私の友人が初めて出版した本です。タイムマネジメントコーチとして活躍されてる山本武史(やまもと・たけし)さん。双子を含む4人のお子さんのパパでもあり、子育てや家事も応分にこなす愛妻家(愛家庭家?)であり、ストイックなまでに肉体の改造に取り組むトレーニング愛好家でもあります。(Twitter、Facebook)
そんな山本さんとは、セミナーで知り合ったのですが、それ以来、Facebookでお付き合いさせていただいています。
山本さんが出版されると知って、いつも明るくニコニコされてて、仕事も家庭も趣味もエネルギッシュにこなされている山本さんの、その秘訣が書かれているのだろうと思いました。
読んでみると、実際にそうでした。日々の中の「1日」を切り取り、そこにフォーカスする。その「1日」を改めれば、あとはその繰り返し。
肉体改造と同様に、今日「1日」のトレーニングが、いつしか実を結ぶのですね。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「本書では、「もっと時間が欲しい」「もっと時間を有効に使いたい」「仕事も人生ももっと充実させたい」といった理想を叶えるために、無駄のない理想的な1日を作る具体的な方法について紹介しています。
仕事の効率化を図り、家庭も仕事も諦めない、さらに将来の自分への投資もしていく、ある意味『わがままな時間の使い方』です。」(p.4)
冒頭にこう書かれていますが、まさにそういう内容でしたね。
「仮に1日1時間を無駄に過ごしてしまっているとしましょう。1時間というと長いように思いますが、YouTubeやSNSなどを見ていればすぐに過ぎてしまいますよね。これが1ヶ月続けば30時間、1年で365時間(約15日間)の無駄になってしまうのです。
そう考えると、結構大きなロスになってしまいます。しかし、裏を返せば、それだけ時間を生み出せるということです。」(p.21)
私も、ついついYoutubeやFacebookで時間を使ってしまいます。塵も積もれば山となると言いますが、まさにその通りですね。
「「将来なりたい姿もまだはっきりしないし、自己投資と言われても何をしていいかわからない!」という人は、ひとまず運動と読書に取り組んでみてください。」(p.24-25)
資格を取得するとか、明確な目標があれば、その勉強をすればいいでしょう。けれども、そういう目標がないなら、運動と読書をと山本さんは言います。
これは間違いありませんね。身体も頭脳も精神も、私たちが豊かな人生を過ごすための基本的な武器であり、もっとも重視すべきものだと思いますから。
「理想のワークライフバランスは、人生の段階において変わってきます。その時に何がどのくらい必要なのかは、自分で決めなければなりません。しかし、これだけは絶対に必要だと言えるのは、自己投資と家族との時間です。仕事に真剣に打ち込むことも非常に重要ですが、この2つの時間はしっかりと守ってください。」(p.29)
つい短絡的に成果を挙げられる(ように見える)仕事(学生なら勉強)に力を集中してしまいがちですが、それではバランスを崩しがちです。常に大所高所から俯瞰して、将来的な展望も考える必要がある。その時、重視すべきは自己投資と家族との人間関係なのですね。
たしかに、自己投資を怠れば先細りになります。家族との人間関係で軋轢が生まれれば、仕事への意欲も削がれるし、そもそも何のために仕事に没頭したのかと悔やむことにもなりかねませんから。
「1日24時間のうち、たった1%の15分間を自己投資の時間に当てるだけで、その他大勢から抜け出せるのです。」(p.40)
学習・自己啓発・訓練など、自己投資に費やす時間の平均は、1日でたったの6分だそうです。したがって、もし15分をそこに投じたなら、平均の2.5倍もやっていることになります。
他の人の2.5倍も頑張って勝てないことがありますか? と山本さんは問います。たしかにそうですね。勝てないはずがありません。
いや、勝ち負けよりも、1日たった15分で成果を挙げられるなら、こんな素晴らしいことはないと思えませんかね。そこに気づき、それを実践することが重要なのだと思います。
「成功者たちは、鋼の意志を持って生まれてきたかのように思えますが、実はそうではなく、『目的意識の強さ』に、意志を服従させているのです。
