2017年03月01日
星の商人
また、犬飼ターボさんの本を読みました。この小説を読んだかどうか、あまり記憶にないのですが、おそらく読んでいるはずです。でも、すっかり忘れているので、初めて読むのと同じですね。
すでに紹介した「CHANCE チャンス」は、けっこう長い小説です。それに比べると短くて、「成功の秘法」もそれほど多くはありません。
でも、その教えは普遍的なもので、とても重要なことを言っているなぁと感じました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
その前に、ストーリーをざっと説明しますね。主人公はレキ。漁師の息子ですが、自分は漁師には向かないと感じて、商人になろうと決意し、湾岸都市という名の国を目指します。そこは、商売で栄えた都市国家だったのです。
その湾岸都市で、元大商人の賢者様と出会い、大商人になるための方法を教わります。その教えはたった1文が書かれた巻物でしたが、レキが新たなことに気づくことによって、また別の文が浮かび上がってくるのです。こうして、賢者様の教えによって、レキは大商人になっていきます。
「大商人になる秘法というのはとても簡単で単純じゃ。だが多くの商人たちが進んでいる方向とはまったく逆じゃ。それがゆえに、みんなほかのもっと難しい方法を追い求めてしまうし、ほとんどの者は教えられても信じようとはせぬ。だから大商人になるのは難しいのかもしれぬ」(p.140)
賢者様は、このようにレキに言います。賢者様が教えてくれた大商人になるための秘法の最初の一文は、「他の成功は、己の成功」というものでした。他の人が成功することを助けることが、自分の成功につながるというものだったのです。それは簡単で単純ですが、多くの人にとっては受け入れ難いようです。
「しかし、そこに書かれていないもっと深い、裏の意味もある。それは『この世の富は限られたものではなく、無限である』ということじゃ。もしそう思うならば、その者は富を分かち合うだろう。そして共存の世界に生きることになる。しかし、もし富が限られたものと思うならば、富の奪い合いを始めるだろう。」(p.144)
必要なものが十分にないというのは幻想だと、「神との対話」に書かれています。富もまた同じです。富が十分にないと思えば、それが得られないという不安に駆られ、他の人の富を奪おうとするでしょう。しかし、それが幻想だとわかれば、安心して分かち合えるのです。
短い小説ですが、とても重要なことを教えてくれるものだと思います。それは、豊かさは無限だということです。分かち合えば分かち合うほど、豊かさは増えていきます。それが信じられないから、奪い合ってしまうのです。
給料が少ないから適当に働くという考え方も、奪い合いと同じ思考です。まず先に与えれば、同等かそれ以上に返ってくる。それが、この世の真実なのだと思います。
2017年03月03日
ぼくは13歳職業、兵士。
鬼丸昌也(おにまる・まさや)さんと小川慎吾(おがわ・しんご)さんの本を読みました。NPOの「テラ・ルネッサンス」を代表するお二人です。
内容は、テラ・ルネッサンスの活動を紹介する本と言えます。特に少年兵が問題になっているアフリカで、どんなことが起こっているのか、私たちにどう関わりがあるのか、私たちに何ができるのかを、示唆してくれるものとなっています。
テラ・ルネッサンス関係の本としては、先日紹介した「僕が学んだゼロから始める世界の変え方」などがあります。併せて読んでみてください。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「この本は、子どもたちが直面している深刻な問題について書かれています。毎年50万人、毎分1人の命が小型武器によって失われています。とくに小型武器を持たされた兵士として戦わされてきた子ども兵の問題は深刻です。
たとえそれがどんなに困難で恐ろしい問題だとしても、今の時代が抱えるこの絶望的な問題を、まず理解することが大切です。」(p.4)
「日本のみなさまへ」と題された国連平和大使のジェーン・グドールさんの寄稿です。子ども兵の問題、それを支える小型武器の問題は、一朝一夕に解決するような問題ではありません。けれども、まずは「知る」ということから始めなければ、何も解決はしないのです。
アフリカでは、誘拐されて子ども兵にさせられる子どもが多数います。その中には、逃げ出して故郷に帰れないようにするために、あえて故郷で殺戮に加担させるというむごい手段がとられたりもします。そして、自分の家族、とりわけ親を殺すよう命じられたケースも。
そうやって地元を追われた子ども兵は、たとえ帰還しても地元から温かく迎えられることがありません。そのため、再び軍に戻ったり、暴力によって身を立てるようになってしまうのです。
「ぼくたちは、ウガンダ北部のグル市で「ナイトコミューター」と呼ばれる不思議な現象を目撃しました。ナイトコミューターというのは英語で「夜の通勤者」という意味ですが、この名前の通り、夜になると周辺の村々から子どもたちが、ぞろぞろと市の中心街にやって来るのです。その数は、なんと4000人、多いときには6000人以上になるというのです。」(p.21)
なぜ、子どもたちが夜な夜な市の中心街に集まるのか? 誘拐されて少年兵にされるのを恐れるからです。その不安のために、大勢の子どもたちが、土曜も日曜もなしに、毎晩、安心して寝るために移動しているのです。こんなことが、考えられるでしょうか? この現実が、少年兵の問題の大きさをあからさまに示していると言えるでしょう。
「紛争の犠牲者の約9割は小型武器によって殺され、1分間に1人が世界のどこかで小型武器によって命を奪われているのです。その数は年間50万人といわれています。
また、冷戦後の約10年間に、約400万人が小型武器によって命を奪われているといわれていますが、その犠牲者の約9割が戦闘の巻き添えになった一般市民です。さらに、そのうちの約8割が女性と子どもたちだとされています。」(p.66)
小型武器というのは、軽量で子どもでも扱える武器です。自動小銃と呼ばれるようなもの。こういう武器があるために、子どもが兵士になることが可能になっています。そして、大型の兵器が使われることが少なくなった現代では、この小型武器が戦闘でよく利用されているのです。
