニーチェという哲学者の名前は、とてもよく知られていると思います。
けれども、彼がどのような思想を持っていたかについては、あまり知られていないかもしれません。
「ツァラトゥストラはかく語りき」という著書は有名ですが、そのタイトルは知っているものの、私は読んだことがありません。
私もまた、ニーチェという名前は知っていても、彼の思想はまったくと言ってよいほど知らない人の1人だったのです。
そんなとき、降って湧いたように売れはじめたのがこの本です。
「いまどき、どうしてニーチェなの?」
そういう思いを多くの人がいだいたようで、新聞の広告などでも、むしろそこを売りにして関心を呼ぼうとしている感じでした。
それからしばらく、この本は売れていたようで、ついに私も我慢しきれずに買ってしまったというわけです。
しかし、買ってはみたものの、なかなか読もうという気持ちになりません。そのため、かなり長い間、「積んどく」状態に放置されてました。(汗)
私が買った本は、第31刷で2011年3月10日となっています。おそらく買ったのは、2011年の後半か、2012年になってからだと思います。
そして読み始めたのは、2012年の後半くらい。それをつい先日、やっと読み終えました。
読むのに時間がかかってしまったのは、本の内容が難しいからではありません。むしろ、平易な言葉で書かれていて、簡単な部類に入るでしょう。
しかし、1ページごとに読み切りの内容になっていて、それが全部で232もあるのです。それぞれが、ニーチェの著作から抜き出したものになっています。
このように、まるで1日1話みたいになっているため、読み始めてもすぐに止まってしまうのです。それで時間がかかってしまったというわけです。
けれど、内容は素晴らしいものです。それに、その洞察の深さに驚かされる言葉が散りばめられています。
ニーチェは、思索して哲学体系を作り上げるというよりも、散文的に何の脈絡もなく深遠な哲学を語るような芸術家タイプだったようです。
ですからこの本も、散文的に1ページひとまとまりの内容になっているのです。
私が驚いたのは、ニーチェの洞察が「神との対話」シリーズで言われていることと、かなりダブっていたからです。
この当時、すでにこんなことを考えている著名人がいたのだということが、非常に驚きでした。
たとえば「009 自分の行為は世界に響いている」では、どんな行為や考え方も、世界に影響を与えると言います。「すべての行為や運動は不死なのだ」と言うのです。
これなどは、この世のすべてはエネルギーであり波動だと言う「神との対話」と同じことを言っています。水面の波紋がずっと伝わっていくようなものです。
また、「014 解釈のジレンマ」では、物事そのものに良い悪いがあるのではなく、その人がそう解釈するのだということを言っています。
これなども、出来事は中立(ニュートラル)で、そこにその人が意味を与えているのだとする「神との対話」と同じことを言っています。
あるいは「151 そのままの相手を愛する」では、愛とは好むものを手に入れたがったり、支配するものではなく、まったく違うものをそのままに喜ぶことだと言います。
愛は無条件だと言われますが、このことを明確な言葉で説明しています。
もちろんこのことも「神との対話」で語られていますが、ニーチェのころから言われているのに、いまだに多くの人が気がついていないという事実に驚いてしまいます。
私たち人類の精神的な進歩は、ある意味で遅々として進まなかったのだという事実を見せつけられた気がするからです。
100年以上も前の哲学者が語る言葉が、とても新鮮に感じられる1冊です。

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