2024年05月21日

情報公開が社会を変える

情報公開が社会を変える ――調査報道記者の公文書道 (ちくま新書) - 日野行介
情報公開が社会を変える ――調査報道記者の公文書道 (ちくま新書) - 日野行介

最近、減税など政治がらみのことをX(旧Twitter)で発信していることもあり、こういう情報もおもしろそうだと思って買ってみました。
情報公開というのは、政府や自治体に法的に義務付けられたことですが、実態としては簡単には情報公開してくれません。そのことに疑問があったので、実態はどうなのかを知りたくて、この本を読んでみました。著者はジャーナリストで作家、元毎日新聞の記者の日野行介(ひの・こうすけ)さんです。


ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介しましょう。

ごみ処理場や工場の建設予定地の選定、子どものいじめなど地域の問題も同様だ。災厄をもたらす歪んだ政策の共通点は、市民にとってのメリットが疑わしく、結論や負担だけを市民に押し付け、意思決定過程が不透明なことだ。」(p.12‐13)

公務員は国民や住民の公僕のはずですが、その公僕が主人である国民(住民)に情報を開示しないという問題点があるのです。

本来、同じ被災自治体として一致団結して汚染土を他所に持って行くよう国に求めるか、あるいは効果の疑わしい除染自体を止めるよう主張すべきであったにもかかわらず、迷惑施設の押し付け合いに議論をすり替えられてしまった。
 こうした議論の「すり替え」を見抜き、住民同士で対立する不毛な事態を避けるためには、役所が出してくる政策に反射的に反対し、支持拡大を目指す「運動」だけでは不十分なのは明らかだ。その政策は本当に必要なのか? 役所が言い募る政策の目的は真実なのか? 本当のところを調べなければならない。
」(p.21‐22)

役所がごまかそうとするから、本質的な議論ができない実態があります。本当は、悪人探しをするのではなく、どうすれば国民(住民)のためになる国(自治体)の政策ができるのかを検討し、実施できるようにすべきなのです。


政策に込められた真の目的を察知し、実現を阻止したいと考える一般市民が(誰でも)できるのは、政策の目的が民意に反し、隠蔽(いんぺい)と嘘で一方的に進められている証拠を示すことだ。この証拠こそが意思決定過程を書きとめた公文書だ。」(p.41)

公文書を公開請求する意味は、役所がどういう意図でその政策を推進しているかを白日のもとにさらすことにあるのですね。


「経緯も含めた」という文言に強い意志を感じることができる。決して公言しないだろうが、政治家や役人にとって意思決定過程に関する公文書は公開したくないものだ。だが、国民が情報公開を求める「権利」と合わせて、意思決定過程を記録する公文書の作成を役所に義務付ける法律ができたことで、情報公開請求を受けて意思決定過程を記録する公文書を公開しなければ「隠蔽」と指摘され、責任が問われることになった。」(p.56‐57)

公僕が国民に対して情報隠蔽しようとすること自体がナンセンスなのですが、情報公開法がなければ、そういうことすらできなかったのです。


しかし、過去の冤罪事件では必ずといってよいほど、無実の可能性を示す証拠があったにもかかわらず、検察が隠し持っていた事実が明らかになってきた。警察が強制捜査権と公費を使って集められた証拠は本来、適切な刑事裁判を行うための公共財産であって、検察が独占してよいものではない。
 無辜(むこ)の処罰を防ぐには、検察に持っているすべての証拠を開示させ、被告人と弁護人が吟味できるようにしなければならない。
」(p.60)

役所は秘密裏に検討し、政策の目的を偽り、「もう決まったことだから」と聞く耳を持たずに押し進める。この「隠す」「騙す」「押し付ける」の三点セットがもたらすものは民主主義の破壊しかない。これに対抗する材料は、役所がひた隠しにする意思決定過程の中にある。役所が自分たちにとって不利になる材料をわざわざ国民に提供することはない。国民・住民が情報公開請求によって「出せ」と迫る以外に方法はない。」(p.61)

まさにこの実態、つまり政府や自治体は、本来主人である国民や住民を蔑ろにして、自分たちの権力行使を優先していることが問題なのです。


出席者は非公開だから口にできる本音がある一方で、経緯を含めた意思決定過程の記録は文書に残さなければならないのが公文書管理の基本原則だ。明らかにしたくないが残さなkればならない、という根源的な矛盾を内包しているのが非公開会議の議事録と言える。」(p.126)