テラ・ルネッサンスなどでは、小型武器をなくすことで、間接的に子ども兵をなくそうとしています。もちろん、アプローチはそれだけではありませんけどね。
その道程は、果てしなく険しいようです。とりわけ、武器輸出大国のアメリカが反対姿勢を保っているために。これは、ある意味でしょうがないことだと思います。大型武器が売れないのですから、小型武器を売らなければ食べていけないという現実もあるでしょう。
それに小型武器は、何も子ども兵のために開発されたものではありません。大人でも容易に扱えるよう小型化されたのです。それだけ優位な武器ですから、ただ「廃止しろ!」と叫んでも、それだけでは難しいと思います。
また、小型武器をなくせば子ども兵がなくなるわけではない、ということも事実です。子ども兵は、兵員の補填目的でさらわれますが、大人に従順で洗脳しやすいとか、地雷を確認させるために歩かせるなどの使い道があります。ですから、実際に銃を持って戦闘に加われなくても、子ども兵の価値はなくならないのです。
そういう難しい問題はあるにせよ、一歩を踏み出さない理由にはなりません。まずは知ることが重要だと、鬼丸さんたちは言います。そして、誰にでもできることをいくつか提案しています。
「まずは自分が始めること。
そのことで周りや世界が変わっていきます。そうして、今が変われば、きっと未来も変わっていくでしょう。」(p.142)
今すぐに解決する妙案があるわけではありません。しかし、必ずいつか変わって、みんなにとって真に平和な世界がやってくるのだと信じて、今日を歩むことはできます。
どう生きるかは、自分次第です。知らなかったことにして耳をふさぐこともできるでしょう。けれども間違いなく、世界では今も、多くの子どもたちが兵隊となって戦っています。そして傷つき、苦しんでいます。
さらに言えば、彼らがそうなっている原因の一端は、日本などの先進諸国にもあります。先進諸国が豊かさを享受するための資源の奪い合い。それが、アフリカの紛争の遠因になっているからです。
無関係と言い切ることもできます。どう考えるかは、自分が自分で決めることなのです。
2017年03月07日
あなたの人生がつまらないと思うんなら、それはあなた自身がつまらなくしているんだぜ。
また長いタイトルの本ですね。ひすいこたろうさんの本を読みたくなって、買った数冊のうちの1冊です。
「1秒でこの世が変わる70の答え」というサブタイトルがあるように、70の章に別れていて、それぞれケースごとに対策が書かれています。ものの見方を変えるだけで、どうやって窮地から脱出するかという実例集のような感じです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
最初は、大切なものが傷ついたときの対処法です。iPhoneを開発したジョブズ氏は、インタビュアーのiPhoneにカバーがしてあるのを見て、とても不機嫌になったそうです。
「傷つくのを嫌がって、カバーをしている人がいるけど、傷こそが、キミだけのものになった証じゃないか。傷こそ美しいのに……」(p.12)
そして、加藤諦三さんの言葉を添えます。
「事実は直接、人には影響を与えません。
事実はその人の解釈を通じて、
その人に影響を与えます」(p.12)
大切なものが傷ついたのは事実ですが、それをどう解釈するかはその人の自由です。傷こそが美しいと考える人は、そのモノに個性が生まれて、より自分らしいものになったと喜ぶのです。ダメージジーンズなども、本当は自分らしくなったことへの愛着だと思います。
次は、面白いことが起こらないと嘆いている人への文章です。お笑いの千原ジュニアさんに、いつネタ作りをするのかと尋ねたら、こう答えてくれたそうです。
「いまといえばいま、さっきと言えばさっき、これからと言えばこれから。つまり俺は、24時間お笑いのことを考えてます」(p.27)
つまり日常の中で、常にどこかにお笑いのネタがないかとアンテナを張っているのです。
「自分の心の中にあるものが見える。
それがこの世界のカラクリです。」(p.28)
自分が何に意識をフォーカスしているかによって、そういうことばかりが起こっているように感じるのです。
ですから、不平不満にフォーカスするのか、幸せにフォーカスするのか、自分が決めることが重要なのですね。
なかなかポジティブになれない人へのコラムとして、こういうことが書かれています。
「まずは、「自分の感情」を「他人」を見るように眺めます。
否定せず、ありのままの感情に寄り添ってあげます。」(p.82)
誰かを許せないという感情も、「あー、自分は今、○○さんを嫌いだと感じているんだなぁ」と眺めるのですね。これは、感情を感じきるテクニックでもあります。
そうやって、正直に、ジャッジせず、自分の感情を受け止めてあげることが重要だと言います。感情は魂の声ですから、それをしっかりと聞くことから始めることですね。
夫婦喧嘩が絶えない時のテクニックです。ある夫婦はしょっちゅう喧嘩していたのですが、あるときから奥さんが怒らなくなったのだそうです。その理由を尋ねると、夫に期待しないことにしたから、ということでした。
「「あきらめる」のそもそもの意味は、「ものの道理をしっかりとらえ、原因、結果を明らかにすること」。
つまり、あきらめるとは、明らかに眺めることをいうのです。何度言ってもできないことは、「この人はこういう人だ」と明らかに見てあげればいい。」(p.94)
文句が出るのは、まだ相手を変えようとしているからです。諦めていないのです。ですから、さっさと諦めて、期待しなければいい。相手はそういう人だと決めて、その上で自分がどうすればいいかを考えれば良いのです。
近くに、愚痴や不平不満をしょっちゅう言う人がいると、なんだか気分が滅入ってしまいます。そんな時のテクニックが紹介されています。
「いい・悪いで考えると悪人が生まれます。そこに裁きが生まれます。
そして、究極、戦争になります。
でも「趣味」「好み」だと思ったら、
ただの趣味の違いになります。」(p.101)
愚痴ばかり言う人を、そういう趣味の人だと思ってあげればいいのですね。あるいはそういう芸風なのだと。
それは良くないと善悪、正誤で考えるから苦しむのです。そう考えると、どうしても相手を変えさせなければと感じてしまいますから。
