2022年11月03日
医者と薬に頼らない病気の「本当の治し方」
これも本の要約を紹介するYoutube動画を観て、興味を持って買った本になります。
タイトルからして私の考え方とマッチするのですが、著者は気功や整体をされている世古口裕司(せこぐち・ゆうじ)さんで、野口整体の手法も取り入れ、スピリチュアル的な考え方も持っておられるようです。
必ずしも私の考えていることと同じではないのですが、共感する部分も多いし、とても参考になることも言われていました。
ボリュームもあるので、なかなか読みづらいかもしれませんが、非常に良い本だったと思います。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「しかし人間の体は機械とは違う。普段と違う事も必ず意味があるのです。すなわち自然修復現象であるのです。咳や痛みなど、どんなに迷惑と思える体の異常感も、それは体が、治るために必要だから行っているのです。これがまず大前提なのです。」(p.11)
「吐血も下血もたいていの場合は体が良くなるための大掃除であり、自然修正法なのです。
こうして見てくると、普段に体がおこなっている下痢も発熱もくしゃみも咳も、みな良い事ということになります。では「痛み」はどうなのか。「痛み」があるからこそ「やってはいけない事」というのがわかるのです。また、体の使い方がズボラな持ち主に対して「養生」の要求をしているのです。静養して体を休めよ、あるいは頭痛などの場合、頭を休めよ、という体の強権発動なのです。」(p.13)
咳や痛みだけでなく、下痢、嘔吐、発熱、発疹など、あらゆる病気とされる症状が、自然治癒の働きによる現象だと言います。
「だから、痛いといっては病院に行って薬を飲むというのは、まさに体を鈍くして報知器をぶち壊す行為です。薬の乱用は危険この上ない。」(p.13)
薬は症状を緩和しますが、せっかく体が治ろうとしてそういう症状を出しているのに、それを抑え込むことになり、治癒作用を止めることになるのですね。
「現代薬学の考え方は、「毒を薄めて、少量を体に入れると、一時的に痛みや症状が和らぐ場合がある。これを薬効と呼ぶ(ことにする)」というものです。だから昔は薬学というのは無かったのです。何と言ったか。「毒物学」と言ったのです。薬というのは、体の内部で自然発生する自家薬しか存在しない。人工的なものは、すべて体にとって異物である」……。これは薬学部で必ず学ぶことだそうです。」(p.16-17)
薬は人体にとっては毒物。当たり前のことですが、これを認識していない人は多いようです。
「ところで、医師はと言うと、皆さんビックリするでしょうけれども、薬の勉強は全くしないのです。医学部6年間、インターン2年間、計8年間で薬の勉強は一切無い。もちろん、病院に勤めてからも殆ど無い。つまり薬に関しては薬剤師さんに比べれば全く素人なのです。だから平気で山のような毒薬を患者に出せるのだと思うけれども、実は病院には、病名を決めたら、薬も自動的に決まるようなマニュアルがあるのです。ある病名を決めたら、こういう薬を出す、という基本マニュアルが存在する。もちろん、このマニュアルのガイドラインを作っているのは薬(毒物)の製造元でもある製薬会社です。」(p.18-19)
「このようなわけで、薬に対する迷信を改めていただいて、体の感覚をマヒさせたり、体が治ろうとする調律作用(反応)を無理矢理抑え込んで一時的に治ったように見せかける薬に頼らず、体が自然に回復しようとする力を立派に引き出させるようにしていただきたいと思います。薬の常用というのは、問題の先送りのみならず、高利の借金を増やしていく事に他ならないのです。」(p.19)
医学部では薬の勉強をまったくやらないと世古口さんは言います。医師は、製薬会社が用意するマニュアルに沿って処方するだけなのだと。
そんな毒物をありがたがって飲み続けることに違和感を感じない。それが多くの人なのですね。
「先の高熱を出すのも、それが最も有効な手段である事を知っているからであり、また、実際に出すべく力を持っている。つまり子供というのは、病気を経験して体を強くして行くのです。」(p.24-25)
子どもはすぐに熱を出したりしますが、それは病気を治す体の反応がよく働いていることであり、そうやって子どもは、病気になりにくい身体を自ら創っているとも言えるのですね。
「次に、子供が大人より弱い面ですが……。これは第一に精神面と気温(暑さ寒さ)。親の心配、不安を子供はテレパシー的に直接影響を受ける。不安をかかえながらでは、なかなか病気は治らない。」(p.25)
子どもが大人よりも弱いという一面はあって、それは精神面と気温の変化に対するものだと世古口さんは言います。
特に精神面は、病気に対して大きく影響します。心が主であり、身体は従なのです。
「つまり、○○病と病名をつけられたら、○○病の持ち主であるという自覚をさせられてしまうのです。無意識の中に於いて”病気持ち”という確認になってしまうのです。それでは自然経過などあるはずがない。つまり、病院へ行って、病人になっているのです。無意識が認識すれば、体は必ずその無意識通りになる。これは要するに、催眠術と一緒なのです。」(p.28)
医師から病気だと言われれば、それを信じてしまい、その信じた通りになるのです。
「この喘息のおばあさんにあらゆる治療をしても治らないなら、この人の頭の中に滞った欲求不満があるのです。家の中で邪魔者扱いされているとか、無視されているとか、誰もかまってくれない、自分に注意を向けてくれないなどです。
このような場合、突然体を壊し「私はここにいるぞ」という自己主張で病気になることが多分にあるものです。」(p.38)
人は、自分の強い欲求によって病気を発症することがある。これは、子どもが朝になると腹痛を起こすのと同じですね。
「どんな病気やケガも、「不安」や「恐れ」をかかえながら経過する事は出来ないのです。従って、健康という事を考える上で、まず心が第一、という事になります。心とは、言うまでもなく「意識」の事ですが、体に影響を及ぼす殆どのものは、「潜在意識」です。意志である顕在意識は、肉体とあまりかかわりがありません。」(p.44)
顕在意識で心臓を止めようと思っても止まりませんが、潜在意識が恐れを抱き続けていると心筋梗塞などで止まってしまうこともあるのです。
「だから私は癌など、風邪の親玉ぐらいにしか思っていない。要するに診る所は体に生きる力があるのか無いのか、という事だけです。癌という病状を特定して診ても意味はない。生きる力のある体は癌だって何だって治る。死ぬ体は、どんな病気でも死に至る。」(p.50)
「要は自然治癒力があるかないか、という事で自然治癒力をグングン引き上げるために気功法もあるわけです。これは大変な意味を持つ。はっきり言って自然治癒力が旺盛な体は癌など恐くも何ともない。それよりも、俺の癌はきっと治らないんだ、俺は癌で死ぬんだ、という空想のほうが恐い。空想が始まり潜在意識が働き出すと体は内部までその通りになる。だから私を信じない人の癌は治せない。」(p.50)
ガンと言っても大した病気ではなく、それよりも潜在意識の働きの方が大きいのだと世古口さんは言います。
「だから、「健康になるコツ」は、どんどん好きな事、やりたい事、ワクワクするような事を遠慮なくやって行く、という事です。これが健康の最大のコツです。そうすれば心も前向きになり、自然とプラス思考になって行くのです。」(p.53)
心配するのをやめて、好きなこと、楽しいことをやることですね。
「では、どうすれば良いか。
答えは言葉に出して断定口調で言う事です。つまり自己催眠にかける。潜在意識を変えるテクニックはこの他にもいろいろあります。有名どころでは、中村天風先生もお好きなクンバハカ。ヨーガを源流とした呼吸(気功)法です。それからイメージトレーニング。そして行動実践法などがあります。」(p.55-56)
潜在意識を変えるには、自分で自分に催眠術をかけることです。自己催眠であり、自己洗脳です。そのためには、アファメーションなど、様々な方法がありますね。
ただ世古口さんは、心が弱っている人には、言霊による方法をお勧めしています。
「まず、自分のなりたい自分、例えば、元気で明るい自分になりたいなら、「私は元気で明るく前向きな人間だ」と断定的な表現で紙に書く。」(p.56)
「そして毎月の朔日(ついたち)に声を出してハッキリ言う。まだ信じてなくてもかまわない。そんな自分になれることを信じられなくても全く良い。月に1回、紙に書いて声を出してハッキリと言う。そしたらどこか仏壇とか神棚の中や、本棚の上の目につかないところにしまって忘れてしまう。この、忘れてしまう、というのがミソです。いつも覚えているようでは役に立たない。顕在意識が忘れてしまうと、潜在意識が働き出すのです。」(p.56)
これも、潜在意識を働かせる効果的な方法ですね。
私は、同じような本をたくさん読むことで、読み終えた本の内容は忘れてしまっても、また別の本を読んだ時に、同じようなことを改めて知ることを繰り返し、自己洗脳してきたように思います。
「しかし恥ずかしいと思っている人の顔が赤くなり、その赤くなった顔を、それは皮膚の病気だ、だから瀉血(しゃけつ)して治そうと言っても仕方のない事で、人間の体は、心を含めて、全体をとらまえないと解決しない事が大変に多いのです。」(p.63)
身体の一部の状態だけを見て、いつもと違うからその部分がおかしい、とはならないのですね。
「風邪というのはすなわち、体の強制的な休息の要求なのです。体の使い方がズボラな、不摂生の多い、体をいたわる事の少ない持ち主に対して、体が休む要求をしているのです。だからそれをかなえてあげれば、風邪をひく前よりずっと体が丈夫になります。時に長年の慢性病が治ったりする事もあります。」(p.64)
このことは、「風邪の効用」という本で、野口整体の野口晴哉氏も示されていました。
「ギックリ腰を含めて、腰痛は何らかの内臓の異常や、体の内部の偏り疲労がある、それが結果的に腰椎骨の歪みを生じさせているのです。つまり痛みの直接的原因になっているのは、確かに骨の歪みですが、その更に奥の原因があるのです。だから骨の歪みだけ治しても根本的解決には全くならず、せいぜい一時的に痛みを引かす事が出来るだけです。腰痛の原因は沢山ありますが、まず多いのは胃を慢性的に疲労させている人、次に腎臓負担、肝臓の障害、打撲によるヘルニア性のもの、足首の異常、婦人科(卵巣、子宮)の障害、汗を急速に冷やしたために起こる胸椎10番変異などなどです。」(p.67)
私には骨の歪みなどはわからないし、これらの内蔵疲労が腰痛の遠因かどうかは何とも言えません。しかし、世古口さんはそう考えておられるのですね。
「そう言えば人間も最近あまり噛まない人が多い、殆ど犬と同じで飲み込んでいる人がいます。だからよけいに断食は効果がある。しかし、なんでもかんでもよくかむ事を勧めている人がいますがこれも間違い。いつもいつもよくかんで食べていると、胃はよくこなれた消化によいものしか処理出来なくなってしまいます。胃を弱くしてしまうのです。消化能力を落としてしまうのです。だから時々早食いするのも体の使い方としては正しいのです。」(p.72)
腰痛の原因の1つでもある胃の疲労は、噛まずに飲み込むような食生活によってももたらされます。だからよく噛めとも言われるのですが、噛んでばかりの食べ方もダメとのこと。筋肉を鍛えるように、時に負荷を与え、時に休ませるというバランスが大切なようです。
「人体の最高中枢である脳を守るために、粘り気の出来てしまった血液を押し出すために圧力を強化するのです。これが高血圧というもの。つまり高血圧とは病気ではなく、体の本能による安全現象という事になります。これを降圧剤などの薬で人工的に強引に圧力を下げるとどうなるか、言うまでもなく脳梗塞直行便ですネ。」(p.74)
私もこの説に賛同しますし、これまで読んだ本でも、こういうことを言っている医師もいます。身体の仕組みを考えたなら、こう考えた方が合理的だと思うのですがね。
「普段はこれを、白血球やリンパ球の免疫細胞が対処します。しかし、何らかの事情により外敵が多くなった場合は、攻撃性の強い免疫細胞を限度を超えて動員することは体にとっては危険です。そこで体は発熱による「熱殺し」を発動することにより、一括消毒をしようとします。細胞もウイルスも熱には大変弱いのです(発熱の項を参照)。しかしそれを、現代医療は発熱は悪いものとの価値観により、「解熱剤」を投与します。結果的に体は、最終手段を奪われた形になります。しかし増大した外敵には対処しなければ生命維持にかかわるので、やむを得ず、両刃の剣にもなり得る攻撃性の強い免疫細胞を増殖し急場をしのごうとします。結果的に、これが正常細胞を傷つけることになり、このくり返しがアレルギー症状、というより「アレルギー体質」というものをつくりあげるのです。」(p.80)
アレルギーは免疫の暴走とも言われますが、世古口さんは、薬の常用によって発熱しない体質になっていることが原因だと言います。
「まず下痢、こんなものは今まで読んできていただいてお判りの通り、病気ではなく体の生理現象です。つまり体の掃除。ストレスなどで作った体の毒素を、体が自浄作用で勝手に毒出しの大掃除をしているのです。結構な事です。」(p.109)
