2023年06月01日
悩んでばかりの自分から抜け出す方法
何を見て買う気になったか忘れましたが、サブタイトルにある「「不安」なままでうまくいく!」という、不安が実は役立つものであり否定する必要がないのだ、という考え方に興味を持って買った本だと思います。
著者はコーチをされてる岸英光(きし・ひでみつ)さん。最初はそれほど期待もせずに読み始めたのですが、読むうちに「これは素晴らしい!」と感じてきました。
ではさっそく、一部を引用しながら本の内容を紹介しましょう。
「しかし、そもそも私たちにこの「不安」を覚える感覚が備わっていること、しかもそれがこんなにも大きな影響力を持っていることを考えてみると、そこには何か、非常に大切なものがあるのではないかと思えてなりません。」(p.2)
「この本は、避けることのできない「不安」という一見好ましくないものの本質を逆手に取って、成長と結果としなやかさを手に入れようとする本です。」(p.2)
「不安」を嫌なものと感じたり、「不安」に振り回されてしまうことが多々ありますが、影響力が大きいものだからこそ何か意味がある、と岸さんは考えるようです。
そして、その「不安」を避けるべきものではなく、むしろ役立てるべきものなのだと言われます。
「まず、お伝えしたいことがあります。
不安や心配は、本当はあなたにとって最高のコーチなのです。
「今、イイ線いってるよ」という合図なのです。
そして、不安があなたに教えてくれることにしっかりと耳を傾け、受け取り、行動を起こすことが、真の意味であなたを解き放ち、より大きくしてくれることになるのです。」(p.3)
「不安」をいかに役立てるか。それが本書で語られているということですね。
「そのとき、みなさんにどう見えていたかはわかりませんが、自分は落ち着いても冷静でもなかったことは確かです。ただ、緊張や恐怖にあらがうこともしませんでした。だって、当たり前なのですから。「緊張していていい」、「怖くていい」、「そのままでいい」んです。」(p.8)
「「ストレスはなくしたほうがいいんじゃないの!?」と違和感を持つ方もいると思いますが、本当に大事なのは、「ストレスを消し去る」ことではなくて、どんどん増える悩みに押しつぶされずに、あなたがあなたの毎日を充実させて生きていく、ということですよね。でしたら、結局のところ、今、目の前にある現実を引き受けてしまったほうが、人は強くなれるというわけです。」(p.9)
岸さんは、講演講師のデビューにおいて、百戦錬磨の経営者が集まる経営者フォーラムの場をあてがわれたそうです。しかも、原稿を持たず2時間超のスピーチをするようにと。
緊張で固まっている岸さんに対し、その場を提供したコーチはアドバイスするでもなく、ただその怖さを「受け取りました」と言っただけだったとか。怖いのは当たり前だから、そのままでやってごらん、ということですね。
「不安とは、危険を察知しそれに備えるセンサーとスイッチです。
つまり本来、動物が敵に遭遇したり、身の危険(それこそ、大いなる自然の変化等)を察知したときに、外界に対して直感や洞察力などあらゆる感覚を研ぎ澄ませ、何が起きてもすぐ対応できるよう、その能力を最高レベルで発揮する準備をするためのものです。」(p.20-21)
つまり不安は、よくわからない事態を察知するセンサーであり、それに対して身構えるスイッチなのですね。不安を感じるからアドレナリンが出て、臨戦態勢に入れるわけです。
「やってみてうまくいくかどうか、なんて誰にもわかりません。未来はわからないことだらけなのです。
それなのに、「幸せになれるかしら?」、「お姑さんとちゃんとやっていけるかしら?」、「浮気をされたらどうしたらいいんだろう?」、「もっと自分にふさわしい人に出会ってしまったら?」などと、どんどん余計な心配ばかりしていたら、いつまでたっても動けません。
「どうしたら幸せになれるだろう」という問いなら、まだ答えようはありますが、質問が間違っていることに早く気づかないと、そこで止まってしまうのです。」(p.24)
不安になって心配することが悪いのではなく、行動できなくなるような問いにとらわれてしまっていることが悪いのですね。
「1つ、不安について言えることがあります。
それは、多くの不安について共通しているのは、「変化するときや、新しいことをするときに生まれる」ということです。」(p.28)
「「新しい段階だから、慎重に!」のメッセージ
そう考えると、「不安」は、自分が「変化していること」を教えてくれる合図だと言えます。
だから、不安になったら、イイ線いってる証拠、自分が「今、変わるチャンス」なのです。