つまり、「何のためにそれを行うのか?」という、やるべき理由をしっかりと持っているのです。同じように、私たちも『目的意識』を強く持つことによって、楽なことに逃げず、やるべきことに立ち向かえるようになります。」(p.45)
有名な「7つの習慣」から引用しながら、山本さんは目的意識を持つことが重要だと説きます。
「とはいえ、そう簡単に人生の目的なんて見つからないという場合は、「それは何のために行うのか?」と、何かやろうとするたびに、自分に問いかけてみてください。」(p.46)
「何のためか?」という自問を繰り返すことで、目的が意識され、時間の無駄を減らせるというわけですね。
「締め切り間際で慌てないようにするためには、締め切り日時から逆算して、はじめるタイミングを決めましょう。できれば、突発的な仕事が入ったり、トラブルが起こったりすることも想定に入れて、少しゆとりを持って設定してください。」(p.56)
スケジュールの管理方法として、締め切りだけでなく、「開始日時」を決めておくということですね。こうすれば、つい失念していて、締切日が近づいてから気づいて慌てるなんてこともなくなるでしょう。
「タイムマネジメントを諦める前に、もう一工夫してください。先ほども触れた通り、きちんと時間通りに進められる予定にするには、『余白』が必要です。余白がないと、1つでも時間通りに終わらない仕事が出てきたり、予定外の仕事が入ったりしたら、その後が総崩れになってしまいます。しかし、多くの人は予定を立てる時に余白を入れていません。確かに、仕事中に何もしない時間を入れるのは抵抗があるでしょう。そこで、試してほしいのが『クッションタイム』です。」(p.58-59)
スケジュールを詰め込みすぎると、こういう問題はありますね。そこで山本さんは、「クッションタイム」をスケジュール化しておくことを勧めています。
それは「重要だけど緊急ではないタスク」です。いざとなればそれを外して時間を確保すればいいのです。
「タスクを細かく細分化しておくと、「今日は時間がないからこれとこれだけ。残りの1つは明日に回す」と使える時間の中で、適量の仕事をこなすことができます。また、突然仕事を頼まれたり、クレームやトラブルが発生した時のリカバリーも早くなります。
作業を細かく分けることで、手を止めても良い回数(仕事の区切り目)が増えるため、仕事が中途半端になりにくいのです。そのため、頼まれ仕事やクレーム対応を終えるとすぐに元の仕事に戻ることができます。」(p.89)
これは良い方法ですね。最初からタスクを細分化しておけば、1日の作業スケジューリングにも柔軟性を持たせられます。
「最初はもどかしいでしょうが、余計な手出しをせずに成長を見守り、自分でできる喜びを感じさせることが、のちに時間効率を高めてくれます。」(p.104)
子育て、部下育ての王道ですね。実際に4人のお子さんを育てていらっしゃる山本さんの言葉だけに、説得力があります。
「「性相近也、習相遠也」
これは、『論語』に出てくる「生まれ持ったものはほとんど同じだが、身につけた習慣によって大きく差が開く」という意味の言葉です。」(p.120)
「自分の成長につながる行動は、一度限りではなく、繰り返し行う『習慣』にしなければなりません。孔子と同じく紀元前の偉人、哲学者のアリストテレスもこんな言葉を残しています。
「人はものごとを繰り返す存在である。つまり優秀さとは、行為ではなく習慣になっていなければならないのだ」」(p.120-121)
論語の言葉は知りませんでした。忘れているだけかもしれませんが。
いずれにせよ、「習慣」によって人は変わるし、その人を創るのです。このことに関しては、マザーテレサの言葉を思い出します。
「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。 言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。 行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。 習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。 性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。」
習慣化された行動によって人は自分(性格)を創り、それが運命になる。つまり、その人の人生は「習慣」によって決まるとも言えるでしょう。