「次に便秘、まずはこれはやはり心理的な問題が多い。下痢になるか便秘になるかは腰椎の2番と4番で決まりますが、これも放っておけば良い。下剤なんか飲むから、大腸の活力を落とすのです。薬という外からの力が加わると大腸が働かんでいい…となまけます。しばらくはお腹が苦しくなりますが、それも最初だけ、数日放っておけば、大腸がその気になって一生懸命働き出します。そして大事な事は、毎日出なければいけないという常識のウソ。これは人間の体を機械のように錯覚している素人の人たちの考え。人間の体は感情があるし、また低潮、高潮という波、つまりリズムもあるのですから変化してあたり前。機械のようにいつも一定ではない。」(p.109)
下痢は毒素の排出作用というのは、私も同感ですね。便秘そのものが身体のどういう作用なのかは書かれていませんが、気にし過ぎなければ良いとのこと。
実際私も、排便が2〜3日ないこともあります。でも、下剤などは飲みません。自然と出るようになるものです。たしかに、最初はちょっと苦しかったりもしますがね。
「これをテレビが言うように時々逆の足を上にしたらどうなるか。疲労を抜くどころか、かえって疲労を起こし歪みを生じます。だから人間の浅知恵を体に強要するよりも、体の本能に従えば良いのです。」(p.124)
座って足を組む人が、同じ方の足ばかりを上にすると体が歪むから、時々組み替えた方が良いとテレビで言っていたのだそうです。
私もそうかなぁと思って、気がつけば逆の足を上に組み替えたりしていました。しかし世古口さんは、体が楽だと感じているやり方に任せておけば良いと言うのです。
「不眠症で悩む人は多いですが、本来、不眠症なんてつまらない話です。人間はたかだか80年くらいしか生きられないのだから、眠れないなら起きていれば良い。それだけ人生やれる事が多くなる。だいたい不眠で死んだり病気になるなんてウソなのです。」(p.125)
眠れないなら眠らなければよい。私もそう思って、眠れない時は起きて読書などしています。
「これまで本書をすべて通して読んでこられた方はお判りの通り、病気というのは不安定な心の問題という要素がなければ、殆どは体の修正現象、掃除現象という事が出来ます。心で作っている病気を除外視すれば、心さえ安定しているならば、体が自身の自然治癒力を活用して自動的に修復をする、その過程でいろいろないつもと違った反応が起こる。これが病気というものです。」(p.128)
様々な症状は浄化作用の現れだとレイキでも言います。だから安心していることが大事なのだと。
「しかし本来は、あまり一生懸命努力するものではない。あまり一生懸命になると、努力すればするほど、潜在意識に於いて「私の病気は重いんだ」という確証になってしまうのです。だから皮肉なもので一生懸命になればなるほど病気は重くなって行く、治りが悪くなっていきます。」(p.129)
健康になるために、病気を治すために、やらなければならないこともありますが、そこに執着しすぎて努力しすぎるのも逆効果なのですね。
「体が痛む時や、だるい時は普段の3分の1も動けませんネ。胃が重い時などでも普段の5分の1も食べられませんネ。つまり強制的に休息をとらされているのです。だから使用制限なのですが、これが結果的に素晴らしい、養生をしている、回復のための静養をしているという事になっているのです。」(p.132)
痛いとかだるいなどの体のサインに従って養生することが、自然治癒力を働かせるのに最適なのです。
「このように体には生命活動を滞りなく行うための要求があるだけなのです。医者が言うような故障のサインなど体には存在しないのです。」(p.132)
「胆石の人も腎石でも尿路結石でも、痛む時は限られている。四六時中なんてことは決してない。週に1回か2回、あるいは月に1日か2日、時おりキューと痛むという程度の人ばかりです。もっと少ない人は半年に1回という程度です。石があるから痛いのなら、石が出ていかないうちはずうっと痛むはずでしょう。これは何故か。つまり石と痛みは直接的つながりはないのです。」(p.135-136)
「要するに、石が出来るような健全ではない状態で、体の使用が過ぎて負担をかけ過ぎた時に、回復に必要な養生要求のために痛む、という事です。」(p.136)
「以上でおおむねお判りだと思いますが、どんな痛みであっても、どんな体の変調であっても、それは立派に意味があっての事なのです。何らかの体の要求であるという事なのです。」(p.137)
体が良くなろうとしている時、治ろうとしている時、養生するようにというサインとして、痛みとかしびれなどが起こると世古口さんは言います。
だから、その症状そのものを病気と捉えていてはいけないのです。
「もとより、本来冷たい肉体が、36℃に維持されているのは自家発電のような「内燃力」なのです。しかし、外から温めようとすると自身の体温を上げる力「内燃力」を落とすのです。では、どうすれば良いか。それは「気力」を高める事に他なりません。すなわち、「心」です。
「気力」こそ自然治癒力、免疫力、内燃力の源なのです。」(p.149)
体を温めて体温を高く維持するのが良い。だから湯船に浸かるとか、腹巻きをすることが良いなどと言われますよね。しかし世古口さんは、それに頼ってばかりも良くないと言います。外部からの助けに慣れてしまい、体が熱を出すことをしなくなってしまうからです。
「まず、健康になるために難しい事は要らないのです。その最大のコツは、「体の要求に従う」という事です。つまり、お腹が空いてから食べる、眠くなってから寝る、動きたくなったら動く、休みたくなったら休む、寒くなったら温める、暑くなったら少し冷やす…このように、本能に従うという事ですう。頭で考えても意味がないのです。」(p.151)
つまり、身体の声をよく聞いて、それに従い、無理をさせないということですね。
まあしかし、精神が優位で、あれこれやらなければならないことがあると考えてしまう私たちにとって、それが一番難しいのですがね。
世古口さんは他に、人の体の働きを「食べる」「考える」「動く」の3つに分け、複数を同時にやらないことを勧めています。これもよくやってますね。食べながら考えている、動きながら食べている、など。
他には、食べてすぐには寝ないこととか、最後の一口二口くらいを食べずにおく腹九分を勧めています。できることからやってみることですね。
「癌予防に最も重要な要素、つまり、癌を考える上で大敵となるものは、悪い順から挙げると、
@癌を恐れる心、病気に怯える心
A免疫力の低下
B体の酸化
この3つです。」(p.158-159)
タバコの害よりも、まずは恐れ(不安)だと世古口さんは言います。無意識に恐れていることが、潜在意識の働きからしても最悪のものなのです。
「では、忘れるためのコツですが、これは癌の正体を見切ってしまう事です。知らないものであるから人は怖いのです。得体が知れないから恐怖を感じるのです。忘れようと思っても無意識の領域でフツフツと込み上げてくるのです。だから正体をちゃんと知ってしまう事です。」(p.160)
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という俳句がありますが、正体をハッキリと見極めないから恐いのです。その恐怖があるから、忘れることもできない。
そもそも、癌は常に発生と消滅を繰り返しているもの。免疫力のある体なら、癌の増殖はあり得ないのです。
「だから免疫力をいつも向上させておく事。では、どうするか。これは我田引水と言われるかもしれませんが、気功が一番です。」(p.160)
世古口さんは気功をされるから、気功が一番だと言われます。要は気によって心身を整えるということだと思います。
「しかし東洋医学、特に整体法の世界では、その独特で体を全体から見る特殊な視点から、癌の正体について今から50年も前にある一つの看破をしておりました。それはカビです。カビは生体のどこでも繁殖し、酸化した組織(細胞)を特に好む。」(p.164)
「癌はカビであるが故に、酸化を好み、酸化度が少ない組織に対しては繁殖しにくく、また発生しても消えて無くなったりします。パンの例でも判るように、カビが生えはじめた食パンを、そのまま真空のボールに入れ保存すると、繁殖は急速に抑えられ、あるいは萎縮していきます。」(p.165)
「このようなわけで、人体というものを、病理学的かつ物理的にとらえた場合、癌への特効薬は第一に体の酸化を止め、カビの繁殖を封鎖する抗酸化酵素、SODという事になります。」(p.167)
ガンはカビの一種だと言うのですね。だからカビのように増殖すると。その増殖を抑えるには、SODという抗酸化酵素が役立つと言います。
「ここで余談ですが、多くの癌を治してこられた師が、その経験上、面白い事を言っておられます。「癌はねたみの化けたものだ、そして恐怖で進行する」と。ねたみとは人間の心の貪欲(むさぼり)から発生します。現代のように拝金主義、物質至上主義が、癌という病気を爆発的に増やした原因の一つなのかもしれません。」(p.168)
ここで「師」と言われているのは、整体法の創始者、野口晴哉氏のことです。
「癌は、知らなければ体が自然に対処して、多くの場合、問題が起こらないように消滅させている。しかし、知ってしまったら消えなくなります。恐怖やストレスが免疫力を一番落とすからです。また、マイナスに働いた潜在意識の問題も非常に大きい。本人が知ってしまったら癌はやっかいです。」(p.171)
世古口さんは、ガンの告知には否定的なようです。
「では、これら「気」というものはどういうものなのでしょうか。ずばり申しますと、この「気」は、心の波動、というように認識されております。心の波、弱気になったり強気になったり、嬉しかったり悲しかったりという感情、心が常に刻々と変化して行く、だから波動。ですから皆さんも生きている限り、今この場でも「気」を出しているという事になります。」(p.226)
「だから、「気」はどんどん良いほうに作用させねばならない。この辺においては少し潜在意識に似ていますが、潜在意識を作用させる、つまり操るのが「気」だとお考えいただけば良いでしょう。そしてこの心の波動「気」が実に大きなエネルギーを持っているのです。」(p.226)
「つまり特殊な、ガラスやフィルムを通してなら、人間の出しているオーラが見えるようになったという事です。このオーラこそが「気」というものなのです。」(p.228)
気功をされる世古口さんは、「気」をこのように説明されます。
科学者がオーラを可視化した実験を取り上げて、気はオーラであり、すべての人が発しているものだと言います。それは魂の働きであり、そこに身体がなくなったとしても、そのエネルギーは残るから、気を感じることができるのだという話も書かれていました。
「つまり、心の状態(魂の状態)の共鳴なんだな、という事だったわけです。自分が黒であれば、相手も次第に黒になる。自分が真白だったら相手も次第に白くなってくる。だから共鳴。エネルギーを分け与えるのでも、移入するのでもなかったのです。」(p.231)
自分がイライラしながら治療をしていると、患者にもそれが影響することがあったと言います。そこで世古口さんは、気は流れていくものではなく、伝わるもの、共鳴するものだと言うのですね。
たしかに、レイキでも便宜的に「流れる」と表現しますが、実際は「流れる」と考えるとどこをどう流れるのかという問題にぶちあたります。「共鳴する」というのは波動が伝わることであり、これは面白い説明だなぁと思いました。
「強い思想を持つという事は、潜在意識の変革の上では、最も強力に役立つものなのです。もちろん、それはとても難しい事である事は本文でご説明しました。従って、言葉による誘導法をご紹介しました。しかし出来得るならば、これに勝るものはないのです。」(p.240)
「また、宗教や宗旨、宗派の違いを問うものでもありません。それは、歴史上の偉人である「釈迦の本当の思想」です。つまりこの章では、宗教の色を排除し、学問的、哲学として、釈迦の思想、すなわち仏教をご紹介させていただきたいのです。」(p.240-241)
世古口さんはこのように言われて、最後の章を特別なものとし、本文の各章とは別に、心を強くするための思想を持つために釈迦の思想を紹介されています。
ここでは、釈迦が語ったであろうことが確かだと言われる法句経(ダンマパダ)と阿含経(ニカーヤ・スッタニパータ)を参考にしています。興味がある方は、本書をお読みください。
私も、キリスト教から始まって、中国の古典や仏教についても、いろいろと本を読んできました。そういう中で「神との対話」と出会い、これがもっとも合理的だなぁと感じました。そのお陰で、心が強くなったように思います。
本書を読んで、薬は毒だということは私も知っていましたが、その薬の効果について大した知識もなく処方しているのが医者だという話には驚かされました。そんな医師の言うことを盲信し、言うなりになっている医療の現実には、私も疑問を感じずにはいられません。
特にレイキをするようになって、発熱や下痢などの病気と言われる症状は「浄化」なのだと知ってから、その症状を抑えるために薬を飲むということに違和感を感じるようになったのです。そういう意味で、私はこの本に書かれていることに共感します。
