前に紹介しましたが、みやざき中央新聞という週刊の新聞があります。
これはその社説を集めた「日本一心を揺るがす新聞の社説」という本を読んで知ったのですが、そのWeb版を購入することにしました。
1ヶ月わずか1,050円です。しかし、たった数ページの新聞ですから、なんだかもったいない気がするかもしれませんね。
でも私は、これだけ感動させてくれるのだから、少しも惜しくないと思うのです。
2012年12月17日発行の2488号を読みました。
まず最初に社説があるのですが、ただ夢を追いかけ、挫折を乗り越えることで素晴らしい曲を作ったみのや雅彦さんという北海道の歌手の話です。
素晴らしい才能を持ちながら、すでにメジャーデビューしていた松山千春さんと声質が似ているということで、受け入れられなかったのだそうです。
それでも諦めず、どん底の生活の中で生まれた曲が「夢しかなかった」というもの。
この歌には励まされますね。
そして今年、素晴らしい名曲が生まれたと紹介しています。
「百の言葉、千の想い」
震えるような想いで、一途に一人の人を愛すること。
そんな生き方は、素晴らしいことだと思います。
次は作家の柳田邦男さんの講演の抜粋です。
すい臓がんで亡くなった額装職人の方の生き様には、本当に感動させられます。
そして柳田さんの考え方がまた素晴らしい。
9歳でお兄さんを亡くし、10歳でお父さんを亡くされたとか。また柳田さんのご次男は、25歳で自殺されたそうです。
そういった体験をされた直後は、やはり動揺し、運命を呪われたかもしれません。
そんな柳田さんが、こういうように言われるのです。
「そして、負の体験はすべて贈り物だと、今では思うようになっています。」
後半は2012年を振り返って、「取材の現場から 心に残ったいい言葉」がまとめてありました。
スリランカ上座部仏教長老のアルボムッレ・スマナサーラさんは、「五体不満足」の乙武洋匡さんのことを語っています。
アルボムッレさんが注目したのは、彼自身より彼のお母さん。
手や足がないくらい大したことではない、という気持ちで育てられたのだろうと言うのです。
そして、こう言います。
「障がいのある子どもの親御さんは、人類からちょっと手のかかる仕事を与えられただけなのです。」
だから気負わず、自分にできることをすればそれで良いのだと。
NPO法人チームふくしま理事長の半田真仁さんは、震災直後に知覧の特攻平和会館へ行き、実家の広島へ戻ったのだそうです。
そこで「明日、福島へ帰るから。」と言うと、ご両親が猛反対されたのだとか。
福島へ帰らなければならない理由はないけれど、彼にはたくさんの仲間がいた。だから翌朝、まだご両親が寝ているうちにそっと家を出て、新幹線に乗ったのだそうです。
ところが外を見ると、お母さんが立っていた。
連れ戻されるかと思ったら、お母さんはこう言ったそうです。
「行ってらっしゃい」
お母さんは笑顔を見せながらも、目を真っ赤にして涙をボロボロとこぼされていたとか。
それを見たとき、知覧で我が子が特攻で飛び立つを見送った母親の気持ちがわかったそうです。
NPO法人デイサービス「このゆびとーまれ」代表の惣万佳代子さんは、お年寄りだけとか、知的障害者だけを集めて、他との交流を遮断する社会に警鐘を鳴らします。
この考えには、私も共感します。
祖父母と一緒に暮らさない子どもたちは、日常に人の死を見ることがありません。
「同じような人たちだけで一つの集団を作ってはいけない」
そういう思いで活動されているそうです。
神戸女学院大学名誉教授の内田樹さんは、子どもがどんなきっかけで成長に向かって開花するかは、誰にも予想できないと言います。
だから作為的に何かをしても、それが上手く行くことはないし、何がきっかけになったか、教えている方が気が付かないでいることも多いのだとか。
だから学校の教師に必要な資質は、次の2つしかないと言います。
「耐える力」と「信じる力」。
この子は素晴らしいのだと信じ、今、その片鱗が見えないことをじっと耐える。まさに、教育の本質はここにあると感じました。
宮崎県スーパーティーチャーの足立明彦さんは、脳科学的には、食べ物の好き嫌いがない人は味覚が鈍いと言います。
だから有名なパティシエなど、素材の微妙な変化を調整するような味覚の鋭い人は、けっこう好き嫌いが多いのだとか。
Tシャツがちょっと濡れただけで気になるような子を、神経質だと叱らないようにと言います。
なぜならその子は、皮膚感覚が鋭いからで、細かな作業が上手になると言うのです。
このように、何かが欠けているように見えても、実はそれ以外のところが非常に優れていることがあるのだから、欠けたところを見ずに、長所を見つけてあげるようにとした方が良いとのことです。
最後に(有)クロフネブライダル代表取締役の中村典義さんの、心に残るカップルの話は私も泣きました。
高校時代の同級生で、彼は彼女を好きだったけど、告白できずに別れたそうです。それが成人式で再会し、やっと付き合うことができました。
けれども、彼女は交通事故にあい、数ヶ月も寝たきりの状態になったとか。
彼は毎日見舞いに行くけど、彼女は会おうとはしません。傷だらけになった身体に失望し、自殺未遂までしたそうです。
彼女のお母さんは、娘の心を慮って、彼を病室に入れないようにします。しかし彼は、諦めずに通い続けたのです。
ある日、彼女は、もう諦めたと思っていた彼がずっと見舞いに来ていたことを知り、会う決心をします。
自分の身体を見せれば、彼ももう諦めるに違いないと思ったからです。
しかし、彼女と会った彼は言いました。
「そのままでいいんだよ」
「君の手が動かなくても、足が動かなくても、そんなことは僕にとって大きな問題じゃない。君が君でなくなることが問題なんだ。」
彼女は根負けし、彼を受け入れました。そして、結婚式で彼に恥をかかせたくないからと、辛いリハビリに積極的に取り組んだのだそうです。
結婚式の打ち合わせでその話を聞かされた中村さんは、とても驚いたのだそうです。
そこには、そんな大怪我を負った人とは思えない普通の身体に見える彼女がいたからです。
どうです? 少しは感動が伝わりますか?
こんな新聞を毎週読んだら、それだけで心がほっこりと温まると思いませんか?
別にみやざき中央新聞の回し者ではありませんが、良いものは良いと勧めたいのです。
2012年12月23日
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