政策の決定に関わる意思決定過程で、誰が何を発言しようと自由であり、それによって批判非難されるべきではないと思います。しかし、現段階においては、批判非難されてしまう。なので、奇譚のない意見を聞くためには、議事録を公開しないことが前提となったりします。
つまり、国民(住民)が自らの首を絞めているのです。批判非難しなければ、様々な意見を出し合って決定できるのに。そのメリットを捨てているのは、まさに国民(住民)自身だと言えるでしょう。


役所はいつもこそこそと検討し、市民を欺き、聞く耳を持たずに押し付ける。それは政策の中に潜む矛盾や誤りを自覚しているからに他ならない。市民がそんな政策にNOを突きつけるためには、何が誤っているのか、どこにウソがあるのか役人たちを論破できるほど知識を積み上げなければならない。そのために必要な情報は公文書の中にしかない。意思決定過程を記録した公文書を市民が自らの手で根こそぎ拾わなければならない。」(p.213)

情報公開請求しても、公開に時間がかかったり、公開しないと言われたり、墨塗りして意味のわからない文書しか公開されなかったりします。こういうことそのものが「おかしい」と思いませんかね? だって、主人は国民(住民)なんですよ。主人が公開しろと言っているのに、公僕が公開しないなんてことが認められること自体が、おかしなことだと思います。けれども、それが現実なんですよね。


私は、すべてを予め公開すべきだと思います。いまや、インターネット上にすぐにでも公開できる時代なのですから。
そして、意思決定や、そこに関わる段階での発言に対しては、罪を問わないという価値観を国民(住民)が共有することが重要だと思います。
それができれば、情報公開請求するまで公開しないんじゃなく、すぐにリアルタイムで公開する時代になっていくと思います。

政治に求められるのは、「シンプル」と「オープン」だと思います。このキーワードを重視した価値観が広がり、その上で政策が検討されるといいなぁと思います。

情報公開が社会を変える
タグ:日野行介
posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 17:27 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年05月25日

呼吸 こころの平和への旅

呼吸 〜こころの平和への旅〜 - プレム・ラワット, 大島とうこ
呼吸 〜こころの平和への旅〜 - プレム・ラワット, 大島とうこ

文屋という小さな出版社を知って、そのメルマガを購読しています。その中で紹介されていたのがこの本です。
著者はプレム・ラワット氏。インド北部の生まれで、幼い頃から「すべての人のこころの中に、生まれながらにある平和」について語り始めたとあります。13歳にはインドを出て、世界100ヵ国以上、数十億人に対して語りかけておられる講演家であり、慈善活動家なのだそうです。
世の中には、こういう不思議なパワーを持った方がおられるのですね。翻訳は大島とうこさんです。


ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介しましょう。

どれほどたくさん金やダイヤモンドがあっても、
世界中のお金を全部合わせても、
たった一つでさえ呼吸を買うことはできません。
呼吸が何度も繰り返し、あなたに入ってきます。
しかも、お金は要りません。

あなたはそれほど豊かです。
自分がどれほど幸運であるかを理解してください。
」(p.46)

本書は全体として、この「呼吸」の素晴らしさを称え、私たちは生まれながらにその素晴らしい「呼吸」と共にあるのだということを語っています。
ただ、「呼吸」というものを、まるで1つの存在であるかのように表現しているので、ちょっと違和感を感じます。まぁでも、それは詩的な表現だと思うこともできますね。


渇きを癒すということは水が持つ可能性です。
これは水の力ですが、
渇きが癒されるその喜びはあなたの中にあります。
あなたが探しているものはあなた自身の中にあります。
全宇宙の中でもっとも尊いものが、あなたの中にあります。
あなたがどれほど美しく素晴らしい贈り物を授かっているかを
思い起こしてもらうのは、わたしの喜びです。
その贈り物とはいのちであり、呼吸です。楽しんでください!
それはあなたに無限に与えられた、唯一のものです。
できる限り多く、さらにもっと多くを受けとってください。
」(p.51‐52)

喜びを感じるということが素晴らしいことなのですね。その力を私たちは、生まれながらに持っています。そして、その力を私たちに与えているのは「いのち」であり、「呼吸」なのだと言うのです。


すべてのことが変化します。
ものごとがうまくいっていると思うなら、
しばらく様子を見てください。いろんなことが変化します。
順調にことが運ばないと思ったら、
しばらく待ってみてください。すべてのことが変化します。
あなたも変わります。考えも変わります。
思考も概念も変わります。
世界も変わります。すべてのことが変化します。
」(p.57)

この部分の直前に、「人間万事塞翁が馬」の故事を思わせるような話が挿入されています。「悪い」と思ったことが「良い」に変わり、「良い」と思ったことが「悪い」に変わる。そういう事例として紹介されていました。
仏教では「諸行無常」と言います。すべてのことは変化するということです。これはお勧めしている「神との対話」でも言われていることです。