しかし、整体によって病気が治るということについては、まだよくわかっていません。
本書では、そのことについてはあまり触れられていません。それよりも大事なのは、心の持ちようということなのだろうと思います。
2022年11月11日
アメリカの名医が教える内臓脂肪が落ちる究極の食事
これもYoutube動画で紹介されていたのを観て、面白いと思ったので買った本です。
著者はマーク・ハイマン氏。医学博士です。翻訳は金森重樹(かなもり・しげき)氏。金森氏は、不動産関係の本を出されていたと思いますが、以前に読んだことがあります。また、「ハイパワー・マーケティング」という本の翻訳もされてましたね。幅広く活躍されておられるようです。
この本を読んで知ったのですが、金森氏自身が高脂質食ダイエットを行うことで、90kgの体重が2ヶ月で58kgにまで落ちたのだとか。それもあって、本書を翻訳されているようです。
Amazonのレビューを見ると、難しいという感想がけっこうありました。
たしかに本文の詳細部分はややこしいので、それほど必要でもないように思います。それに、本書の結論にあたる内容を、冒頭に金森氏が「まえがき」としてまとめています。この部分を読むだけで、本書の要点がよくわかるように思いました。
なので、引用のほとんどは、金森氏が書いた「まえがき」からのものになります。それでもけっこうな量になりますが。
これまでの常識をくつがえすものですが、何事も理論と実践が重要だと思います。自分でやってみて、確かめてみることですね。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「高脂質食を摂ることでおなか周りに余計に脂肪がつくのではないかと考えられている方もいると思いますが、全くの誤解です。
おなか周りの脂肪は、脂肪の合成促進・分解抑制の働きを持つホルモンの一種、インスリンによって摂取されたエネルギーが体内に脂肪として蓄積されるのが原因です。」(p.1)
「血糖値依存性のインスリン反応は全体の23%にすぎません。
インスリンが出るのは、糖質摂取時だけではなく、タンパク質を摂ってもインスリンは出ます。」(p.2)
インスリンによって脂肪が溜め込まれるのですが、インスリンの分泌は、血糖値の上昇によってのみ引き起こされるわけではないのですね。
最も出やすいのは、糖質とタンパク質の組み合わせだそうですが、脂肪だけ食べてもインスリンは出るようです。要は、エネルギーが過剰になると、身体はそれを脂肪として溜め込もうとするのです。
「慢性炎症はインスリン抵抗性を通じて肥満に直結しますので、炎症対策はダイエットの最も重要なポイントのひとつです。」(p.3)
肉、卵、チーズを中心に摂取する「MEC」という食事法があるそうですが、チーズに含まれる乳化剤が肥満と炎症性腸疾患に影響を与えるため、痩せない人が出てくるのだとか。タンパク質も摂りすぎると太ると金森氏は言います。
「インスリン分泌の組み合わせの中で最もインスリンが出にくいのは純粋な脂質を摂取した場合で、これが高脂質食でおなか周りの脂肪が溜まりにくい理由のひとつです。」(p.3)
インスリンを出しにくい食事は高脂質食。身体が脂肪を溜め込みにくい食事なのですね。
「本書では「あなたが太るのは、食べる量が増えて運動不足になるからではなく、太っているために食べる量が増えて運動不足になるから」つまり、脂肪細胞が「空腹感をもたらし」、過食することになる因果の流れについて説明されています。」(p.5-6)
食べるから太ると言うより、太っているから食べたくなる。これについては、前に紹介した本でも、そのようなことが書かれていました。
「人類が農業をはじめる前、つまり旧石器時代の人間は、米や小麦などの穀物を食べていなかった。つまり糖をとらない肉中心の食生活でした。そのため、当時の人類は虫歯や歯周病に一切かかることなく、親知らずも死ぬまで残っていたそうです。また男女共にBMIも適正なレベルに収まっていました。
この傾向はイヌイットにも見てとれます。アザラシやカリブー(トナカイの一種)の肉や、アザラシの脂で漬けた鮭、落花生しか食べてない先住民族イヌイットも、歯医者要らずで知られています。」(p.11)
糖質を摂取しなければ、虫歯や歯周病とは無縁なのです。万病の元とも言われる歯周病にならないのであれば、健康でいられる確率が高まりますね。
「糖によって「奇形」が全世界にもたらされ、この食生活の変化によって人類の身体が退化した。
これは「糖の恐怖」といっても過言ではないはずです。
糖質をとることによって、肥満だけでなく数々の身体の疾患に繋がってくるのは先に述べたとおりです。」(p.13)
金森氏は、歯科医院で論文を見て、旧石器時代の食事(狩猟採集民のような糖質制限)を体験することになったと言われています。
「現在、オンラインサロンでは多くの方が断糖高脂質食を実践しており、一番減量された方で、男性は1年4ヵ月でマイナス74.4kg、女性は1年2ヵ月でマイナス50kgです。さらに、肌荒れが治りハリがでてきた、爪が強くなった、過食嘔吐しなくなった、疲れにくくなった、イライラしなくなった等の効果に加えて身体や心の改善も毎日、続々と報告があります。」(p.15)
金森氏のオンラインサロンでは、断糖高脂質食を実践する仲間の情報交換をやっているようです。
「オンラインサロンをはじめたことで、当初は知識がなかった「質的栄養失調」の状態を知ることになりました。
これは、「栄養不足で脂質をエネルギーに上手に換えられない」という状態です。」(p.16)
ビタミンやミネラルの不足から質的栄養失調が生じているようです。品種改良や化学肥料などによる野菜の栄養不足が深刻なのだそうで、通常の食事ではビタミンやミネラルを十分に摂れないのだとか。
「問題はいままでカロリー制限ダイエットをしてしまっていたり、断食をしてしまっていたりしたことで体内で必要な補酵素、補因子が枯渇してしまって、脂肪を取り込んでエネルギーに換える、ヒトの細胞内のミトコンドリアが活性化できていないことだったのです。」(p.16-17)
これが質的栄養失調状態で起こっていることだそうです。金森氏は、ビタミンB群、鉄、Mg、ビタミンCなどのサプリを摂ることで、この状態を脱することができると言われます。
「タンパク質が充実してはじめて、サプリメントなどの効果が発揮されて質的栄養失調も解消に向かうからです。」(p.19)
体質改善のために、最初は断糖高タンパク質にする方法があるようです。いきなり断糖高脂質食にして上手くいかない時、サプリを摂取しても上手くいかない時、その期間を経て断糖高脂質食へ移行するという方法です。
「野菜を食べる胃袋のスペースがあるなら、肉をおなかに詰め込んだほうがよほどビタミンやミネラルは摂取できます。ですから、僕は野菜の摂取は推奨していませんし、僕自身、野菜は基本的には摂取しません」(p.16)
ある意味で非常に偏った食事ですが、金森氏はこれで問題がないと考えておられるようです。
「オメガバランスを整えるためには、ふたつのやり方があると思います。
穀物牛に多いオメガ6に拮抗するだけのオメガ3の魚油をサプリメントで摂取する方法。
もうひとつは、たとえば鯖缶中心生活のようにそもそもオメガ3を中心に含む食事に切り替えて肉類を食べないようにする方法です。」(p.20)
オメガバランスというのは、前に紹介した本でもあったように、オメガ3に比べてオメガ6の摂取が多過ぎるので、バランスを取ろうということですね。
このように、旧石器時代食を実践しておられる金森氏は、自身やオンライサロンに集まる人々の体験からも、本書の内容が素晴らしいと推薦しておられるのです。
では、ここからは本文からの引用となります。
「太り過ぎると、ホルモンと脳内化学物質によって空腹感と疲労感が生じるのだ。
これは、体重増加の原因についての考え方を根底から覆し、減量のために推奨されていることを何もかも否定している。ルートヴィヒ博士は、カロリーと量のことばかり考えず、体が本来の能力を発揮して空腹感・活動・代謝・体重を調節できるように、食事の質と構成(タンパク質、脂質、炭水化物の量と種類)を重視することをすすめている。意志の力に頼るのではなく、科学を用いて空腹感をなくし、エネルギーを高め、代謝をスピードアップさせよう!」(p.64-65)
食べ過ぎるから太るのではなく、太るから空腹を感じて食べすぎてしまう。その空腹を意志力で克服しようとするのではなく、つまり単純なカロリー制限をするのではなく、食事の質、構成を変えることが重要だと言うのですね。
炭水化物を多く摂ると血糖値が急上昇し、インスリンが大量に分泌され、それによって急激に血糖値が下がります。これが「血糖値スパイク」と呼ばれるもの。こういう乱高下が身体に悪影響を与えるとともに、急低下した血糖値によって、今度は空腹感が増すのです。だから、炭水化物の摂り過ぎや、炭水化物ばかり多く摂取することが問題になるのです。
「科学者も含めて多くの人が混同しているのは、私たちが食べる飽和脂肪酸が血中の飽和脂肪酸になると考えていることだが、直感とは正反対の衝撃的な事実がある。それは、食事で摂る飽和脂肪酸は血中飽和脂肪酸値を上げないということだ。肝臓が血中飽和脂肪酸を生成する原因となるのは、炭水化物と糖質(と過剰なタンパク質)である。」(p.92)
血中の飽和脂肪酸値が高くなると、心臓病のリスクが高くなると言われているようです。しかし、コレステロールの摂取制限が撤廃されたように、食べたものがそのまま血中に流れるわけではないのですね。
「結論から言うと、一価不飽和脂肪酸は健康に良い。ギリシャ人やイタリア人のように、オリーブオイルやナッツをたくさん摂る人々の心疾患率は、世界で最も低い。」(p.95)
地中海食と呼ばれるそうですが、オリーブオイルを使い、魚介類と野菜を中心にした料理を食べている人たちは、健康で長生きをするのだそうです。
そのオリーブオイルやアボカド、ラードや牛脂やナッツ類には、一価不飽和脂肪酸が多く含まれているそうです。
「この研究により、飽和脂肪酸−−その大部分はココナッツオイルのMCT、つまり中鎖脂肪酸トリグリセリド−−は、アルコール摂取を続けていても、肝臓のダメージ回復に効果があることが判明した。」(p.129)
炭水化物が多過ぎるとか食物繊維が少な過ぎる場合は、飽和脂肪酸が炎症を進行させることがあるようです。逆に飽和脂肪酸を摂取することで、肝臓のダメージ回復に役立つという研究結果もあるのですね。
「本項の要点は、飽和脂肪酸を炭水化物が少なく食物繊維が多い、オメガ3脂肪酸の豊富な食べ物と一緒に摂ると、炎症を抑制する。そして炎症を抑えることが、減量と健康増進のカギであるということだ。」(p.129)
他の書籍ですが、オリーブオイルも身体に良いものではないと書かれているそうです。しかし、オメガ3脂肪酸は良いものだとされていました。
オメガ3脂肪酸に対する評価は、これまで悪いものを聞いたことがありません。オメガ6とのバランス上、多く摂取することが健康に寄与すると言えそうです。
なお、本書では、MCTオイルで推奨できるのはココナッツオイルだけで、パーム核油はダメだと言っていました。私が買ったのはパーム核油のMCTです。そこは残念でしたが、買ったものは仕方がないので、使い切りたいと思います。
「北米ロッキー山脈東部の大平原で遊牧を行っていたネイティブアメリカンは、バッファローを主食にしていて、100歳以上の人の割合が最も高かったが、セブンスデー・アドベンチストの信者はベジタリアンでありながら、世界で最も寿命が長い人々だ。どうなっているのだろう? 肉と野菜、どちらがいいのだろうか? もしかすると、質問の仕方が間違っているのかもしれない。
考えられる答えは、私たちが気にかけるべきは肉食か菜食かではなく、肉食の人の典型的な食事や炎症を起こしやすい加工食品に含まれる、糖と精製炭水化物だということである。」(p.170-171)
「研究者たちは、健康意識の高い肉食の人とベジタリアンの双方とも、欧米風の加工食品を食べる平均的な人に比べると総死亡率が半減することを発見した。」(p.175)
肉食にも菜食にも健康長寿の人が多くいるなら、重要なのは別の視点だということですね。本書では、健康を害する原因は糖と精製炭水化物にあると指摘します。
一見するとベジタリアンの方が健康そうに見えますが、それは健康意識が高い人が多いからだと言います。だからベジタリアンでなくても、肉食でも、健康意識が高い人であれば、逆の低い人と比べれば健康で長寿なのです。
「ココナッツオイルの飽和脂肪酸である、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)は、実際に総コレステロールとHDLコレステロールの比率を下げ、体重を減らし、さらには肥満による脂肪肝を治すこともできる。MCTはユニークな飽和脂肪酸で、抗酸化作用と抗菌性があり、免疫系強化の役に立つ。MCTは体内で容易にエネルギーに変換される。したがって、MCTオイルはエネルギーとして使われてしまい、脂肪として蓄えられるMCTオイルはほとんど存在しない。このようにしてMCTは内臓脂肪を燃焼させ、体重を減少させるのである。」(p.201)
MCTがエネルギーに変換されやすく溜まりにくいことはわかるのですが、内臓脂肪を燃焼させることとどう関係するのか、この説明ではまったくわかりませんね。