もちろんその大本は思考であり、言葉です。思考、言葉、行為の3つで創造していると「神との対話」でも言っていますが、その集大成が「習慣」であり、そうなったら人生に多大な影響を与えるということですね。
「ここでは、人生を変えてくれる6つの基礎習慣を紹介していきます。」(p.123)
詳細は本を読んでいただくとして、その6つの基礎習慣を書いておきます。
「計画を立てる」「早寝早起き」「運動」「読書」「心を落ち着かせる(ヨガ、瞑想など)」「新たな人と出会う」
最初の2つはすべての習慣のベースだと山本さんは言います。計画を立てることと早寝早起きをすること。これを習慣化することで、他の4つの習慣化にも役立つし、1日を有効に使えるようになります。
「習慣というのは、例外をなくす方が早く身につきます。「たまには」とか「これくらいは」という妥協は一切しない覚悟を持ちましょう。」(p.124)
特に「早寝早起き」ではそうですね。習慣化されるまでは例外を認めない方が良いように思います。
「良い習慣を身につけることは、すなわち『より良い自分になること』であり、自分の価値を感じやすくなります。三日坊主を経験したことがある人なら、それを乗り越えた満足感と相まって、自己肯定感は高まります。結果的に、ポジティブシンキングが身につき、メンタルが強化されるのです。」(p.129)
自己肯定感を高めるためにも良い習慣を身につけることだ、と山本さんは言います。
「継続は力」と言いますが、何かを習慣化して自己変革に成功したという体験は、大きな力になるでしょうね。
「多くの人が習慣作りに挫折してしまうのはなぜでしょうか? 習慣を身につけたいと思って始めるわけですから、モチベーションが低いわけではありません。何が問題かというと、「成果」を気にしすぎるのがまずいのです。」(p.130)
「習慣を身につけていく際には、成果には目をつむりましょう。成果ではなく、自分がどれだけ時間を費やせたかだけに注目してください。」(p.131)
私はよく「結果に執着せず行為に情熱を燃やす」と言うのですが、まさにそういう姿勢が習慣作りには大事だということですね。
「どちらにしても、ただ単に休むだけではなく、普段使わない部分を使ってバランスを取るように休憩を取ってみましょう。」(p.140)
「私はこれまで1万人以上に教えてきた経験上、「50:10」が最も集中力が保ちやすい、と考えています。50分集中して、10分間休憩するというサイクルで仕事をするのです。」(p.141)
人の集中力は45〜90分間程度だと言われているそうです。だから小学校の授業は40〜45分間で、大学になると90分間という設定なのでしょうね。
私自身の体験では、やはりやる作業によって集中できる時間が違ってくるようです。後で書きますが、読書は面白い小説などなら長時間連続して読めても、そうでなければせいぜい15分間です。何かものを書く時は、30分でも1時間でも集中できたりします。
そういうものだと知って、休憩することもスケジュール化することですね。その休憩も、肉体を使う作業をしたなら頭脳活動が休憩になります。その逆もまた然り。こうすれば、時間をさらに有効に使えますね。
「「セロトニン」という単語を聞いたことがあるでしょうか? これは、脳内ホルモンの名前で、別名「幸せホルモン」と呼ばれています。セロトニンが分泌されていると、気持ちや感情が落ち着き、精神的にも安定します。不足してしまうと、ストレス障害やうつ、睡眠障害などの原因になりうることでも知られています。
ホルモンとは化学物質です。材料を集めて、化学反応を起こせば作り出すことができます。そして、その反応回路は、すでに私たちの体内に備わっています。私たちは材料を体内に入れ、反応のスイッチを押せば、幸せを実感することができるのです。」(p.152)
この「幸せホルモン」の材料はトリプトファンという必須アミノ酸の1つで、食事やサプリで摂取することが必要です。反応を助けるためのビタミンB6も必要で、これは主に魚や肉、果物から摂取できるそうです。
反応のスイッチは、日光を浴びることとリズムカルな運動だとか。したがってこのことから、山本さんは次のように結論づけています。
「つまり、バランスの良い食事をよく噛んで食べ、食後に日光にあたりながらウォーキングやジョギングをすると、セロトニンが分泌され、幸せを感じることができます。」(p.154)