ネガティブな感情との付き合い方のコラムでは、小玉泰子さんが提唱されている「まなゆい」というものを紹介していました。
自分が感じたことを、次のフレーズにして言います。
「私は、_______と思っている自分を
受け入れ、認め、ゆるし、愛しています」(p.156)
たとえば「ムカッときた」のなら、その言葉を入れて、言ってみるのです。「私は、ムカッときたと思っている自分を受け入れ、認め、ゆるし、愛しています」という感じです。
たとえ、そう言ってみても自分を認められないと感じたとしても、その感じたことを入れて同じように言います。「私は、それでも自分を認められないと思っている自分を受け入れ、・・・」
さらにこの「まなゆい」は、自己実現にも使えるそうです。その場合は、「と思っている」を「という」に変えます。「どんな自分になりたい?」と自問して湧いてきた答を入れて、同じように言います。
このとき、たとえば「作家になりたい」と感じたら、すでに作家になった自分を受け入れるようにします。「私は、作家という自分を受け入れ、・・・」という感じです。
ひすいさんはこの「まなゆい」を、毎朝のお風呂の時間に、5〜15分くらいやっているそうです。ひすいさんがノーベル賞を贈りたいと言われるほど惚れ込んだ手法ですので、試してみる価値はあるかと思います。
自分1人が変わったくらいで世界が変わることはないよ、と感じた時の対処法です。まず、文豪ゲーテの言葉を引用します。
「人間の最大の罪は不機嫌である」(p.307)
不機嫌の連鎖によって、周りの人が不機嫌になっていきます。その実例を示しながら、こう説明します。
「不機嫌は伝染していきます。だから最大の罪なのです。
ということは……
逆にあなたがご機嫌でいることは、まわりにハッピーを投げかけているということ。
ご機嫌も伝染していくからです。
ご機嫌でいるだけで、あなたは世界の幸せの立役者なのです。」(p.308)
すぐ嫉妬してしまい、愛が足りない自分に嫌気がさす、という場合の対処法です。その答をこう言います。
「この星の70億人が、みんなそう悩んでいます。」(p.314)
つまり、そういうのは自然なこと、当たり前のことなのですね。そのことを、古代インド哲学「ベーダ」を引用して解説します。
「ベーダが説く宇宙観では、古来、この世界にはひとつなる意識しかなかったというのです。そして、そのひとつなる意識(神)は、分離することを選んだ。分離しなければ、憎しみも、嫉妬も、恐れもなかったのに、わざわざ分離を選んだのです。
なぜ神は分離を選んだのでしょうか? ベーダでは理由をこう説明しています。
「愛したかったから」」(p.315)
ひとつの意識では、自分が愛であることは知っていても、愛することはできません。愛するとは、何かから何かへの行為ですから、対象が必要なのです。ひとつの意識では対象がないので、愛することができなかったのです。
「神との対話」でも、同様のことが書かれています。この世が相対的なのは、体験するためです。自らを体験するために、この相対的な世界が創られました。
ですから、恐れも、嫉妬も、憎しみも、すべて体験すべき要素なのです。そういうものも体験した上で、愛する体験をしたい。それがひとつの意識(神)の望みなのですね。
最後の引用は、心配症で漠然とした不安を常に感じている、という人への対処法です。ここでも最初に答を、次のように言っています。
「根拠はいらない。
未来はバラ色だと
決めてしまえ。」(p.326)
福島正伸さんの逸話を取り上げて説明します。1億円の借金を背負った上に無職になった「せんちゃん」に、福島さんはこう言ったそうです。
「せんちゃん!世界を変えるときが来たね!」(p.327)
「人生が終わるような目に遭っている人こそが、
世界を変えていくんだ」(p.327)
福島さんは微塵も疑うことなく、こう信じておられるような言い方をされたそうです。これによって意識を変えた「せんちゃん」こと千田利幸さんは、今では全国から引っ張りだこの売れっ子コンサルタントになられたそうです。
どうしてそんなに人を信じることができるのか? それを福島さんに尋ねると、こう答えてくれたそうです。
「「僕は人を信じることを仕事にしたかった」
福島先生は決めているのです。自分が出会う人は、みんなすごい人なのだと。
未来は「考える」ものではなく、「決める」ものだったのです。」(p.328)
だから、根拠などは要らないから、自分でバラ色の未来だと決めてしまえばいいのです。未来は、自分が勝手に決めていいのです。
ここで紹介した以外にも、たくさんの意表を突く見方が書かれています。これを何度も読めば、見方を変えるコツが体得できるのではないでしょうか。みなさんにお勧めしたい1冊です。
2017年03月08日
心が折れそうなときキミに力をくれる奇跡の言葉
ひすいこたろうさんの本を読みました。この本は、前に紹介した「絶望は神さまからの贈りもの」の続編になるのだそうです。24人の偉人伝も感動しましたが、本書もきっと、たくさんの感動があると思いました。だって帯に「3万人が泣いた!」と書かれていますから。
読んでみると、10人の偉人に絞って、その人の生きざまを深くえぐり出したようなものになっていました。そして、それぞれの章で、たっぷりと泣かせていただきました。ひすいさん、すごいわ。もうお手上げです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
最初は、KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)の創設者、カーネル・サンダース氏の逸話です。フランチャイズのスタートは65歳からで、1009回のNoから始まったと、有名な話があります。
サンダース氏は「自分に特別な才能があったとは思えない」と言っています。実際、30歳になっても天職が見出だせず、転職を繰り返していたのです。では、どうして成功できたのでしょう? それを自分でこう言っています。
「成功できた最大の要因は一生懸命働いたことだ」(p.31)
職は転々としても、どの仕事でも一生懸命働いたのだそうです。ではサンダース氏は、どうして一生懸命働くようになったのでしょう?