ただこの後にある研究の結果が書かれていますが、それによれば、MCTを摂取した人の方が体脂肪が多く減ったとあります。
「MCTオイルがエネルギー消費と脂質の酸化、つまり燃焼を上昇させた−−言い換えると、代謝が速くなったのである。またMCT食の人は、オリーブオイル食を食べた人に比べて、それほど空腹を感じなかった。」(p.202)
「というわけで、MCTオイルには、代謝を加速し、カロリー消費を増やして内臓脂肪蓄積を減らし、さらに食欲を抑える効果がある。」(p.203)
研究の結果からは、MCTオイルを摂取すると空腹を抑えられ、脂肪の代謝が高まるということです。男性では1日あたり460kcalを余分に消費させる効果があるという研究結果も紹介されていました。
でも、今のところ私は、そこまでの実感はありません。ココナッツオイル由来のMCTではなく、パーム核油だからでしょうか。パーム核油について本書では、わずかに飽和脂肪酸が多いとだけ説明されていて、精製パームオイルと同様に粗悪で加工品に多く使用されていて避けるべきだとありました。
「あなたの脳の60%は脂質で、その大半はオメガ3脂肪酸とコレステロールでできている。あなたが低脂質の食事をとると、脳を飢えさせていることになる。
脂質は脳に不可欠だ。食事の脂質不足は、神経変性疾患、うつ病や自殺や攻撃行動などの精神障害、注意欠陥障害(ADD)や自閉症、脳卒中、さらにトラウマと関係があるとされている。
その一方で、食事をオメガ3などの良質の脂質で補うと、これらすべての条件の改善に結びつく。」(p.226)
要するに脂質は脳に良いとのことです。特にオメガ3などですね。
「最高の医師はあなた自身の体だ。その声に耳を澄まそう。よく注意しよう。何で体調が良くなるのか、あるいは悪くなるのか? 効き目のある薬を見つけよう。何度もお話ししたように、食べ物は薬であって、ただのカロリーではない。それにはあなたの遺伝子・代謝作用・免疫システム・腸内細菌を調節する情報や命令が含まれているのだ。」(p.248)
結論として、私もこれに同意します。どんなに良いことが書かれているとしても、それを実践し、自分の身体に合うかどうかを確認する必要があると思います。鵜呑みは危険ですから。
以前に読んだ「やせたければ脂肪をたくさんとりなさい」と同様に、本書は脂質を多く摂ることを勧めるものです。私も原始食という考え方に賛同するので、高糖質・炭水化物食は避けようと思い、そうしてきました。
そこでタンパク質を多くということをまず考えたのですが、タンパク質は糖質に転換されるし、またインスリンの分泌を促すことがわかってきました。筋トレで筋肉量を増やそうとしているならタンパク質が大事ですが、そこまでの筋トレもしていません。そうであれば、タンパク質の摂り過ぎによる弊害もあるのかなと思っています。
ということで、私も高脂質食に転換していこうと考えています。備蓄している炭水化物(カップ麺など)がなくなったら、ですが。そして、私の場合はやはり、無理に炭水化物をゼロにしようとは思いません。基本的には食べませんが、出されたものは食べる。ゆるやかな高脂質食にして、自分の身体の声を聞こうと思います。
2022年11月12日
図解 眠れなくなるほど面白い たんぱく質の話
これもYoutube動画でお勧めされていて、面白そうなので買ってみた本です。
著者は立命館大学スポーツ健康科学部教授の藤田聡(ふじた・さとし)氏です。130ページ足らずの薄い本で、サクサクと読めてしまいました。
内容はタイトルから想像できるように、たんぱく質の摂取を勧めるものになっています。
この前、脂質の摂取を勧める本を読んだばかりですが、それと比較すると、全体的にはカロリー栄養学に立脚していて、脂質の摂取に関する深い洞察がないように思いました。
しかし、たんぱく質の摂取そのものに関しては、いろいろと気づきも得られたので、読んで良かったなと思っています。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「たんぱく質の主な働きは、私たちの体の組織をつくる材料になること。筋肉をはじめ、血管や内臓、皮膚や髪、爪など、体の大部分がたんぱく質でできており、その総重量は体重の約30〜40%にものぼります。特に筋肉においては、水分以外の約80%がたんぱく質によってつくられています。」(p.10)
このように、人体を構成する主要な要素がタンパク質であり、タンパク質はそれだけ重要な栄養分であることを示しています。
「食事から取り込まれたたんぱく質は、体内で一旦アミノ酸へと分解されます。そして、全身の各部位で機能するたんぱく質として再合成されます。そのようにしてつくられるたんぱく質の数はなんと10万種類! さらに驚くことに、それらをつくっているのが、わずか20種類のアミノ酸です。」(p.10)
アミノ酸に分解されて消化吸収され、タンパク質に再合成されることは知っていましたが、その種類がいくつあるかは知りませんでした。
わずか20種類のアミノ酸を合成して、身体に必要な10万種類ものタンパク質を合成している。人体って、本当に素晴らしいなぁと思います。
「きれいに痩せるためには「単に食べる量を減らせばいい」というわけではありません。なぜなら、これまで説明してきたとおり極端な食事制限では、筋肉が大幅に減ることで基礎代謝も減少し、リバウンドの危険性が高まるためです。理想はできるだけ筋肉量を落とさずに体脂肪を減らすこと。そのためには、朝・昼・夜に毎食十分なたんぱく質を摂ることが絶対条件です。」(p.18)
「脂質や糖質は体内で消化吸収された後、余剰分は脂肪として溜められ、飢餓や病気、けがなど、いざというときのためのエネルギー源として蓄えられます。たんぱく質は一部脂肪にも変換されるものの、ほとんどがエネルギー消費されるか、余った分は尿中に排出されます。」(p.20)
吸収されたアミノ酸は、タンパク質の合成に使われます。身体の中では常に、筋肉の分解と合成が行われており、分解が優位になると筋肉量が減少するのです。
そこでタンパク質を食べることが必要なのですが、合成に使われない余分なアミノ酸の多くは排泄されるそうです。だから、血中アミノ酸濃度を保つためには、1食だけタンパク質量を増やすのではなく、均等に食べるのが良いと言われています。
しかし疑問なのですが、筋肉合成と分解の釣り合いが取れているとすれば、タンパク質を摂取しなくても、血中アミノ酸濃度は変化しないのではないでしょうか?
必要なものを尿として棄てるとも思えません。他でエネルギーが足りているなら、わざわざタンパク質(アミノ酸)をエネルギーに変える必要もありません。
もちろん実際には、空腹になればタンパク質(アミノ酸)から糖新生などでエネルギーになるでしょうし、バランスを取るために状態は刻々変化し、身体はそれに対応しているものと思います。でもそうであれば、3食同じくらいのタンパク質を摂取しなければならないという結論は、身体の恒常性能力を過小評価しているようにも思います。
「たんぱく質は食欲を抑えるホルモンの分泌に関わっており、食後の満腹感を高めてくれるのです。」(p.20)
つまり「腹持ちがいい」ということですね。ダイエットには空腹感を抑えることが重要なのだということは、前に紹介した本にも書かれていました。
25ページには20種類のアミノ酸をすべて紹介した表があります。なかなか知る機会がなかったので、その一覧を抜粋したいと思います。
・必須アミノ酸:イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン
・非必須アミノ酸:チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニン
それぞれのアミノ酸には、それぞれの機能があります。前の本にも、グルタミン酸やグルタミンを摂取するのが良いとありましたが、グルタミン酸は脳や神経の働きを助け、疲労回復効果があるそうです。またグルタミン酸の1つだとされるグルタミンは、腸管のエネルギーとして利用されたり、アルコールの代謝を高めるとありますね。
アスパラギンやアスパラギン酸は、新陳代謝を高めたり疲労回復に効果があるそうです。アルギニンは血管を広げて血液の流れを良くするとか。
必須アミノ酸のロイシンやイソロイシンは、筋肉を強化して肝臓の働きを高める効果があるそうです。フェニルアラニンはドーパミンの、トリプトファンはセロトニンの、それぞれ材料になるとか。
いずれにせよ、アミノ酸単体で摂取するものではないので、タンパク質を食べるようにすれば、アミノ酸に分解されて、このように身体に役立っているということですね。
「つまりスコアが100に近いほど、必須アミノ酸をバランスよく含む、質のよいたんぱく質であることを意味しています。
肉や魚(貝類・甲殻類は除く)、卵など動物性たんぱく質の多くはスコア100を満たしています。」(p.26)
良質なタンパク質かどうかを知る目安として、「アミノ酸スコア」と呼ばれるものがあります。これは、必須アミノ酸がどれくらい含まれているかを数値化したもの。体内で合成できないアミノ酸を必須アミノ酸と呼んで、これは食べ物から得るしかないのです。
肉や卵がスコア100なのは、ある意味で当然とも言えますね。植物性では、大豆もスコア100です。畑の肉と呼ばれる所以ですね。
驚くことに、白米もスコア93とかなりいい線をいっています。トマトが85、チンゲン菜が77というのも驚きです。そう考えると、ベジタリアンだから栄養が不足する、とも言い切れないのだとわかります。
「DITにより消費されるエネルギー量は、1食の摂取エネルギーの約10%といわれます。その割合は栄養素ごとに異なりたんぱく質は摂取したエネルギーの約30%ものエネルギーがDITによって消費されます。糖質は約6%、脂質は約4%ですから、たんぱく質摂取後の消費エネルギーがずば抜けて大きいことがわかります。つまり、たんぱく質を摂った分だけ脂肪も燃焼しやすく、痩せやすいというわけです。
またDITは筋肉が多いほど高くなることがわかっています。筋肉の量は基礎代謝量にも比例しますから、筋肉をつけるほど、ますますエネルギー代謝のよい体になれるのです。」(p.32)
DITというのは、「食事誘発性熱産生」という言葉の英語の略です。つまり、食事を摂ったことで発熱することで、たんぱく質を食べるとすぐに熱として消費されやすいということですね。
「平均睡眠時間が6時間の人は、7時間の人に比べて肥満になる確率が23%高く、さらに5時間の人は50%、4時間以下の人は73%も増加します。その理由は、睡眠不足はインスリン抵抗性を引き起こし、食後の血糖値コントロールがうまくいかなくなってしまうためです。
また、睡眠不足や睡眠の質の低下によって運動量が減少し、エネルギー消費量が下がることも考えられます。」(p.50)
睡眠時間と肥満にも、深い関係があるようです。ここには書かれていませんが、私は、起きている時間が長ければ、食べる機会が増えて摂取量が多くなることも関係するのではないかと思います。睡眠時間が長ければ、12時間断食や16時間断食も容易にできますからね。
「1日のなかで最も食事の間隔があく夕食後から朝食前までの間は、新たなたんぱく質の供給が滞ってしまう分、筋肉の分解が進んでいくことになります。そのため、朝食では十分な量のたんぱく質を意識的に摂取し、分解から合成へとスイッチを切り替える必要があるわけです。」(p.72)
概算で1日約60gのタンパク質を摂取すべきだと言われますが、それは毎食20gずつ食べるべきだと言っています。多くの人の朝食は、私のように欠食する人もいるので、全般的に摂取量が少ないそうです。
なので藤田氏は、プロテインを使ってでも摂取量を上げるようにと言います。この辺は、考え方はいろいろあるなぁと思いました。
私は、基本的にはサプリなど、自然な食事以外から栄養を摂るということは最小限にすべきだと考えています。日常的に摂取するものではなく、緊急避難的であるべきだと。
そして、人類の長い歴史から考えると、朝食を食べないという時代が長かったと思うのです。狩りをして得た獲物は、その日のうちに食べてしまうでしょうから。
そうであれば、筋肉こそがタンパク質の貯蔵庫だと思います。糖質や脂質が脂肪として蓄えられるように、タンパク質は筋肉として蓄えられているのです。そうであれば、朝食を食べないことくらいは、大した問題ではない。それよりも、筋肉の合成を促すような運動をすることの方が重要ではないかと思っています。
現実に野生動物は、何日間も獲物にありつけないなんてこともザラにあります。それなのに、すぐに筋肉量が落ちて大変なことになるなんてことはありません。
「筋トレ前にプロテインを摂取した場合と、筋トレ後に摂取した場合、それぞれの筋肉への効果を比較した実験では、明らかな違いは見られませんでした。」(p.86)
「大事なのは「運動とたんぱく質摂取はセットで行う」。これを習慣づけることです。」(p.86)
食後30分ほどで血中アミノ酸濃度は上昇すると言われます。しかし、筋肉の合成においては、目立った差がない。ということは、やはり血中アミノ酸濃度を保つために3食十分なタンパク質を食べることは、それほど重要ではない、と言えるのではないでしょうかね。