健康的な生活習慣の基本中の基本とも言えるようなことですが、やはりこれを守ることが効率の良い日々を過ごす上でも大事なのでしょう。
「景色をクリアなレンズのメガネを通して見るのと、サングラスをかけて見るのとでは、見え方が異なりますよね。当然、結果として印象が変わります。このように、私たちの感情は、状況や出来事そのものではなく、受けとめ方によって決まるのです。」(p.162)
これは心理学の「ABC理論」の解説部分です。「A:状況や出来事 + B:受けとめ方 = C:見え方(感情)」だそうです。
この考え方は、私の「幸せ実践塾」でも取り入れています。感情(経験)は状況や出来事で決まるのではなく、それに対する見方(考え方)で決まる、というものです。
状況や出来事を変えるのは大変です。だから私は、状況や出来事は変えられない、と思うようにしています。
それよりも簡単なのは、自分の見方を変えることです。それによって、自分が望む感情を引き出すことができ、簡単に幸せになれるのです。
やるべきことがあっても、どうにもやる気が起こらないということは多々あります。そういう時、次の方法を山本さんは勧めています。
「実は、シンプルで、とても効果の高い方法があります。それは『とりあえず、やってみる』ことです。手をつけたいと思えるまで待ったり、やる気が出てくるまで他のことをしようとすると、やるべきことに手をつけるのが、ますます億劫になってしまいます。」(p.165)
勉強する気が起こらなくてマンガ本を開いたら、のめり込んで時間を費やしてしまったなんて経験は、誰にもあることでしょう。だからこそ、そういう方法ではなく、とりあえず勉強をやってみるのです。
これは、ハードルを下げる方法でもあります。
たとえば、ジョギングを習慣化しようとする時、毎朝起きて5kmのジョギングと決めても三日坊主になりがちです。ハードルが高いからです。
これを、服を着替えて玄関まで行ってジョギングシューズを履いたらOK、というようにハードルを下げます。イヤなら無理に走らなくてもいいのです。次に、5kmでなくても、100mで戻ってきてもOKとしておいてもいいでしょう。
こうやって、とっかかりのハードルを下げて、「とりあえず、やってみる」ことだけを自分に強制します。始めてみれば意外と続けて最後までできたりもするものですからね。
「理想的な「1日」を作るのはあなたの決意と行動次第です。自分の働き方、人生をよりよくするために、本書でお伝えしてきた絶対的な「1日」の習慣を、しっかりと組み上げていってください。」(p.197)
山本さんは、最後をこのように締めくくっています。実は、ここまで本のタイトルにもある「絶対的な「1日」」という言葉は出てきません。それに説明もないので、どういう意味なのかいまいちピンときませんでした。
山本さんには申し訳ないけど、本のタイトルで損しているように感じました。これより何度か出てきている「理想的な「1日」」の方がわかりやすいと思ったのです。
まあでも、編集者さんと打ち合わせた結果、創られたタイトルでしょうからね。素人の私がどうこう言うことでもありません。ただ内容が素晴らしいだけに、タイトルがもったいないなぁと思ってしまうのです。
なぜ内容が素晴らしいと感じたかと言うと、こういうハウツーものの本では、読後に1つでも実践されなければ意味がないと考えているからです。この本を読んだ私は、さっそくこの内容を実践に活かしました。
それが、「インターバル読書術」です。私が命名しました。(笑)
要は、15分間本を読んで、続く10〜15分間は趣味の新聞折りをするというもの。これを1クールとして、数クール繰り返します。
こうすることで、集中力を保って読書ができるし、読み終える時間が想定できるし、非常に濃い時間を過ごすことができます。
※15分間の読書は、なるべくそれに近い時間で、キリの良いところまでという設定です。「趣味の新聞折り」とは、介護の仕事で汚物包みに使う新聞を1枚ずつ折りたたんでおく作業です。
この本を読むのにもこれを役立てました。1時間半で読み終えられるとわかり、実際にかかったのは新聞折りの時間を含めて2時間半〜3時間くらいでした。その間は非常に集中していて、大いに成果が上がったと実感できました。
この記事で引用した部分を読み直していただけると、私がどの部分を参考にして「インターバル読書術」を思いついたかがわかるでしょう。
このように、すぐに実践に活かせて成果が挙げられるハウツーものは、非常に素晴らしい本だと思うのです。
