私も傷つきやすい方ですから、他人の言葉には敏感です。
「こんなことも知らないの?」
程度が低いことをバカにした言葉です。
自分の心の中に、程度が低いのは生きていけない程つらいことだという思いがあるから、こういう言葉に傷つきます。
そんな言葉を受けるのが怖くて、中学生の頃の私は、列車の切符を買うことが怖かったのです。
田舎の国鉄駅(今のJR駅)ですから、自動券売機などと言うものはありません。
駅員さんに行き先を告げて、切符を買わなくてはならないのです。
「○○駅まで中学生1人」
私が言うべき言葉はそれだけです。(中学生割引がありました。)
それが言えないのです。
私の頭の中では、もっと先までの会話が、何度も何度も繰り返されました。
駅員「はい、では1,260円ですね。」
私「えっ!1,100円じゃなかったんですか?」(財布には1,200円しか入っていない。)
駅員「4月1日から値上げされてますよ。知らなかったんですか?」
「そんなことも知らないなんて、お前はバカか!?」
きっと心の中で笑っているに違いない。
なんでもっと気をつけておかなかったんだろう。
ときどき値上げされることは、わかっていたはずなのに。
私にとって、バカにされることは恥ずかしくて、生きていけないほどの屈辱でした。
だから、そんな屈辱を受ける可能性が1%でもあるなら、できればそれをしたくない。
それが、切符を買うことの怖れとして、表に出てきたのです。
たかが列車の切符を買うだけのこと。
お金が足りなかったら、「すみません。今手持ちが足りないから、また出直してきます。」と言えば済むだけのこと。
今から思えば、これこそバカバカしい限りですが、当時の私には、生きるか死ぬかという程の大きな問題と思えたのです。
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