「つまり、アルコールを摂ったことでプロテインの効果が抑えられ、筋肉の合成率が30〜40%低下してしまったのです。筋肉にとってアルコールは「百害あって一利なし」とまではいいませんが、筋合成の妨げになるのは明白です。」(p.96)
タンパク質とアルコールを同時に摂取した場合と、タンパク質のみを摂取した場合とで、筋肉の合成率に大きな差があるとの研究結果があるそうです。酒飲みの私にとっては耳が痛い。
「加齢によって筋肉量が減少するのは、歳をとるほど筋肉を合成する力が衰えてくるから。若者と同じ量のたんぱく質を摂っても、高齢者は同じように筋肉をつくることができなくなります。これをたんぱく質の「同化抵抗性」といいます。」(p.100)
これはインスリンの働きとも関係しているそうです。インスリンの量が減ったり、効果が十分に出なくなると、血管の拡張機能も働かなくなってきて筋肉にアミノ酸が届きにくくなるのだとか。
このことから、年寄ほどタンパク質を多く摂取すべきだと山田氏は言います。たしか中国では昔から、老人になったら肉を食べよと言われていました。このことにも意味があるのかもしれません。
「腎機能の低下した人にはたんぱく質の摂取制限が行われますが、健康な人がたんぱく質を摂ることで腎臓が悪くなるというエビデンスもありません。」(p.106)
他で、タンパク質の摂り過ぎも健康によくないと聞いたことがありましたが、専門家の山田氏は、そんなことはないと否定します。
ただし、余分なアミノ酸が尿から排泄されるので、腎機能が低下していると、余計な負担をかけることになるとは言えるでしょうね。
もちろん、何ごとも摂り過ぎが良くないのは当然ですから、あまりに偏った食事というのは危険が伴います。決めつけて行うのではなく、自分の身体の声を聞きながら、少しずつ変えていくことが重要かと思います。
この本を読むと、やはりそれなりにタンパク質も摂らなければなぁと思います。しかし、1日に60gのタンパク質を摂ろうと思うと、肉だけだと約300g必要です。これはかなりな量です。でも、他の食材にも少しずつタンパク質は含まれているので、肉だけというような偏った食べ方をしなくてもいいのかなと思います。
私は、納豆と卵を毎日食べるようにしているので、それだけで約15gのタンパク質が摂れています。他に肉も多ければ150gくらい食べます。ご飯や野菜、ナッツ類も食べているので、60g近く行っているかと思っています。
今後は、もう少し炭水化物を減らして、肉や魚を増やそうかと考えています。脂質の多い肉や魚を選ぶつもりです。そうすることで、より脂質が多くて、タンパク質も十分な食生活をやってみようと思っているのです。
もちろん、自分の身体の声を聞きながら、いろいろ試してみようと思っています。
2022年11月16日
真・かんながら
久しぶりに阿部敏郎(あべ・としろう)さんの本が出版されると聞いて、予約して買いました。
今回の本は小説ですが、あとがきを読むと、1999年に書いたとあります。Wikipediaによれば、阿部さんは1953年生まれで、特異体験をした後の1989年に芸能界を引退し、奈良県にある天河大弁財天社に奉公したようです。
実はこの小説は私小説で、阿部さん自身をAとして描いています。事実に基づいて書いたとあとがきにもあるので、おそらくこういうことがあったのでしょう。
小説は、天河神社に導かれ、そこでバグワンの弟子たちと出会い、導かれるようにインドへ行くことが描かれています。バグワンとはOsho(おしょう)のことです。
私がOshoのことを知ったのはタイに行ってからですが、まさにお勧めしている「神との対話」のようなことを言われる方だなぁと思いました。
阿部さんについては、なるほどと思うこともあれば、これはちょっと違うんじゃないのと感じることもあり、最近はあまり注目していませんでした。しかし、この小説を読むと、阿部さんもまた「神との対話」に書かれているようなことに気づかれ、そのように生きておられるのだなぁと感じました。
ちなみに、これまで紹介した阿部さんの本は、対談や講演録も含めて「一瞬で幸せになる方法」「降参のススメ」「招き猫カワヒラくんが教えてくれた幸運の流れに乗る生き方」「不死のしくみ」「99%の人が知らない死の秘密」などがあります。
また、Oshoの関連本としては、「Joy」「Courage」の2冊を紹介しています。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
ただしこれは小説なので、あまりネタバレにならないよう引用したいと思います。あらすじは、冒頭にも書いたように、阿部さんことAが、天河神社に導かれ、インドに導かれ、悟りを得ていくという展開になっています。
「しかし恐れから生じた制度が万民を幸福にすることはない。
恐れの氣がお金に宿るからだ。」(p.39)
「このような世界を一変し、誰もが幸せに暮らせる道が一つだけある。
それは人類規模で存在の真実に目覚めることだ。
国や人種といった表面的な違いを見るのではなく、その奥に共有している同じ一つの命に目覚めるのだ。
それがわかれば地上のあらゆる問題は解決する。」(p.40)
これは私も賛同します。「神との対話」でも言うように、すべては「愛」か「不安(恐れ)」のどちらの動機によるものかで違ってくるのです。そして、真の地上の平和をもたらすには、みんなが覚醒するしかないと思います。
「あなた方は全員、時間と空間という幻想の中で夢を見ている。
実際には全体から分離した個別の命は存在せず、いつも全体としての命がいまここで新しい何かを表現しているだけだ。
この全体への目覚めだけが人類を苦しみから解放し、恐怖が作った世界支配を終わらせるのだ。
まずは日ノ本が目覚めなければならない。」(p.58-59)
世界はユダヤによって支配されていると言われますが、それは恐れ(不安)を動機としたものです。その世界を変えるには、ユダヤと同じ根を持つ日本人が、愛を動機としてユダヤの支配を打ち破らなければならない。
たしかに、こういうことがあるのかもしれないなぁということは、これまで読んだ他の本にもあったので、私も薄々感じているところです。
「我々の命を左右する核の問題も、環境問題も、それらを作り出した人たちには解決できないだろう。それを解決するのはいままでの価値観を超越した新しい人類だよ。まさにいま地球意識が発動して新しい人類を誕生させようとしている。」(p.84)
最近の若い人の中には、生まれながらに覚醒しているのではと思われる人が多くいます。意識レベルが格段に高く、選択の判断基準がぜんぜん違うのです。そういう人たちを見ると、地球全体で覚醒しようとしていると感じます。
「いまや世界は覚醒した多くの人々を必要としている。
幻想から真実に、怖れから愛に目覚めた人々だ。
そこに最も近いのが日本のあなたたちだという自覚を持ちなさい。
しかし同時にあなたたち日本人は、世界で最も常識や社会通念に縛られやすい性格を持っている。
必要以上に他者の目を気にし、新しい生き方に踏み出す勇気を持てずにいるのだ。
いまこそその殻を破って前に踏み出すときだ。」(p.102)
たしかに、日本人の同調圧力には辟易するものがありますね。
「時の政権を担っていた徳川幕府には優秀な人材がいなかったのか。彼ら以上に地方の下級武士のほうが優れていたのか。少し考えればナンセンスな話でも、繰り返し教えられればそうかと思ってしまう。
歴史は勝った側が創作することを忘れてはいけない。薩摩や長州に幕府を転覆させるだけの資金と武力を提供したのは誰なのか。何のために。答えは簡単だ。明治維新とは日本を国際金融システムに組み入れるために仕組んだドラマだったのだから。」(p.122)
言われてみればたしかにそううで、幕末にはなぜ、こんなに優秀な人々が雨後の筍とのように次々と出現したのだろう? と驚いた記憶があります。しかし、その背後に、ユダヤによる国際金融資本の陰謀があったとまでは考えませんでした。
これが本当かどうかは何とも言えません。もちろん、そういう策謀をした人もいたでしょうけど、人というのは、そう簡単に操られるものでもないからです。幕末の志士たちには彼らなりの思いがあったであろうし、実際に優秀な人も多かった。そして、語られないだけで、幕府側にも優秀な多くの人がいたのではないかと思っています。彼らの思いが実現しなかったとしても。
「その世界は一人ずつの創作であり、同じものは二つとしてない。なのに人々は、みんなが同じ世界に住んでいると思っている。だから毎日のように関係に軋轢が生じるのだ。」(p.211)
この視点は、私もつい忘れそうになります。同じ世界に生きているようで、実はそれぞれにそれぞれの世界に生きている。そして自分の世界においては、自分が創造主なのです。
「目覚めた時に人が知るのは、それまでの人生に起きたあらゆることは、何一つ無駄もなく偶然もないということだ。
ありとあらゆることは、人類の目覚めのために起きている。」(p.214)
これも私が常々自分に言い聞かせていることですね。すべてのことは必然であり、最善であり、完璧なのだ。このことを私は「神との対話」で学び、それを自分の中に落とし込もうとしています。
「お前に求められていたのは自らの目覚めであり、宝刀の使い方などではない。世の中の目覚めを先導するために必要なものは、自らの目覚め以外にはないのだ。」(p.216)
世界の人々を覚醒させるために日本人という民族があると言われると、優越感を感じてしまいます。自分が意識レベルが高いと思うと、人々を先導する立場として選ばれたのだと感じて、誇らしく思うでしょう。しかしそれは選民思想につながる考え方であり、傲慢であり、道を誤るもとなのです。
他人のことは他人に任せておく。ただただ自分のことだけを考える。そして、自分が覚醒すれば、それが人類の覚醒につながるし、寄与することになるとわかっていればいいのだと思います。
「誰かが全人類を支配しているなどというのは夢の中だからこそ描けることだ。なぜなら世界は一人一人の心の中にあるからだ。
さらにはその一人一人が自分の利益のために生き、その念が複雑に絡み合って全体のバランスを作っている。一部の人間が秘密裏に世界を意のままにできるだと言うのは、被害者意識が作り出した妄想だ。
自分が周囲をコントロールしようとしているから、世界全体をコントロールしている誰かがいると想像するのだ。世界は自分のマインドの投影にすぎない。」(p.218)
外界は自分の心の投影であり、鏡です。そう言われているのに、ついつい忘れてしまうんですよね。
自分がコントロールしようとしているから、誰かからコントロールされると恐れるのです。そんな私たちの恐れ(不安)が投影されているのが、今の世界なのです。
「確かに物語はその当人にとっては真実だが、それを他者にも共有させようとする。そして他者がその物語を共有した時、他者の中でそれが真実になるのさ。そうやっていつの時代もどんな国でも、宗教が共同幻想として存在してきたんだ」(p.238)
「マインドというものは、足りないものやうまくいっていないことを見つける名人であり、それを解決するのも自分の役目だと信じているんだ。そうやってマインドは、自分がよりよい未来に進んでいる、進まなければという夢を見る。でも実際には何処(どこ)にも進んでいない。どこに進むというのか、ここしかないと言うのに。いまここで夢見るマインドが、いまここ以外の何かを目指して生きている姿は大昔から同じだ。」(p.239)
真実は「いま、ここ」しかない。現実に見えるものはすべて、マインドが描いた夢であり、幻想なのです。その幻想世界の中で私たちは、被害者になったり加害者になったり、あるいは愛し合ったりして、物語を生きているのです。
「しかし人生にはあるべき姿も、行き着くゴールもありはしない。ということは何だっていいということだ。たとえ野垂れ死んだとしても、有終の美を飾ったとしても、同じ場所にいるのさ。そのことを見抜けば、人生に対する深刻さは消えるはずだよ。
だって深刻さとは、あるべき姿を握りしめている態度だから。あるべき姿が消えれば気楽なもんだ」(p.241)
何が起ころうと、どうなろうと、大したことではありません。だって、それは夢なのであり、幻想なのですから。そう喝破すれば、「大丈夫だ」と思えるようになる。右を選べば右の、左を選べば左の経験が待っているだけ。だから、間違った選択(決断)というものもないのです。
「誰がバチを与えるんだい? 人の世界は一人一人の思考が作り出したものだから、もし誰かが自分の世界の中にバチを与える神を作れば、何か悪いことが起きた時、きっとその人はバチが当たったと思って神を恐れるだろう。
すべては一人一人の創作であり、何かの価値観を共有すればそれが共同幻想になって宗教にまでなる。それだけのことだ。」(p.244)
私も、神がバチを与えるという考え方には賛同しません。神しか存在しないというのに、いったい誰が誰にバチを与えると言うのでしょう? そして、何のために与えるのでしょう? 「神との対話」にもそういうことが書かれていますが、よくよく考えればナンセンスだとわかるでしょう。
「それは、かんながらの道だ。我々にできるのは、その道を邪魔しないで、思し召すまま流れのままにお任せすることだ。だから今後の予定は、あると言えばあるし、ないと言えばない。」(p.250)