それは10歳の時、農場の手伝いをしたところ、他のことに気を取られて仕事がおろそかになり、農場主から怒られてクビになったことがあったのだそうです。家計を助けて母親を喜ばせようとしたのに、逆に落胆させることになってしまいました。
この時、サンダース氏は決意したのだそうです。もう二度と、母親を悲しませないと。それからは最後までやり抜くことを誓い、一生懸命に働く習慣を身に着けたのです。
「ワシはただ二つのルールを守ってきただけなんじゃよ。
できることはすべてやれ。やるなら最善を尽くせ。」(p.32)
実際、やったことのない飲食業に足を踏み入れたのは、ガソリンスタンドに来てくれる客から、美味しいレストランを紹介してくれと言われたのがきっかけでした。近くに、美味しいレストランがなかったのです。だったら自分がやったらいい。そう考えたのですね。
その後も、サンダース氏はすべてを失うという経験をします。しかし、その挫折こそがKFCの成功につながっていると、サンダース氏は言います。
「サンダースは教えてくれた。
幸運が伝説をつくるんじゃない。
才能が伝説をつくるんじゃない。
若さが伝説をつくるんじゃない。
情熱こそが伝説をつくるんだと。」(p.39)
昨年12月に観た映画「海賊とよばれた男」のモデル、出光興産の創業者、出光佐三氏の物語もありました。映画である程度は知っていましたが、それでもひすいさんの切り口で迫られると、また感動して泣いてしまいました。
日本は、イランとの関係が良い先進国です。なぜイランとの関係が良いのか知らなかったのですが、こういうことがあったからかなあと改めて思いました。
それは、イランの石油を国際石油メジャーが牛耳っていた時のことです。利益はイギリスに持っていかれるだけで、イランは貧しいままでした。石油の販売権を取り戻す。イラン政府がそう動き始めた時、イギリスはこれを妨害してきたのです。
イランから石油を買って運ぶ船は、見つけ次第撃沈すると脅しました。イラクとイランが戦争した時、イラクがイラン上空を飛ぶ飛行機を撃ち落とすと警告したのと同じですね。そういう酷いことを、イギリスはやっていたのです。
世界の石油利権は、ほとんどメジャーに押さえられていました。それに対して反旗を翻したのが出光興産だったのです。そして、自前のタンカー日章丸を使って、危険を顧みずにイランから石油を運ぶことにしました。
なぜ出光氏はそんな危険なことをしたのか? 他に競争相手がいないから、儲かると考えたのか?
「自分たちのため……そんなちっぽけな目的じゃ命を張れはしない。
貧窮するイラン国民のため。石油をセブン・シスターズの独占から守るため。そして日本国民のため、です。」(p.55)
自分たちの儲けが重要なのではなく、そこに義があるかどうかが重要でした。そのために命を懸けたのです。
イランのモサッデク首相は、次のような言葉を語ったそうです。
「日本がイランの石油を買う決心をされたことは感謝に堪えない。日本はイランの救世主であると思っている」(p.60)
「日本人の偉大さは常にイラン人の敬服の的であり、その勇猛果敢な精神に感嘆している」(p.60)
一民間企業が、大英帝国を相手に戦って勝ったのです。イギリスは抗議しましたが、その後の裁判でも出光興産は勝利しました。こうしてイランは独自に石油を売って国民を潤す手段を得、日本もまたメジャーに独占されない石油を手にしたのです。
出光氏は、一度も「金を儲けよ」とは言わなかったそうです。その代わりに言ったのは、「人を愛せよ」だったとか。
「佐三にとって仕事とは、人のために生きられる、愛の人を生み出すための手段だったのです。
だから、アメリカへ石油の販売に行く社員には、こういっています。
「君たちは、米国に油を売りに行くのではない。日本人の姿というものを、米国人に示してもらいたい。お互いに譲り合い、助け合い、仲良く一致団結して働く日本人の姿を、米国人に見せてくるんだよ」と。」(p.63)
敗戦の日の1945年8月15日、日本中が失意のどん底にあった中で、出光氏だけが違っていました。
「「さあ、これからは、僕がアメリカと戦争をする番だ」
佐三はこう思っていました。
「日本は負けたのではない。日本の真の姿を全世界に示す絶好の機会が訪れたのだ」」(p.44)
出光氏が仕掛けた戦争は、日本の素晴らしさを世界中に知らしめることでした。日本人の心を伝え、世界中が仲良く幸せに生きる平和な世を築くことでした。
そういう日本人がいたことを、私はとても誇りに思うのです。
他にもマイケル・ジャクソン氏、安藤百福氏、高杉晋作氏など、感動的な物語がたくさんありました。一つひとつ紹介したいところですが、このくらいにしておきます。
私が感動したのは、やはり自分の将来の生活のことを考えるのではなく、周りの人々や国民全体、さらには世界中の人々のことを考えて、困難を乗り越える姿です。それが義務だからではなく、そうするのが自分らしいから。
そして、あとがきに書かれたこの本が生まれるエピソードも、とても感動的でした。人がいるところ、至る所にドラマがあるのですね。ぜひ、多くの人に読んでいただきたい本です。
2017年03月12日
ものの見方検定
ひすいこたろうさんの本を読みました。「見方」を変えれば幸せになれると説くひすいさんの考えを、そのままタイトルにしたような本です。各章がお題になっていて、それについて解答を考えさせるスタイルになっています。