私なら、「おめでとう!」と言います!」(p.33)
不安を感じているということは、変化しつつあるということ。変化とは進化ですから、自分が進化成長している証拠なのですね。
「不安と上手につきあうには、次の4つのスタンスが必要だと思います。
@不安自体を何とかしようとしない
A不安になっちゃいけないと思わない
B不安は、ただ味わって通り過ぎればいい
(不安のメッセージを上手に受け取る)
C不安な気持ちと行動は別のもの、と分けて考えておく」(p.35-36)
この4つの詳細については、本書をお読みください。
不安を消し去ろうとアプローチするのではなく、ただそれを感じて、どう行動するかを考えるということですね。
「もし、私たちの日々がずっと安定していたら、私たちは人生に飽きてしまうことでしょう。
実際に安定した人ほど、変化を求めます。」(p.37-38)
どんな経験も、同じことの繰り返しだと飽きてしまいます。生活も仕事も同じです。そんな時、人は変化を求めます。新しい経験をしたがるのです。
けれども、その変化が勝手に押し寄せてくると怖がります。不安に感じるのです。つまり、自分が求めたかどうかの違いです。自分が求めた変化であれば、不安を感じつつも期待にワクワクする気持ちで変化に飛び込めるのです。
「先ほどのジェットコースターの例で見ると、「怖い」は感情です。
感情は一種の反応ですから、自分で選んで体験することはできません。それに、感情は変えにくいものです。「怖い」と感じるものは、やはり怖いです。
これに対して、「乗る」かどうかは自由な意志ですね。自分で選択できることです。「怖いから乗らない」ことも、「怖いけど乗る」こともできますね。
つまり、気持ちに従うかどうかを決められる部分が意志であり、自分なんです。」(p.51-52)
感情は湧いてくるものだから、ただ感じればいい。それを変えようとしなくていいということです。
それよりも、どう行動するかという意志を、感情にとらわれずに決めること。それが自分を大切にすることだと岸さんは言われます。
「あなたがその不安を越えれば、次にあなたと同様に不安を持ちながら、同じような道を通るであろう後輩、部下、子どもに対して、あなたが通り抜けたときにどんな思いをして、どんなことがあったかを、伝えてあげることができるようになります。」(p.88)
「最近は受験生にもメンターをつける人がいますが、メンターの意義の1つは、自分がこれから通ろうとすることに、「ああ、そんな失敗は僕もしたよ」と言ってくれる人がいる、ということです。その一言を聴ければ、「ああ、この人も失敗しているんだ。大丈夫なんだ」と思えます。
こうして、失敗に「OK」をもらえることで、失敗を何でもないことにしていけるのです。」(p.110)
不安を乗り越えたという経験が、失敗をしたという経験が、他の人の役に立つことがある。私があれこれ情報発信しているのも、そういうことが1つの目的になっています。
「成功とか失敗は、後からの評価です。まず第一に必要なのは、どんな状況に対しても行動を起こせるかどうかです。
行動を起こせた。
それがあるから、成功した、失敗した、があるのです。」(p.167)
成功も失敗も結果に過ぎません。結果は執着するものではなく、情熱を燃やすべきは行為そのものです。
「失敗を早く笑い話にすること。そのためには、行動を起こした自分、しっかりと取り組んだ自分に、「よくやった」と言ってあげることです。」(p.168)
自分で自分を承認し、自分を褒めることが大切ですね。
私も、これまで失敗するたびに「ネタができた」と思うようにしてきました。実際、メルマガや動画などでその失敗談を語ることで、ネタにしてきました。その失敗体験が、他の人の役に立つと思うからです。
「不安」を、慎重にやる時だから最善を尽くせというサインだと捉えると、不安から逃げる必要もないし、不安を変える必要もないことがわかりますね。
「怖い」という感情をそのままに受け入れ、味わい、その上でどうするかを決断する。そうすることで、「不安(怖れ)」と上手に付き合えるようになると思います。そして、それこそが真に不安を克服するということではないかと思うのです。
私自身、臆病で内向的で小心者です。一時期は「石橋を叩いても渡らない」と自称したほどです。けれども、少しずつ小さなバンジーを飛ぶことによって、以前とは比べ物にならないくらい大胆なことができるようになりました。
本書は、そういう経験をしてきた私からすると、「あぁ、まさにその通りだなぁ」と思えるものでした。不安を抱えて動けなくなってしまう人、心配性の人にお勧めです。
●コメントを書く前に、こちらのコメント掲載の指針をお読みください。