2012年05月28日

新聞奨学生の実態

「新聞奨学生ってどうよ?」という質問がけっこうあるので、そのことを書いてみたいと思います。

と言っても、私の経験はもう30年も前のことですけどね。

おそらく、それほど実態は変わっていないと思います。



まず重要なことは、販売店によって待遇が全く異なるということです。

私は読売新聞奨学生だったのですが、朝日でも日経でも毎日でも産経でも、だいたい似たようなものです。

それぞれの新聞社ごとに条件を提示して募集しますので、その条件についてはほぼ一律です。

ただ中には、その条件すら守らない販売店もあり、奨学生とトラブルになることもあるようです。


違いが出るのは、手取りです。給料から何が差し引かれるのか、それが明確になっていません。

販売店で提供する食事代をいくらにするのかなど、細かいことは販売店任せなのです。

朝夕食を販売店で作って用意してくれるところもあれば、お金だけ渡されて、自分で買って食べるように言われるところもあります。

配達はだいたい2時間半以内(慣れればですけど)ですが、拡張(営業)にどれだけ作業が要るかというのも、販売店次第です。

またチラシが多い店だと、次の日の分のチラシ折りという作業だって、30分〜1時間くらいかかることもあります。

配達に自転車を使うのか、オートバイなのかの違いもあるでしょう。


そういった様々な差異があることを、当然と心得ていないと、不満を感じてしまうかもしれませんね。

配達は、新聞が販売店に届けられてからですから、それも地域によって異なります。

東京近辺だと、遠いところほど配達が始まる時間が早くなります。

通勤前に配達しなければなりませんからね。


当時の読売新聞は13版までありましたが、私の入ったところは、比較的に後の方の版でした。都心部に近かったからです。

それでも新聞は販売店に、朝3時半くらいには届けられました。

受け取ってから、前日に折ったチラシを組み入れます。それぞれの配達区域ごとに、担当者が行うのです。

チラシが分厚いので、自転車にすべて積み込むのは無理です。半分くらいを積みますが、それでも相当に重くなり、自転車がふらつくほどです。

これに慣れるには数日が必要ですが、それでもバランスを崩してひっくり返すということが、何度かありました。


雨の日も雪の日も配達はあります。そういうときは積む量を少なくして、店まで3往復するように変えることもあります。それだけ、時間はかかってしまいますけどね。

雨は濡れるだけですから、その気持ち悪さを耐えればなんとかなります。

でも雪が積もると大変でした。自転車に乗るとバランスを崩すので、押しながら配達することが増えるし、走りにくいので時間がかかります。

普段なら2時間ちょっとの配達も、雪の日は3時間を超えてしまうほどです。

通常はだいたい、6時半までには朝刊の配達が終わります。それまでに帰ってこないと、お客様から「まだ届かない」という苦情の電話が入ってきます。


電話で思い出しましたが、私がいた販売店では、電話にすぐ出るように指導されました。

「3度鳴らすな電話のベル」ということで、2回鳴り終わるまでに出るようにと。

それ以上鳴らした場合は、「お待たせしました」と言って出るのです。

社会人にとって基本的な電話の対応を教えてもらったことは、とても役立ちました。


夕刊は、だいたい4時くらいまでに販売店に届きます。

夕刊は厚さも薄く、折込チラシもないので、自転車にすべて積めるので配達が楽です。

それに、朝夕刊のセットではなく、朝刊のみで契約される方もおられるので、配達先も少なくなります。

だいたい1時間半以内には配達を終えたでしょうか。


店に戻ってからは夕食をして、次の日のチラシ折りをします。

月の半ばくらいから集金業務が始まり、月末までに90%以上集金することが目標になっていました。

90%くらいまでくると、なかなか会えないお客さんが残ります。

こうなると、普通の時間に行っても無理ですから、遅い時間に行ったり、場合によっては朝行くこともあります。

もちろんイレギュラーな時間に訪問するときは、事前に了解を得るようにします。初めてのお客さんだと、メモを入れておくなどします。

最終的には100%回収が目標です。商売をやっていれば当然のことですけどね。


そういう仕事の詳細は、初めての経験ですから、とても勉強になりました。

また、配達区域はときどき変わります。誰かが急に配達できなくなっても、代われるようにするためです。いわゆる危機管理ですね。

なので、引き継ぎという仕事も重要です。

あらゆる情報を引き継いで、人が変わっても支障なく仕事が継続されるようにすること。

こういうのも、ビジネスの基本ですよね。

配達経路は当然のこと、どこに自転車を停めないとクレームがあるとか、この階段は静かに上がらないとダメだとか、ありとあらゆることを引き継ぎます。


その販売店の読売新聞の配達率は40%くらいあったので、その地域のことで知らないことはないというくらい、販売店には情報が集まっていました。

あるときは同じ新聞奨学生の人がバイクを盗まれたのですが、警察よりも先に発見しました。

販売店が持っている地域情報は、すごいものがあると思いましたよ。

特に転居情報はピカイチですね。転入者があると、その日のうちに駆けつけて、「新聞はいかがですか?」と営業するわけです。

引越し中を狙って、手伝いをして契約をもらうという営業方法もありました。


本気になってやれば、地域営業のあらゆることが学べる環境があります。

ただ言われて働かされているとしか考えない人にとっては、辛いだけの仕事かもしれません。

中には配達途中で新聞を放り出して、田舎に逃げ帰るという人もいますからね。

でも、働きながら学べる環境が提供されているということは、とてもありがたいことだと思うのです。

私は、新聞奨学生として働きながら学べたことを、人生の宝だと思っています。

posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 11:53 | Comment(0) | ├ 私の生い立ち | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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