2014年11月に出版された本ですが、ちょうどひすいさんが作家になられて10年だったのだそうです。10年間で30冊の本を世に送り出してこられたひすいさんの、集大成とも言える本のようです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
最初に、目の錯覚を示す絵を紹介します。よくあるどっちが長いか?という絵ですね。
「あなたが正しいと認識していることも、案外、そうでなかったりするんです。
まずは自分は、物事を正しく、ありのままに見ていないという事実を認識してください。
そのうえであえて断言しましょう。
その”いい加減”な見方を”良い加減”に変えて見ればいいのです。」(p.4)
正しく見ようとしても、目は勝手に錯覚してしまいます。それなら最初から、いい加減な見方しかしていないと認識していればいいのですね。
その上で、どうせいい加減な見方をしているのだから、いっそのこと自分が楽しくなるような見方をすれば良い、ということなのです。それがこの本のテーマなのですね。
作詞家の秋元康氏は、ロサンゼルスでタクシーから降りた時、犬の糞を踏んでしまったそうです。その瞬間、自分は運がいいと思ったのだとか。そんなことが起こる確率は滅多にないのに、それが自分に起こったからだそうです。
「自分は運があると思えばいいだけなんです」(p.40)
考え方は人それぞれですが、どうせ考えるなら自分が楽しくなるように考えればいい。斎藤一人さんも、何があっても「ツイてる!」と言えばいいのだと言っています。
「運がいいと思えるということは、実は、思考による革命が起きていることになるのです。
運がいいということは、自分の向かう未来は、☓(バツ)ではなく○(マル)だと思えるからです。だって運がいいんですから。」(p.41)
自分は運がいいと思っている人は、自分の未来を良いものと決めているのですね。
日本一の大投資家、竹田和平さんの話です。和平さんの会社の社長を務めたこともある本田晃一さんは、和平さんの投資法の秘密を知りたくて、ずっと和平さんを見ていたそうです。
ところが、特別なものは何もなかったとか。ただ1つ違っていたのは、和平さんは稼ぐことよりも与えることや、喜んでもらうことばかり考えていたのだそうです。なぜ、和平さんはいつも与えようと考えられるのか? 次の和平さんの言葉を聞いた時、その秘密がわかったそうです。
「タンポポのように背の低い花は上を向いて咲いていてくれるがね。人間と背丈が同じひまわりはこっちを向いて咲いてくれるがね。高いところに咲いとる桜は下を向いて咲いてくれるがね。花はいつも人間に向かって咲いとるでよ。これ以上のありがとうは他にあるがなぁ。天は自分を愛してくれている。まずはこれに気づくことだよね」(p.10)
和平さんは、他の人が気付かない小さな幸せにたくさん気づくことで、自分の心を満たしていました。自分が幸せいっぱいだったから、他の人に与えよう、他の人を喜ばせよう、と考えられたのですね。
また和平さんの話です。大株主の和平さんのところへは、業績を落としてしまった社長さんがお詫びに来られるそうです。その時、和平さんは、小言を言われなかったとか。その代わり、社長さんを励まされるのだそうです。
その励まし方は、「なんのための仕事なのか?」という動機を思い出させるものです。たとえば先物取引の社長さんだったら、その仕事が農家のためになっているとか、それによって日本に貢献しているなど、動機が愛であることを思い出してもらうようにするのだそうです。
「仕事というのは本来尊いものだがね。
世のため人のためになってるよね。
赤字になるというのは、
何のためにという動機を忘れてしまうからだよねぇ。
だから、動機を思い出させてあげれば
たちまち黒字に戻るがね。
動機はたいがい愛につながっとるねぇ」(p.143)
私も社長をやっていて、業績を立て直せなかった経験があります。その時は、自分の会社が生き延びることしか考えてなくて、「何のための仕事か?」という動機を忘れていたように思います。反省ですね。
江戸時代の天才占い師、水野南北氏の話です。水野氏は、人相学から始まって骨相学まで極め、95%は的中するまでになったそうです。しかし、それでも満足せずに、100%の的中を目指して50日間の断食水業という荒行をしたのだとか。そうしてたどりついた境地を、こう言ったそうです。
「人の命運は総(すべ)て食にあり」(p.178)
人相などの相ではなく、食が重要なのですね。その人の食を見れば、その人がどんな人であるか、そしてどんな運命をたどるかもわかると。そして、運を良くする法則を見つけたそうです。
「食べすぎないこと」(p.178)
私も、少食こそが究極の健康法だと思っています。これは、「「食べること、やめました」」や「食べない」健康法」、「3日食べなきゃ、7割治る!」など、多くの本で学んできたことです。空腹は幸せのサインなのですね。
経営者の鶴岡秀子さんの話です。ある時、千葉でギネスに挑戦しようとして、1000人で二人三脚というイベントを企画されたそうです。ところが、蓋を開けてみれば集まったのはわずか350人ほど。しかし、鶴岡さんは諦めずに、そこから1000人を目指されました。
とうてい諦めてもしょうがない状況ですが、諦めなければ方法が見つかるものです。集まった人に、携帯電話で家族や友だちに声をかけてもらう。サークルの仲間を呼び出してもらう。サーフィンをしていた人、買い物をしていた人に声をかけて、バスに乗せて連れてくる。最後は、町長に頼んで防災無線で宣伝。
1000人を集めるゲームを楽しむことに巻き込むことで次々と人が集まり、最終的には1009人になったそうです。
