2012年05月29日

おじいちゃんの為の読経

私の祖父は、岡山県神代町の出身だそうです。

なんでもその地域は、赤木という姓がとても多いのだとか。

赤木という姓は、平家の落武者が用いたという説もありますが、一方で戦国大名の赤松氏の系譜という説もあります。

我が家がそういう血筋かどうか知りませんが、祖父が望まれなかった子であることは確かなようです。

と言うのは、祖父が戸籍に登録されたのは、実際よりも2年も遅かったと聞いていたからです。

末っ子で、年の離れた兄弟もいることから、ひょっとしたら長兄が誰かに身籠らせた子ではないかと。

これはあくまでも想像ですけどね。

祖父は開拓民として満州へ渡りましたが、帰国してからも岡山へは戻らず、祖母の実家に土地を借りて住むことになりました。

祖父方の親戚とは全く付き合いがなかったということからも、祖父が家族に望まれていなかったのではと思われたのです。



我が家は共働きだったので、私は祖父や祖母に可愛がられて育ちました。

いえ、私の記憶はそうなのです。でも実際は違う面もあったようです。

後になって母が言うには、祖父からよく文句を言われたそうです。

私のことを「もうあの子の面倒はようみん(=みられない)。」とまで言われ、怒られたとか。

友達と一緒に遊んだ時、近所の田んぼに積んであったわらを、崩してしまったことが原因だそうです。

母は、私が率先してやったのではなく、友達に誘われて仕方なくやったのだろうと思ったそうです。

たしかに内向的な私が、そんなわんぱくをするはずがありませんから。


それでも私は、祖父が好きでした。

朝刊に入っていたオートバイのチラシを祖父に見せ、ねだったことがありました。

祖父は私に、「わしがこうちゃる(買ってやる)けえ、どれがええんか?」と聞きました。

私は青いバイクが欲しくて、それをお願いしました。

でも、ちょっと心配になったのです。もし私が大きくなる前に祖父が死んだらどうなるのかと。

無邪気にもそのことを尋ねると、祖父は笑って答えてくれました。

「そんときゃあ、墓まで取りに来いや。お金を出しといちゃるけえ。」



私が小学校6年生のとき、祖父は患って寝込んでしまいました。

病院ヘ見舞いに行った時も、話しかけても反応がありません。

私は祖父の手を握り、誓いました。

「おじいちゃん、ぼく、今度の地区民体育大会でロードレースにでるけー。がんばって10位以内に入るけー、元気になってよ。」

太っていて走ることが得意ではありませんでしたが、それくらいのことをしないと、神様は祖父を治してくれないと考えたのです。


それから私は、毎朝、仏壇に向かって読経するようになりました。

なるべく短いお経をと探して、見つけたのが般若心経です。

「ぶっせつまーかーはんにゃーはーらーみったーしんぎょうー。かんじーざいぼーさつぎょうじん...」

意味もわからず、ただただ祖父の回復を祈って読経したのでした。



たしか11月3日の文化の日が、地区民体育大会でした。

約2kmの距離を走るロードレースで、私は初めて10位に入りました。


しかし祖父は、11月8日に亡くなりました。

授業中に訃報を聞き、私はすぐに家に帰りました。

居間に入ると、鼻に綿を詰められた祖父が、穏やかな表情で横たわっていました。


通夜や葬式の時、お坊さんの読経に合わせて、私も般若心経を唱えました。

あとで親戚のおばさんから言われました。

「あっちゃん、お経を読めるんかね。すごいねえ。」

いくらほめられても、大好きだったおじいちゃんはかえってきません。

もうちょっと頑張ってロードレースで上位に入るように誓えば、神様は望みを叶えてくれたのかもしれない。

10位という、ちょっと頑張ればできるくらいで妥協した自分を、私は責めたのでした。



広島大学に入ってから、私は自動二輪の中型免許を取りました。

すると先輩が、乗っていないバイクがあるから1万円でいいよと、譲ってくれることになりました。

貧乏学生ですから、中古のバイクでも普通には買えなかったのです。

数日後、先輩が乗ってきたバイクを見て、私は驚きました。

ホンダCB350。それは祖父が約束してくれた青いバイクだったのです。


おじいちゃんは姿を変えただけで、ずっと私のそばに居てくれた。

私はそう思うのです。

posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 17:18 | Comment(2) | └ 家族のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
■ロードレース
今、バイクを売ろうかどうしようか真剣に悩んでいる広瀬です。

おじいさんとの思い出がいろいろあるんですね!手を合わせて、僕が思うのは、じいちゃんがいなかったら、息子に出会うこともなかった、ということです。
実家の甥っ子たちは、仏壇に手を合わせることはあまりしませんが、僕は帰省したら必ずします。
般若心経はなかなか覚えられないですが。
ロードレースをやるほど本格的にバイクに乗っていたんですね。

タイといえばバイクって感じですし、赤木さんともバイクの話ができるのは嬉しいです。
僕が最初に買ったのはCB400SFという典型的な教習車でした。
楽しいですよね〜o(^▽^)o
Posted by 【広瀬つみき】2・3歳の子育て専門★幼児教育アドバイザー at 2012年05月31日 00:26
■Re:ロードレース
>【広瀬つみき】2・3歳の子育て専門★幼児教育アドバイザーさん

コメント、ありがとうございます。
私もオートバイは好きですか、どちらかと言えばアメリカン。
のんびりツーリング派です。(^^)
CB400カスタム、CBX750ホライゾン、BROSS650など。
タイは、ベトナムなどと比べると、オートバイは少ないです。
それでもホンダやカワサキなどの100ccくらいのバイクがたくさん走っています。
電動バイクもけっこうありますよ。
Posted by 赤木 (幸せ実践塾塾長) at 2012年05月31日 11:22
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