「かんながら」とは、「神の思し召しのまま」という意味なのでしょうね。無為自然という老荘思想にも通じます。あるがままを信頼し、受け入れ、起こるがままに起こらせる。だから不足もなければ不満もない。ただ起こりゆくことを見て、微笑んでいられるのです。
なるべくストーリーには触れないように、阿部さんの気付きに関する部分を引用してみました。
今回の本は、私も非常に共感します。お勧めしている「神との対話」シリーズに通じる部分が多々あり、阿部さんの気付きの深さが見て取れるからです。
もちろん、そんな偉そうなことが言えるほど、私が気づいているわけではありません。私はまだまだ頭で知っているというレベルです。
けれども、その頭で知っているように生きたいと思い、生きようとしています。だから、その思考が習慣化するように、何度も何度も繰り返しているのです。これもまた、「神との対話」で示されていた方法ですけどね。
ということで、覚醒することを願っている人にはお勧めの本だと思います。わかりやすいし、小説なのでサクサク読めますよ。
2022年11月22日
DIE WITH ZERO
本の要約動画で絶賛していたので買ってみました。
帯に「ゼロで死ね。」とタイトルの日本語訳が書かれています。また、サブタイトルには「人生が豊かになりすぎる究極のルール」とあります。
このように本書は、死ぬ時点で資産をゼロにする生き方を説いたものになっています。
著者はビル・バーキンス氏。トレーダーとして活躍して巨額の富を築き、ハリウッド映画のプロデューサーやポーカープレイヤーとしても活躍されておられるようです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
冒頭で有名な「アリとキリギリス」というイソップ寓話を持ち出します。そしてそこで、アリはいつ遊ぶことができるのか? という疑問を投げかけるのです。
「もちろん、誰もが生きるために働かなければならない。だが、ただ生きる以上のことをしたいとも望んでいる。「本当の人生」を生きたいのだ。
この本のテーマはそれだ。
ただ生きるだけではなく、十分に生きる。経済的に豊かになるだけではなく、人生を豊かにするための方法を考える。」(p.4)
バーキンス氏は、このような問題を真剣に考えてこられたそうです。そして、こうすれば絶対に上手くいくという方法は存在しないけれども、確実に人生を豊かにする方法なら答えられるとして、本書に記されたそうです。
「喜びをある程度先送りするのは理にかなっている。長期的に見れば、そのほうが報われるからだ。
だが残念なことに、私たちは喜びを先送りしすぎている。
手遅れになるまでやりたいことを我慢し、ただただ金を節約する。
人生が無限に続くかのような気持ちで。」(p.18)
「今しかできないことに金を使う。
それこそが、この本で伝えたいことの核だ。
90歳になって水上スキーを始めるのは難しい。今それを我慢すれば、その分の金は貯まるだろう。だが、十分な金を得たときには、すでにそれができない年齢かもしれない。」(p.19)
たしかに、やりたいことのためにお金を使えば、お金は貯まりません。そうすると将来、やりたいことができなくなったり、生活に困る可能性もあるわけです。
キリギリスのように、その時その時を楽しむより、アリのように将来のために節約して、我慢して、せっせと稼いで貯め込む方がいい。しかし、ではアリは貯め込んだお金をいつ有意義に使えるのでしょうか?
「大切なのは、自分が何をすれば幸せになるかを知り、その経験に惜しまず金を使うことだ。」(p.20)
誰にとっても水上スキーをすることが幸せ、ではないのです。だから、自分が何をすることで幸せになるかをよく知って、そのためにお金を使うことが大切です。
「つまり、時間と金を最大限に活かすためのカギは”タイミング”にある。
人生の充実度を高めるのは、”そのときどきに相応(ふさわ)しい経験”なのだ。」(p.21)
仮に水上スキーが大好きだとしても、それを20歳代で経験するのか、80歳代で経験するのかでは、大きな違いがあるのですね。
ですから、自分にとって何をすることが幸せかということと同時に、いつそれをするのが幸せかということも合わせて考える必要があるのです。
「節約ばかりしていると、そのときにしかできない経験をするチャンスを失う。その結果、世界が必要以上に小さな場所になってしまう。人生は経験の合計だからだ。」(p.32)
「人生の満足度を最大限に高めるために、ライフエネルギーのどれだけを金を稼ぐために費やし、どれだけを経験に費やすべきか。その問題の答えは簡単には導けない。人はそれぞれ違うし、考えるべき問題はたくさんある。」(p.36)
人それぞれですから、自分で考えて自分で決めるしかありませんね。
「人生を存分に楽しむには、無意識な自動運転をやめ、自らの意思で思う方向に操縦していかなければならない。」(p.66)
そう簡単には的確な答えが出せない問題だからこそ、無意識に生きるのではなく、意識的に生きることが大事になってくるのです。
「人は皆、遅かれ早かれ死ぬ。最後の数日、数カ月を生き延びるのに必要な医療費を貯めるために、人生の貴重な数年間を犠牲にしてまで働きたいと思うだろうか?
私は、いさぎよく「墓場で会おう!」と言いたい。」(p.91)
たしかに、自分の死をありありと想像してみれば、死ぬとわかっていて数時間や数日の、いや数ヶ月の延命のためにどれほどの価値があるだろうかと思います。そのために数年分の我慢を重ねる労働生活が割に合うのかどうか。考えるまでもなく、私もそれは割に合わないと思います。
「とはいえ、私は誰もが貯金をはたいて長寿年金を買うべきだと言っているのではない。ここで言いたいのは、死ぬ前に資産が尽きないようにしながら、生きるうちに金を使い切る方法はあるということだ。少なくとも、こうした解決策を検討すらしないことは、あなたの人生にとって大きなデメリットになる。」(p.102-103)
ゼロで死ぬことを決めたとしても、予想通りに死ねるとも限りません。資産を使い切った後も生きていたらどうするのか? この疑問に対してバーキンス氏は、1つの方法として長寿年金(トンチン年金)を提示しています。
長寿年金とは、想定した年齢になっても死なずに生きていた時に支払われる保険です。そういうものがあるとは知りませんでしたが、あっても不思議ではありませんね。
もちろん、それが最も適しているかどうかは何とも言えません。けれども日本には、政府が保障している公的年金制度があります。それで足りなければ生活保護制度もあります。少なくとも無一文で食べることもできないなんてことにはならないと思うのですけどね。
「「ゼロで死ぬ」とは、金だけの問題ではない。それは時間の問題でもある。
限られた時間とエネルギーをどう使うべきか。私たちはそれを、もっと真剣に考えるべきだ。それが、人生を最大限に豊かにすることにつながっていくのである。」(p.111)
死を現実のものとして考え始めてやっと、私たちは生を貴重なものと認識できます。これまでならただダラダラと過ごしていた日常が、どれほど貴重な時間の浪費だったかとわかるのです。
「子どもと過ごす経験の価値を定量化することは、子どものために本当にすべきことは何かを、立ち止まって考える良い機会になる。
それはときに子どものためにたくさんの金を稼ぐことにもなるだろうし、ときには一緒に多くの時間を過ごすことにもなるだろう。
経験を数値化することで、稼ぐために費やす時間が、子どもにとって本当にメリットになるかどうかも把握しやすくなる。」(p.133)
子どもはすぐに成長してしまうから、一緒に遊べる時にその時間を無理をしてでも作るべきだという考え方があります。たしかにそうなのですが、それとて一面的な見方です。もちろん、だからと言って子どものために稼がなければならないと言い訳をして、仕事に没頭すべきということではありませんよ。
つまり、どっちが正しいかではなく、真剣にそのことを考えることが重要なのです。そのために、それぞれの経験の価値を数値化して比べてみるというやり方を勧めています。
「若い頃にケチってばかりいるのは大きな過ちだと気づいたまではよかったが、その反動で、今度は闇雲に無駄金を使うという過ちを犯してしまった。以前は節約しすぎ、今度は無駄遣いしすぎた。」(p.153)
バーキンス氏も、いろいろと経験の中で気づきを得て来られたようです。時には無駄と思えるお金を使う必要もありますが、闇雲に散財すれば良いわけではないことも明らかですね。
「経験を楽しむ能力が年齢によって変わってくるのなら、能力が高いときにたくさんの金を使うことは理にかなっている。」(p.165-166)
「経験から価値を引き出しやすい年代に、貯蓄をおさえて金を多めに使う。この原則に基づいて、支出と貯蓄のバランスを人生全体の視点で調整していくべきである。」(p.167)
体力のある若い頃なら、運動系の経験を積む価値が高いと言えるでしょう。そうであるなら、そういう経験を積むためのお金を若い頃に使うべきなのです。
そして年を取れば段々とその時しかできない経験というものが少なくなってくるので、使うお金も減ってきます。そうであるなら、そこで使えるお金を、前もって若い頃に使うということですね。
「どんな経験でも、いつか自分にとって人生最後のタイミングがやってくる。」(p.190)
「私たちは皆、人生のある段階から次の段階へと前進し続ける。ある段階が終わることで小さな死を迎え、次の段階に移る。
二度と同じときを過ごせないのは悲しいことだが、逆に言えば、私たちが長い人生のあいだに、いくつもの生を生き、喜びや楽しみを味わえるということでもある。」(p.190-191)
「死」というイベントは人生の最大のものと言えますが、そうでなくても人生の中では常に、何かが終わり、何かが始まっているのです。
それを楽しく経験できる期間というものが人生にはあります。だから、その経験の価値が高いのであれば、たとえ未来から借金をしても、その経験を積むべきなのです。
「最大の後悔は、「勇気を出して、もっと自分に忠実に生きればよかった」であった。他人が望む人生ではなく、自分の心の赴(おもむ)くままに夢を追い求めればよかった、と。」(p.194)
これは有名な話で、死期を迎えた老人たちが後悔していたのは、若い頃に自分らしい生き方をしなかったことだったのです。
やらなかった後悔は大きいが、やって失敗したことの後悔は小さい、というような話もあります。
「この実験から学べるのは、人は終わりを意識すると、その時間を最大限に活用しようとする意欲が高まるということだ。」(p.196)
終わりを意識すれば、その限られた時間の貴重さが実感されます。人生においても同じで、あと少しでこの経験も終わりだと意識していることで、価値ある時間を過ごすことができるのです。
これを「一期一会」という言葉で、日本では伝えられていますね。これが最後の出会いかもしれないと意識すれば、その出会いが貴重なものになるのです。
「つまり、ゼロで死ぬことを目指すなら、純資産は人生のある時点から減り始めなければならない。そうしなければ金が無駄になる。つまり、価値ある経験を逃していることになる。
これが、純資産のピークをつくるべき理由だ。私たちは人生のある段階で、まだ経験から多くの楽しみを引き出せる体力があるうちに、純資産を取り崩していくべきなのだ。
さらに、ピークのタイミングは偶然に任せるべきではない。人生をできる限り充実させる金の使い方をしたいなら、ピークの日付を意図的に決める必要がある。」(p.216)
「人生を最適化するよう金を使う場合、大半の人は45〜60歳のあいだに資産がピークに達する。この範囲から外れると、人生の充実度を最大限に高めるのは難しくなる。つまり、経験のために金を十分に使いきれなかったということになる。」(p.227-228)
ゼロで死ぬことを意識し、資産残高のピークを作るよう計画的にお金の稼ぎ方、使い方をコントロールすべきだとバーキンス氏は言います。
しかし、私は必ずしもそうは思いません。なぜなら、人生は何が起こるかわからないからです。
働いたら働いただけ資産が増えるわけではありませんから。失業することもあれば、転職して所得が格段に増えることもあるでしょう。
ただ、ゼロで死ぬことを意識するなら、常に将来の計画を見直し、それに合わせて資産の取り崩し額を変えていくべきでしょうね。まあ、資産があれば、ですがね。資産がなく、その時その時で最善の道を歩まなければならない人生もありますから。
「非対称リスクに直面したときには、チャンスをつかむために大胆な行動を起こすことが合理的な判断になる。極端に言えば、デメリットが極めて小さく(あるいは、失うものが何もなく)、メリットが極めて大きい場合、大胆な行動を取らないほうがリスクとなるということだ。」(p.243-244)
「年を取ると、失うものは増える。成功して得られるものも少なくなる。独身の人や、すでに子どもが自立している人でも、リスクに対する報酬のバランスは良いものではない。」(p.249)
失うものが何もなければ、大胆に挑戦できます。だから、若い頃に挑戦すべきだということですね。