「ムリだってときに、自分に問うべき質問はこうです。
「もし、できるとしたら何をすればいいか?」
できる前提で考えるのです。
そして、いますぐできる小さなことを100個ノートに書き出して、それをかたっぱしからやるのです。」(p.193)
私たちは、最初から「ムリ」と結論を出してしまいがちです。そう結論を出すから、よい知恵が浮かばないのでしょうね。
野口嘉則さんの本にあった話が取り上げられていました。これは私もブログ記事「明日葉のおひたしとアシュタバクラの話」で紹介しています。ジャナカ王の家臣のアシュタバクラの話です。
アシュタバクラは、何が起こっても「起こることは、すべて最高でございます」としか答えなかったのです。詳細は、ブログ記事をご覧ください。
たとえそれが悲惨な出来事であっても、それを「最高のこと」と見ることもできます。
「アメリカの成功者たちへのアンケートを見ても、そのことがわかります。
彼らがあげた成功した理由のベスト3。それは……。
「病気」「倒産」「失恋」でした。」(p.232)
これは松下幸之助さんも言われてましたね。大難こそが成功の原因なのです。「人間万事塞翁が馬」ということです。
事実は1つでも、見方は無数にあります。そしてその見方は、自分で選ぶことができます。自分が自由に決められるのです。
他の人がどんな見方をするのか? 成功した人はどういう見方をしていたのか? それを知ることで、自分も自由に選べるのだと気づくことでしょう。後は、自分が見方を変えていくことですね。
2017年03月13日
扉を開けろ
Facebookで作家の喜多川泰さんが絶賛されていたので、どんな内容かもわからず、「読書のすすめ」さんでこの本を買いました。一般書店には売ってないということだったと思いますが、今はアマゾンでも扱っているようですね。
著者は高久多美男(たかく・たみお)さんです。本の内容は、小西忠禮(こにし・ただのり)さんという料理人の伝記と言えます。
「小西忠禮の突破力」という副題があるように、小西さんは不可能を可能にしてきた人生を送ってこられました。まだ海外旅行が一般的ではない1960年代に、単身でフランスに渡航し、名門ホテルのリッツに職を得ました。それだけでも奇跡的なことだと言えるでしょう。
そこからは、いろいろな店で修業を重ね、日本でも有名なホテルのシェフとして腕をふるうことになります。しかし、小西さんの人生はそこで終わりません。本の帯には、こう書かれています。「ひとつの人生で、ふたつの仕事を全うする。」幼稚園の経営を託され、今も大人気の幼稚園を運営されています。
小西さんが、どうしてそういう人生を送ることになったのか? 不可能と言われる扉をこじ開けられたのは、小西さんが何をしたからなのか? そういうことがよくわかる内容で、一気に読んでしまいました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
小西さんは、若くして両親を失い、兄弟の家で養われました。しかし、図体が大きく大飯食らいだったこともあり、いろいろ苦労もあったようです。中学の時は、新聞配達のバイトをして、お兄さんの家計を助けたりもしました。
高校になってバレー部に所属しました。活躍したこともあり、卒業時には松下電器と関西大学から招かれました。しかし、合同合宿に行った後、小西さんはこの招きを断ることに決めました。その理由を、こう語ります。
「「そやけど、コートの周りは女の子ばっかりでな、黄色い声で選手を応援しとるの見て、こんな世界におったらあかんようになるって思ったんや」
「なんや、女の子に目がくらんでしもうたんか」
「それだけやない。冷静になって考えたんやけど、どんなに練習してもだれもが成功するわけやない。もし、トップレベルの選手になっても、華やかな時代はすぐに終わってしまう。」(p.24 - 25)
これが高校3年生の思考かと思うと、驚かざるを得ません。いかに老成していたかと。これには、早くに両親をなくして苦労したことと、キリスト教の教会で聖書を学んだことが大きく影響していたようです。
バレーを諦めた小西さんは、料理人になろうと思って料理専門学校に1年通います。そこで薫陶を受けて、フランスのリッツで修行しようと目標を定めます。稼いだ給料のほとんどを貯金し、26歳で渡航を決断します。
ところが、パスポートがとれません。今とは違い、いろいろ条件があったのです。ひかかったのは、往復のチケットがなかったこと。片道分しか買えなかったのです。
それでも小西さんは諦めずに、領事館へ通います。なんとかしてパスポートを発行してほしいとくらいついたのです。
「領事館に通い始めて三ヶ月後、けっして例外を認めないはずの役人が折れた。
「わかった。しかし、条件がある。日本国に恥をかかせるようなことはしないこと。野垂れ死にされても困るよ。わかったね」
小西の執念と一人の役人の柔軟な判断が、ひとつの例外を作った瞬間だった。」(p.35)
フランスでも小西さんは、この方法でリッツの門をこじ開けます。ただし、1年半かかっていますが。それでも、こうと決めたら実現するまで諦めないということが、扉をこじ開けるのですね。
「小西は後に「人生はどういう人と出会うかによって大きく決まる」と述べているが、そういう出会いを引き寄せるのは、あくまでも本人だ。古今東西のどんな偉人も、けっして自分の力だけで事をなしたわけではない。必ずキーマンとの出会いがある。小西の半生を概観しても、人との出会いによって難しい局面を打開していることがわかる。力の限りを尽くしてもどうにも開かない鉄の扉を開ける方法は、偶然としか思えない出会いの力を借りる以外にはないのだ。」(p.71)