ただ、「神との対話」では変化しないものが1つだけあり、それは「変化する」ということだと言っていました。つまり、変化が止まることはない、ということですね。
それに対して本書では、変わらないものが1つあり、それは「呼吸の出入り」だと言っています。そして、呼吸が変化するとすべての変化も止まるのだと。少し意味がわかりづらいのですが、生きている間は吸っては吐くという呼吸の出入りは変化しませんが、それが止まれば死ぬということを言いたいのかなと思いました。


この存在に、この人生に、この瞬間に、
この呼吸に心地よさを感じるようになれば、
あなたは比類のない深い喜びに気づくでしょう。

一度に一つずつ出入りする呼吸を楽しむこと、
理解すること、自分自身に向き合うことができること、
これは真の技法 ー 生きる技法です。
」(p.85)

一つひとつの呼吸に意識を向けることで、呼吸を楽しみ、呼吸を喜ぶことができる。ある意味で瞑想とか禅のような手法でしょうか。


人生で、与えられた恵みを受けとることのできる人は幸運です。
「そうわたしは呼吸しています。
わたしの中に入っては出ていく一つひとつの呼吸のすべてに
感謝しています」と、
謙虚な気持ちで言えるでしょう。

最高の祈りとは、感謝の気持ちを持つことです。
」(p.100)

「神との対話」にも、最高の祈りは感謝だという言葉がありました。呼吸を意識して、呼吸の素晴らしさを感じたなら、自ずと感謝したくなりますね。

世界に欲張りがあるにもかかわらず、感謝もあります。
そして、その感謝が解毒剤となって、欲張りを中和します。
でも、人が感謝の気持ちを持てないのは、
「もっともっと、もっと欲しい」と、
それだけに気を取られているからです。
自分が持っているものを受け入れて楽しみ、感謝し始めると、
「これはいい! 他の人とシェアしよう!」
という気持ちになります。
なぜなら、それが人間の本質、人間性だからです。
」(p.124‐125)

「足りない」という思いが執着心を呼び起こし、感謝の心を遠ざけるのですね。だからこそ、今あるものに意識を向けることが大切なのです。


あなたがほんとうにこのユートピアを持つことができる
唯一の場所は、あなた自身の中だけです。
外ではなく、あなた自身です。
そして呼吸は、このユートピアを体験するように、
毎日あなたを呼んでいます。
」(p.149)

私たちはユートピア(理想郷)を望みますが、それは外に探しても見つかりません。自分の中に見出すしかないのです。
「神との対話」でも、まずは内的平和を実現するようにと言っています。外的な世界は今あるがままに、内的に平和を築くのです。

わたしの戦略はとてもシンプルです。
それはあなた自身が平和になることです。
他の人とは関わりなく、
自分自身のこころが平和になることです。では、どうやってこころ穏やかに
平和でいることができるでしょうか?
自己への旅、つまり自分自身を知ることが必要です。
」(p.175)

外的な平和は、内的な平和を実現することによって打ち立てることができます。暴力革命では平和を達成できない。それは歴史が示している通りです。

戦争が起き、罪のない人たちが犠牲になります。
これと同じように、あなたのこころが戦争状態であれば、
あなたの人生の無垢(むく)な瞬間が奪われます。
」(p.176)

マザー・テレサさんは、戦争反対運動には参加されませんでした。それは闘争だからです。自分の心の中に闘い(戦争)があるなら、それは外的な戦争をやめさせる力にはならないのです。

あなた自身が戦いの場であり、戦う相手は自分自身です。
そして自分に勝つ必要があります。
」(p.177)

怒り、恐れ、憎しみ。この自分の中に渦巻くネガティブな思いに向き合い、克服する必要があるのです。

自分を知ることが、この戦略で最もたいせつなことです。
自分自身を知らないと、自分の強さがわかりません。
自分は弱い人間だと信じてしまうかもしれません。
」(p.177)

自分自身と対峙した時、自分の弱さを感じてしまうことがあります。けれども、それは本当の自分ではないと見抜かなければならないのですね。

鍛錬が必要です。どんな鍛錬でしょうか?
それは喜びを深く味わうことです。
」(p.178)

つまり、一つひとつの呼吸を意識して感じることによって、その素晴らしさを味わい、喜びに浸ること。そうすることで、本当の自分を知ることになり、内的な平和を築くことができる。そういうことなのでしょうね。


詩のような、散文のような本でした。書かれている内容は、ハウツー的で論理的なものと言うより、雰囲気で味わうようなもの。そんな感じがしました。

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posted by 幸せ実践塾・塾長の赤木 at 10:24 | Comment(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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