しかし、私のように子どもがいなければ、年を取ってもそれなりに失うものが少ないとも言えます。なので、ここもその時点のその人の考え方でしょうね。私は、会社を辞めて自由になったことで、失うものがなくなったなぁと感じましたから。
「今、リスクを取れないなら、いつ取れるのか?」(p.251)
「あなたにとって最善の道を選ぶことだ。本当にやりたいことを探したいのなら、リスクを取るときがあってもいい。」(p.251)
「だが、少しでもあなたの背中を押すために、最後に大胆に行動するための3つのポイントだけ伝えておこう。
1つ目は、あなたがどれくらいリスクを取ろうが、どんな大胆な行動に出ようが、一般的にそれは人生の早い段階が良いということだ。繰り返しになるが、若い頃のほうが失敗のダメージは少なく、成功して得られるメリットは大きくなる。
2つ目は、行動を取らないことへのリスクを過小評価すべきではないということだ。大胆な行動を取らず、同じ場所に留まれば、安全に思えるだろう。だが、それによって何かを失っている可能性にも目を向けるべきだ。」(p.258)
「3つ目は、「リスクの大きさ」と「不安」は区別すべきだということだ。人は不安に襲われていると、実際のリスクを過度に大きく見なしてしまう。」(p.259)
リスクが消えることはありませんからね。私は小さなバンジーを飛ぶと表現していますが、どこかで勇気を出して一歩を踏み出すしかないのです。それが不安(恐れ)を乗り越える唯一の方法だと思います。
「だが、私たちが一番恐れるべきは、「80歳になったときに潤沢な資産があるか」ではない。人生と時間を無駄にしてしまうことなのだ。」(p.260)
「ゼロで死ぬという目標を持つこと自体が、あなたを正しい方向に導いてくれる。
あなたは、何も考えずに働き、貯蓄し、できるだけ資産を増やそうとしていたこれまでの人生を変え、できる限り最高の人生を送れるようになる。」(p.263)
つまり、実際にゼロで死ぬことができるかどうかは、どうでもいいことなのです。そういう結果ではなく、そういう意識を持って生きることによって、人生を最高に輝かせることができる。それが何よりも重要なことなのです。
最初、死期がわからないのに、ゼロで死ぬことなど不可能だろうと思いました。それをどうやって実現すると言っているのか興味がありました。
しかし、ゼロで死ぬことを完全に達成する方法などない、というのが結論ですね。そして、重要なのはそこではなく、意図的に生きることにあるのだということでした。
たしかに、これまで意図的に生きてこなかった人には、自分の人生を振り返り、将来設計を見直すきっかけになる本だと思います。
そしてその中で、無用な不安(恐れ)を棄ててリスクを取ることが重要だという気づきがあれば、人生は豊かなものになると思いました。
2022年11月26日
体が若くなる技術
これも本の要約動画を観て、興味を持って買った本です。サブタイトルに「ミトコンドリアを増やして健康になる」とあるように、老化を防いで健康に若々しくあるためには、良質なミトコンドリアを増やすことが重要だという観点から書かれています。
著者は日本医科大学教授の太田成男(おおた・しげお)さん。ミトコンドリア研究の第一人者とのことです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「私たちはいつか老いと闘わなければいけない。そう感じている人も多いのではないでしょうか。
しかし、それは大きな間違いです。
なぜなら、私たちは生まれつき「若くなるようにできている」からです。
正確に言うと、生まれてから死ぬまで、「若くなるための機能」を持って生活しているのです。」(p.2)
「体を休めるとエネルギーを必要としなくなるため、「エネルギーをつくる能力」はどんどん低下してしまい、結果的に体の衰えを後押しすることになるのです。」(p.4)
「太りやすくなるのは、代謝が悪くなるからだとよく言われますが、代謝が悪くなるとは、原料をエネルギーにつくり替える能力が低くなるということです。
しかし、これを逆の視点から見れば、もしエネルギーをつくる能力をアップさせることができれば、体力がアップするうえ、若々しく、太りにくい体になるということです。」(p.4)
「じつはこのエネルギーをつくる能力こそ、「体を若くする機能」の正体なのです。
そしてこのエネルギーを生み出しているのはいったいどこなのか、それは「ミトコンドリア」なのです。」(p.5)
冒頭で意表を突く常識の否定をしていますが、よくよく考えると、1つの言い方にすぎないとわかります。
つまり、ミトコンドリアでエネルギーを作る能力を高めることでも老化そのものは止められないのですから、私たちは老化に抗いながら若さをなるべく保つよう、闘わなければならないとも言えるわけです。
いずれにせよ、良質なミトコンドリアを増やし、エネルギー生産を高めていくことで、私たちは若々しく老後を過ごすことが可能になるということですね。
「キーワードは「活性酸素」と「ミトコンドリア」のふたつです。」(p.6)
「ミトコンドリアは、生きるために必要なエネルギーをつくっていますが、その質が悪ければ活性酸素をつくり出し、よければ活性酸素を少なくして害を抑えてくれるのです。」(p.6)
ここに、ミトコンドリアが良質でなければならない理由があります。質の悪いミトコンドリアは、より多くの活性酸素を作りだしてしまい、そのことによって健康に害を生じたり、老化が促進されてしまうのです。
「具体的にどうすればエネルギーをつくる能力をアップさせることができるのかというと、ひと言で言うならば、「体にエネルギーを必要としていることをわからせる」ということです。
○「マグロトレーニング」をすること
○背すじをのばすこと
○寒さを感じること
○空腹になること
大きく分ければこの四つしかありません。」(p.7-8)
この具体的な方法については、本書をお読みください。要は、適切なストレスを与えて、体がもっとエネルギーが必要だと感じるよう仕向ければよいのです。
太田さんは、だから「老いと闘う」のではなく、「若さを活用する」というように思考を変えるようにと言います。まあこのニュアンスは、私にはどっちでもいいなぁと思うのですがね。
「通常の油では「長鎖脂肪酸」と呼ばれる脂肪が含まれています。この長い脂肪酸がミトコンドリア内に入るためには、Lカルニチンという物質が必要です。そのため、脂肪酸を燃焼させるには、同時にLカルニチンを摂取する必要があるのです。
ところが、中鎖脂肪酸はLカルニチンなしでもミトコンドリア内に入り込むことができるという大きな特徴を持っています。中鎖脂肪酸は、そのままでミトコンドリアに入り込みやすいので、そのまま燃焼されやすく、体内に脂肪として蓄積されないのです。」(p.27)
前に「アメリカの名医が教える内臓脂肪が落ちる究極の食事」や「やせたければ脂肪をたくさんとりなさい」などを読んで、中鎖脂肪酸が燃えやすく蓄積されにくい油だということは知っていました。ミトコンドリアにすぐに消費されるかどうかということだったのですね。
今、中鎖脂肪酸が多いというパーム核油由来のMCTオイルをコーヒーに垂らして飲んでいますが、少しは効果があるのでしょうかね。今のところ、まだあまり実感はありませんが。
「体を休めてばかりいると、「なんだ、エネルギーはあまりいらないのか」とばかりに、私たちの体はミトコンドリアの数を減らしてしまいます。
そのため、体を休めてばかりいると、ミトコンドリアの数がどんどん減り、体はさらに弱くなってしまいます。
ですから、体力をつけるもっとも賢い方法は、エネルギーを使う量、つまり運動量を少しずつ増やしてくことなのです。」(p.35-36)
「疲れるから、体力がないからと、体を休めてばかりいると、ミトコンドリアが極端に減り、エネルギーのつくれない「老いた体」になってしまいます。」(p.39)
筋肉もそうですね。使わなければ減っていきます。私たちの身体は、使うことによって鍛えられます。つまり、若々しく増強されるのです。
「しかし、最近の研究によって、ミトコンドリアが生み出すエネルギーの低下が、原因のひとつであることがわかってきました。普段から脳の血流量を増やし、ミトコンドリアのエネルギーをつくる能力を高く保っておくことが認知症に有効であることは間違いありません。」(p.45)
私たちの身体でエネルギーを使うのは筋肉だけではありません。脳神経も大量に消費します。認知症の人は脳の萎縮が起こると言われますが、それはミトコンドリアの減少を意味することでもあるのです。
「「脳トレ(脳のトレーニング)」という言葉がありますが、物事を深く考えたり、新たなことを学ぶなど脳に刺激を与えると脳の血流量が増し、ミトコンドリアのはたらきが活発になります。
つまり、新しいことに興味をもつことがなにより大切なのです。」(p.46)
筋肉に刺激を与えれば筋肉が増強しますが、脳にも刺激が必要なのですね。ただし、あまり強い刺激(ショック)は危険なこともあるので、身体を動かすこと、つまり運動をするという程度の刺激でも、脳には良い刺激だと太田さんは言われています。
「つまり、アポトーシスという細胞の自滅システムは、私たちの体をさまざまな病気から守ってくれている、とても重要なシステムであり、その命令を下すミトコンドリアが正常にはたらくかどうかが、将来の健康を大きく占っているのです。」(p.55)
活性酸素などで傷ついた細胞は、自らアポトーシスすることによって、身体全体に害が及ばないようになっています。しかし、正常にアポトーシスできるかどうかということも、またミトコンドリアにかかっているのですね。
「つまり鳥が、活性酸素そのものをつくらないミトコンドリアによって長寿を実現したのに対し、人間はできてしまった活性酸素をSODの量を多くすることでより多く除去し、さらに、それでも除去しきれなかった活性酸素が遺伝子を傷つけても、高い修復能力で治すという、二段構えで長寿を実現していたのです。
それは活性酸素が生む「老いる仕組み」を、豊富なエネルギーがもたらす「若返る仕組み」によって解消しているとも言えます。」(p.68-69)
SODというのは、スーパー・オキシド・ディスムターゼの略で、活性酸素を取り除く酵素のことです。そのSODを作る能力が、他の生物よりも人間は高いということなのですね。
鳥は体の大きさからするとかなりの長寿なのですが、人間もまた長寿の種族なのだそうです。しかし、その長寿を実現する仕組みが違っているのです。
「急激な運動は活性酸素を生みますが、消化管でも同じことが起きてしまいます。つまり、最初からたくさん食べてしまうと、それだけ急速にエネルギーを必要とし、活性酸素が発生してしまうということです。
運動も食事も同じです。
運動はゆっくりとスタートすることで活性酸素を抑えることができますが、食事もおなかが空いたからといって早食いをするのではなく、ゆっくり食べることで、活性酸素の発生を少なくすることができるのです。」(p.87)
ミトコンドリアが急激にエネルギーを生み出そうとすると、活性酸素もできやすいのですね。だから、急激に大きなエネルギーを使うようなことは、なるべく避けた方がよいのです。
「運動によるストレスはプラス面も大きいのですが、心理的ストレスによる臨戦態勢にはメリットはほとんどありません。さらに悪いことに、心理的ストレスは活性酸素を発生させるだけでなく、免疫機能も低下させてしまうという特徴があります。そのため、多くの病気の引き金になっているのです。」(p.90)
長期的なストレスは避けるべきだし、心理的な重いストレスも避けるべきだと太田さんは言います。
「ATPはこれらのどんなエネルギーにも変えることのできる、オールマイティーのエネルギーなのです。ですからまずは、ATPをつくり出して、そのATPのエネルギーを必要な形で使ってもらうという仕組みになっています。」(p.96)
運動にも精神活動にもエネルギーが必要で、その万能なエネルギーがATPであり、ミトコンドリアが生み出すものです。
いわば「エネルギー通貨」であり、お金と同様なのですね。ただし、実際の通貨とは違う一面もあるそうです。
「それは、お金は貯めておいて必要なときに使うことができますが、ATPは蓄えておくことができないということです。」(p.96-97)
ATPは通貨と違って、必要な時に必要なだけ作り出す必要があるのです。
「極端な言い方をすると、食べ物は「電気の素」です。」(p.101)
「それは、電圧のかかる場所を一センチメートルの厚みに拡大して考えると、そこに二〇万ボルトという、とてつもない電圧がかかっているという計算になります。」(p.101)
「ミトコンドリアではこの電圧を利用して、この世でもっとも小さいモーターを回転させ、ATPを合成しています。このモーターのエネルギー効率はほぼ一〇〇%で、この世でもっとも優れたモーターをミトコンドリアは使っているのです。」(p.101-102)
ミトコンドリアは食事から得られた栄養素と酸素を使い、それを電気エネルギーに変えてから、ATPを産生しているのだそうです。これは知りませんでした。
詳しいことはわからないのですが、きっとこういうことなのでしょう。それにしても、人体には不思議なこと、未知のことがたくさんあるなぁ、と改めて思いました。
運動すると短命になるという話もあります。一方で、運動しないと身体機能が衰えるとも言われます。どっちが正しいのでしょうか?
