前に読んだ「池上彰と考える、仏教って何ですか?」で紹介されていた、世界最古のお経とされる「スッタニパータ」を翻訳した本(中村元訳)です。
ピンときたら迷わず買う。その信条に従って、すぐにネットで購入しました。
文庫本ですが、全部で450ページもあります。そのうち本文は241ページまでで、あとは注釈などになっています。
最初の方は、同じような文が繰り返されていて、正直に言うと「なに言っているんだろう?」と、チンプンカンプンな感じです。
総じて、読みやすいものではありません。
ただ、全体が弟子や修行者たちからの質問にブッダが答えるという形式になっていて、その当時の様子やブッダの人柄、暮らしぶりなどを、思い浮かべることができます。
まだ仏教という宗教とか教団が確立されておらず、バラモン教の修行者として行動するブッダの様子がわかります。
一部を引用しましょう。
ナーラカという修行者が出家して托鉢の行を行おうとしていて、その最上の境地をブッダに尋ねました。するとブッダは、こう答えたのです。
「村にあっては、罵られても、敬礼されても、平然とした態度で臨め。(罵られても)こころに怒らないように注意し、(敬礼されても)冷静に、高ぶらずにふるまえ。」
(中略)
「淫欲のことがらを離れ、さまざまの愛欲をすてて、弱いものでも、強いものでも、諸々の生きものに対して、敵対することもなく、愛著(あいじゃく)することもない。」
(中略)
「その聖者は托鉢にまわり歩いてから、林のほとりにおもむき、樹の根もとにとどまって、座につくべきである。」
「かれは思慮深く、瞑想に専念し、林のほとりで楽しみ、樹の根もとで瞑想し、大いにみずから満足すべきである。」
(中略)
「『(施しの食物を)得たのは善かった』『得なかったのもまた善かった』と思って、全き人はいずれの場合にも平然として還ってくる。あたかも(果実をもとめて)樹のもとに赴いた人が、(果実を得ても得なくても、平然として)帰ってくるようなものである。」
「かれは鉢を手にして歩き廻り、唖者ではないのに唖者と思われるようにするのだ。施物が少なかったからとて軽んじてはならぬ。施してくれる人を侮ってはならない。」
(p.153 - 154)
このように、いちいち丁寧に教え諭しています。
この中でブッダが、どんなことが起ころうとも「善かった」と考えるように言っています。
つまり、出来事を選り好みせず、良いものとして受け止めよということです。
2500年も前に、すでにそういう教えがあったのですね。
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