粘ればなんとかなる、という単純なものではないのですね。粘った末に出会いがあり、その出会いによって引き上げられるのです。
だから人脈が重要だという人もいますが、小西さんは最初から人脈を作ろうとしていたのではなく、結果として人脈ができています。そこが重要なポイントではないかと思います。
小西さんは、パリのリッツで修行をして数年、日本で万博があるということを知って、そろそろ日本へ帰ってみたいと思うようになりました。しかし、そんなにお金があるわけでもありません。ただ「帰りたいな」と口にしていたら、同僚が素敵な情報を教えてくれました。フランス館で働くシェフを募集していたのです。
小西さんは、これに応募します。そんなに簡単に受かるとは思えない話ですが、小西さんはこれで帰ると決めたのです。
「このとき小西は、「フランス政府の派遣として日本へ行って、万博会場で日本の人たちに本場のフランス料理を披露する」と心に決めた。「自分はこうなりたい」と考え、それを遂行するため、愚直に突き進むことにおいて、彼は天才的でさえある。」(p.87)
宣言して行動する。それが小西さんの夢を実現する方法なのだと思います。この後、小西さんが夢を語ることで、また協力者が現れます。その協力で、みごとにこの職を手に入れることができたのです。
30歳を前に、小西さんは育ててくれたリッツを去ることを決意します。そのとき小西さんは、感謝を胸にしながらお願いをしました。
「退職金もなにもいりません。ただ、ひとつお願いがあります。ここで働きたいという日本人がいたら、受け入れてほしいのです。一人、あるいは二人、日本人のために枠を設けていただけませんか」(p.98)
自分の損得ではなく、他の人のために何かを残したいと思う。それが小西さんの生き方だったのです。小西さんのこういうお願いもあって、それ以降の日本人が、容易にフランス料理を学べる環境ができたと言えるでしょう。
「そのとき、村上信夫から言われたことが、小西の根っこを地中さらに深く伸ばした。
「小西君、一日一時間でも、いや三十分でもいいから本を読みなさい」」(p.199)
帝国ホテルの総料理長からアドバイスされて、小西さんはそれを愚直に守ったそうです。だから今でも、読書の習慣があるのだとか。小西さんは、こんなことも言われています。
「私の友人である喜多川泰さんの『書斎の鍵 父が遺した「人生の軌跡」』(現代書林)を読むと、なるほどと刮目させられます。同じテーマを扱っても、仕上がった本は作者によって内容ががらりと変わります。料理と同じです。ひとつとして同じものはない。その人にしかない体験があり、主義主張がある。」(p.199)
喜多川さんがこの本を勧められる理由がわかりました。小西さんと知り合いだったのですね。
小西さんは渡仏の前に、人生の羅針盤として十ヶ条を作ります。20歳代にしては奥の深い人生訓ですが、それはキリスト教の教えから得られたもののようです。
その中に、「たぐり寄せる行動を取る」という項目があり、これについて小西さんはこう語っています。
「私に起こる出来事はすべて必然だと思っています。出会いも必然です。自分にとって必要だからやってくる。あるとき、両親が早く亡くなったのは、それが将来、自分にとって必要だったからだと思えるようになりました。」(p.204)
両親との別れがあったから、人情に触れることができた。そして、その後、自分を支えてくれる人たちとの出会いにつながった。すべては必然だったのだと、小西さんは言います。
これをすると決めたら、後は愚直に行動するのみ。そのとき、できない可能性を考えない。それが小西さんの、扉を開く方法のように思います。そしてその時は、素晴らしい人との出会いを伴っている。
人生の転機もまた、導かれるようにやってくる。小西さんが幼稚園経営に進んだのも、そういう導きがあったからでした。だから安心して、人生に委ねていればいいのだなと感じました。
2017年03月15日
日本はなぜアジアの国々から愛されるのか
ちょっと目を疑ってしまうようなタイトルの本を読みました。「読書のすすめ」で購入した池間哲郎さんの本です。
池間さんは、NPOのアジアチャイルドサポートの代表をされています。私が初めて池間さんのことを知ったのはFacebook上で、東日本大震災の後、日本人を元気づけるような投稿を毎日のようにされていて、それでフォローさせていただいていたのです。
この本のタイトルにある「アジア」とは、反日国である中国、韓国、北朝鮮を除いていると、池間さん自身も語っています。私たちは、マスコミが特に中国と韓国の言い分ばかりを報道するため、アジアの本当の声が聞こえなくなっているのです。
中国や韓国の中にも、日本人を悪く言わない人もいます。しかし、多くは反日教育の影響やマスコミの反日報道、周囲の目などを気にすることで、本当のことが言えないのでしょう。
池間さんは沖縄生まれ沖縄育ちで、本土以上に反日教育を受けてきたとか。ところがアジアを飛び回るようになったら、いかに日本が愛されているかがわかるようになったと言います。それでご自身で歴史を調べなおしてみて、どれほど日本が素晴らしい国かがわかったのだそうです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
池間さんは、カンボジア人も日本嫌いだと教わってきたそうです。それでカンボジア人たちと食事会をした時、日本を恨んでいるかと恐る恐る尋ねてみたそうです。