「この議論の間違いがどこにあるかというと、「エネルギー生成量に比例して活性酸素が生じる」の「比例して」という点と、活性酸素を消すシステムを私たちが持っていることを無視している点にあります。」(p.104)
つまり、一方の働きに注目すればその通りなのですが、人には両方の働きがあり、そのバランスの上に成り立っているということなのですね。
「ではこの活性酸素はなぜエネルギーを生み出す際に、一緒に発生してしまうのでしょうか。
ミトコンドリアでは、「電子」と「食事」を利用してATPという物質を合成します。その際、電子はミトコンドリアを含む膜の上を流れていくのですが、その膜の上は平均台のように細く、ときどき電子がこぼれ落ちてしまうのです。
加えてミトコンドリアには、とてつもない電圧がかかるので、電圧が一瞬でも高くなったときには、どうしても電子がこぼれ落ちてしまいます。
電子が同じリズムでゆっくりと歩いていれば、平均台から落ちる頻度は少なくなります。ところが、平均台の上でおとなしく立ち止まっていたときに、急に動けという命令が出されると、慌てて動き出し、平均台から落ちてしまいます。これは、酸欠状態のときに酸素が急に入ってきた状態です。
このこぼれ落ちた電子が、近くにある酸素と結びついてしまったものが、乱暴者の活性酸素なのです。」(p.106-107)
ミトコンドリアでエネルギーを生み出す際、必然的に活性酸素が生じてしまうことを、わかりやすく例えてあったので、長い文章ですが引用しました。
呼吸で取り込んだ酸素の1〜2%が活性酸素になるのだそうです。それをなるべく少なくすることが、健康維持や老化防止には重要になってきます。
「エネルギーの生産を少し犠牲にしても、電子がこぼれないように電圧を下げている状態、その状態を「マイルド・カップリング」といいます。
そしてこのマイルド・カップリングの状態をつくり出すためには、ミトコンドリアの「量」が必要なのです。
ミトコンドリアの量がたくさんあれば、大量のエネルギーが必要になっても、ひとつのミトコンドリアにかかる負荷は小さくなります。」(p.109)
1つのミトコンドリアを性能の限界まで働かせると、どうしても活性酸素が増えやすくなるのですね。だからミトコンドリアを増やすことが重要になると太田さんは言います。
「ミトコンドリアを増やす方法は四つあります。
@マグロトレーニングをする
A姿勢を保つ
B寒さを感じる
C空腹を感じる
いずれの方法も、体に「エネルギーが不足しているよ」というシグナルを与えることがポイントです。」(p.110-111)
つまり、自堕落的でない非日常的な何かをすれば、身体はエネルギーを増やして適応しようとする。そのエネルギーを増やすために、ミトコンドリアが増えるということなのです。
なお、ミトコンドリアを増やす4つの方法については、先に引用した時に書いたように、詳細は本書をお読みくださいね。
「ミトコンドリアが増えてはじめて、質の低下したものを壊すことができるようになるのです。」(p.112)
ミトコンドリア全体の質を高めるには、劣化したミトコンドリアを解体することが必要です。しかし、そもそもミトコンドリアが少ない状態であれば、安易に壊すことはできませんよね。
それがもし大量にミトコンドリアがあれば、少量の質の悪いものはすぐに壊すことができます。このように、劣化したミトコンドリアを容易に壊すことによって、全体の質が高まります。そのためにも、ミトコンドリアの量が重要なのです。
「「メタボリック/metabolic」の直訳は、肥満ではなく「代謝」です。
ですから、メタボリックシンドロームとは代謝症候群、つまり代謝異常によって起きるさまざまな病的変化ということになります。そして、代謝とは「エネルギーをつくり出すこと」なので、メタボリックシンドロームも、ミトコンドリアの機能低下が原因で起こる、もっとも重大な病気のもとなのです。」(p.116-117)
メタボと言えば肥満をイメージしますが、肥満は結果であって原因ではないのですね。
「ただし、体に悪いのは「皮下脂肪」の蓄積ではありません。それよりも内臓脂肪のほうがはるかに危険なのです。メタボの正式な日本語訳は「内臓脂肪症候群」です。」(p.118)
「メタボの解消・予防を目指すには、ミトコンドリアによる代謝を上げて、内臓脂肪を減らせばよい−−これが現在わかっている唯一の方法です。」(p.118-119)
「ミトコンドリアが生み出すエネルギーと食事の量=「代謝のバランス」といった根本要因を健康な状態に保つことが、「万病のもと」を回避する万全の策なのです。」(p.119)
皮下脂肪より内臓脂肪が問題だということは、よく知られていることですね。そして、その内臓脂肪を増やしている原因が、ミトコンドリアによる代謝が低いことにあるのです。なので、内臓脂肪を削り取っても、あまり意味はないのです。
「簡単に言うと、脂肪を溜め込んでいるときは体に悪いホルモンを分泌し、脂肪が少ないときは体によいホルモンを分泌します。」(p.130)
「脂肪細胞から分泌されるよいホルモンの代表はアディポネクチンといいますが、動脈硬化も糖尿病も防いでくれる非常に頼もしいホルモンです。そしてミトコンドリアも増やす役割があることがわかってきたのです。」(p.130)
脂肪細胞の数は、遺伝ではなく思春期までに決まってしまうのだそうです。なので、大人になってから数を減らそうとしてももう遅い。
大人にできることは、1つの脂肪細胞が蓄える脂肪の量を減らすことだけ。そしてその量によって身体に「良い」影響を与えたり、「悪い」影響を与えたりするようです。
「もし脂肪細胞に脂肪がぎっしり溜まっていると、少しくらい脂肪が溜まっても、脂肪細胞はそのことに気づかず、満腹ホルモンは分泌されません。」(p.132)
食事を始めて満腹になったことを知らせるホルモンも、脂肪細胞から出されるのだそうです。そのトリガーが、脂肪細胞に脂肪が溜まり始めたことを脂肪細胞が感知することにあるのだとか。
だから早食いは太りやすくなるので、太田さんは30分以上かけて食事をするようにと言います。実際、食事をしてしばらくしてから、やっと満腹感を感じることが多いです。こういうことも、自分の身体の声をよく聞いていれば気づきますね。
そして太っている人は、さらに太りやすい、食べ過ぎになりやすいという理由も、これでわかるかと思います。
「メタボにより糖尿病になる平均年齢は五〇歳、一方、やせすぎにより死亡率が高くなるのは、男性で七〇歳から、女性で七五歳−−ということなのです。」(p.200)
BMIが18.9以下だと、30以上の肥満の人と同じくらい死亡リスクが高くなることが知られています。しかし、それは年令によると太田さんは言います。
なので65歳までは内臓脂肪を増やさないことを心がけ、それを過ぎたら栄養のある食事を十分に摂って、筋肉が衰えないようにすることが重要だとのことです。
「血液中のカロテンの量が多い高齢者は生活の質が高い、つまり介護なしで元気に生活ができていたのです。」(p.201)
つまりカロテンが多く含まれる人参やピーマンなど、赤、黄、緑という色の野菜を食べることが、身体の機能の維持に役立つということです。
カロテンは、よく知られているように抗酸化物質の代表です。身体を酸化させないことが大切なのですね。
「しかし、抗酸化物質は「過ぎたるは及ばざるが如し」だということを覚えておいてほしいと思います。」(p.205)
野菜を大量に食べても摂り過ぎにはなりませんが、サプリなどで摂取するのは要注意なのです。
「矛盾するようですが、むしろ私はあまり細かく意識しないほうがいいとさえ思っています。というのも、一番大切なことは、体にいい食材を記憶することでも、体にいい料理の仕方を覚えることでもないからです。
日本の伝統食は、ミトコンドリアにとっても適した食べ物になっているから時代を越えて今に残った、というお話をしましたが、一方で忘れがちになっているものもあるように思います。
それは「感謝の気持ち」です。」(p.210-211)
「急な変化を生んだとき、また、心に余裕がないときに活性酸素は生じてしまうのです。
そうではなく、ゆっくりとしたときこそ、豊富なエネルギーをつくるように私たちの体はできています。
「ゆっくり」「ゆったり」とした生活が、活性酸素を少なくし、ミトコンドリアを増やすのです。」(p.214)
「ミトコンドリアを増やすには、「エネルギーが必要だ」と感じさせることです。
本書ではその方法をお話ししてきましたが、じつはひとつ、まだお伝えしていない方法があります。
それは、「心のエネルギー枯渇状態」をつくればいい、ということです。」(p.214)
「人生を楽しむことによって、心に「エネルギーが足りない」と感じさせるからこそ、体がエネルギーをつくろうとし、その結果、若くなるのです。
つまり好奇心をもって、とにかく人生を楽しんでみる。
その姿勢を忘れないでほしいと思います。」(p.215)
つまり、ミトコンドリアを増やさなければ・・・ということに執着して、心が逼迫していてはダメなのですね。
心に余裕を持って、細かいことにはこだわらず、今を楽しむこと。そうすれば自ずと食事も味わいながら時間をかけるし、少量で満足するようになります。
そして、今を楽しんでいれば、様々なことに好奇心を覚えて、何か新しいことをやろうとするでしょう。その心の活性化によって、またその好奇心に伴う身体活動によって、今のままではエネルギーが足りないという指令がミトコンドリアに伝わり、ミトコンドリアを増やすことになる。
若々しいお年寄りのほとんどは好奇心旺盛で活動的です。少々のことではイライラせず、大らかでゆとりがあります。
そういう老後の自分を目指していれば、自然とそれがミトコンドリアを増やすことにつながり、健康で老いない身体になっていくということのようです。
ミトコンドリアというのは、独自のDNAを持った細胞内機関であり、細胞内細胞とも言えます。腸内細菌は、厳密に言えば「体外」に他の生物を住まわせて役立てているということになりますが、ミトコンドリアは「体内」に生息する他の生物とも考えられます。
実に興味深い関係であり、生物の体(人体)というものは、かくも不思議で神々しいほど素晴らしいなぁと感じます。
そのミトコンドリアに着目して、健康や老化に関して語っているのが本書ですが、最後の部分が特に良かったと思いました。
けっきょく私たちは、あれこれ不安にならず、恐れを抱かず、今を楽しんで余裕を持って生きればいいんですよね。そういう生き方が、身体にとっても最高の生き方になる。改めて、そう思いました。
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