「全員がキョトンとした。
「なぜ日本人が、そんなことを言うのですか?」と逆に聞かれる。「日本を恨んでいる人は誰もいません。全く反対です。白人たちを追っ払い、アジアのために戦った。多くの日本人が命を失った。徹底的に破壊された日本。日本がかわいそうだと思っていた」
と年長者が言った。すると全員がうなずいた。」(p.40 - 41)
1954年、カンボジア政府は、戦争被害に対する対日賠償請求権を放棄すると伝えてきました。日本側はカンボジアの愛ある行為に感謝し、経済、技術面での協力をすると申し出ました。カンボジアとは、こういう良好な関係なのです。
一方、日独伊三国同盟のイタリアは、敗戦1ヶ月前に対日宣戦を行い、一戦も交えていないにも関わらず、戦後、賠償請求してきたそうです。日本は請求は認めなかったものの、一時見舞金として支払ったとか。池間さんは「イタリアよ、恥を知れ!」とひどくご立腹です。
1951年、サンフランシスコ講和会議で、感動的な演説をしたセイロン代表のJ.R.ジャヤワルダナ氏(後のスリランカ初代大統領)のことも取り上げています。
「憎悪は憎悪によって止むことなく、愛によって止む」という仏陀の言葉を引用しながら、対日賠償請求権を放棄する演説を行いました。この演説を、池間さんはこう言います。
「白人から植民地支配を受けていた人々の思いを代弁した。”ただ一人、白人たちに戦いを挑んだ”日本に対する尊敬の念を持つ演説だった。
この演説は、当時日本に対し厳しい制裁処置を求めていた一部の戦勝国をも動かしたとも言われ、その後の日本の国際社会復帰への道につながる一つの象徴的出来事だった。」(p.47)
何度読んでも泣けてしまうパラオの話があります。ペリリュー島に駐留していた日本軍は、現地人とも親しみ合い、島民は日本人を愛していたそうです。そしていよいよ最後の戦いという時、島民たちは日本軍と一緒に戦うことを申し出ました。
「日頃、温厚な隊長は、その言葉を聞いた瞬間、激高し、「帝国軍人が貴様らごとき土人と一緒に戦えるか!」と大声で怒鳴りつけた。「土人?」「一緒に肩を組み、歌を唄った日本兵たちの思いは見せかけだったのか?」「やはり、こいつらは自分たちを見下げていたのだ」と人々は怒りと悲しみで拳を震わせた。
島から避難船に島民は乗り込む。日本兵は誰一人として見送る者はいない。日本人への怒りと憎しみの思いがあふれる。船が避難先へ向かうため、島を離れた瞬間、日本兵全員が真っ白な砂浜に現れた。死を覚悟した日本兵たちが笑顔で手を振り、「達者で暮らせよ!」と声をかける。一緒に唄った日本の歌を大声で唄っている。涙で顔を濡らす兵士もいる。そして、その先頭には「土人」と自分たちを侮辱した中川隊長の姿があった。」(65 - 66)
パラオの人たちを巻き添えにしてはいけない。その思いから、あえて恨みを買うような「土人」発言をした中川隊長。だから彼らが戻ってこられないように、船が出ていくまで隠れていたのです。
戦後、パラオはアメリカの統治を受けます。徹底的な反日教育。それでもパラオの人たちは、密かに日本兵の墓を守り、日本語を受け継いできたのです。
「アジア各地での支援や調査活動の中で、現地の方々から白人帝国主義の植民地時代の悲惨さを聞いてきた。
知れば知るほど、日本の先人たちがいかに偉大かが分かる。先人は白人列強の魔の手から日本を守ってくれた。
当時は、「植民地になるか。植民地にするか」の二者択一しかなかった。幕末から明治、大正にかけての戦い。昭和初期の、敗れたとはいえ、恐ろしいほどの劣勢の中で戦い続けた日本人。
「軍部の暴走」などと非難する日本人もいる。それでも誇りを懸けて戦った先人を心から尊敬している。」(p.69)
当時の情勢、当時の価値観にしたがうなら、戦うしか方法がなかったとも言えます。そういう中で個々の先人たちは、いかにして日本を守るか、ということを考えて行動したのだろうと思います。
パラオの旧首都コロールとバベルダオブ島の間に、「日本パラオ友好の橋」が架かっています。その橋にまつわるエピソードです。
「1977年に韓国建設会社(SOSIO)が日本の鹿島建設の半額で入札し、工事を請け負い、完成させた。しかし、完成直後から中央部が凹み、崩落の可能性が高かった。
(中略)
そして1996年9月26日に、橋は真っ二つに折れて崩壊した。
(中略)
コロールの町の機能は完全に麻痺し、当時のクニオ・ナカムラ大統領は国家非常事態宣言を発令。「暗黒の9月事件」と言われるほど、深刻な状態に陥った。
補償を求めようにも、韓国企業はすでに解散している。困り果てた大統領は、韓国政府に救いを求めるも、「関係ない」と突き放される。パラオでは再建築の費用を捻出するのは不可能だった。
そこへ手を差し伸べたのが日本。1997年、日本の無償援助で鹿島建設が請け負い、工事が始まった。低品質コンクリートが使われた旧橋の残存土台などは一切使わずに工事が始まる。
2002年1月完成。「日本パラオ友好の橋」と命名され、日の丸と、パラオの美しい月の国旗が描かれた。」(p.74 - 76)
相手が困っている時には助ける。それが日本人の美しい心なのだろうと思います。
「世界で初めて、「すべての人間は平等である」と宣言した日本に、私は大きな誇りを持っている。
世は人種差別の真っ只中。有色人種は人間ではないと言われていた時代に、「毅然として立ち向かった」国家が私たちの日本である。
大正8(1919)年4月11日、フランスのパリ講和会議国際連盟委員会において、「すべての人間は平等である」との「人種差別撤廃提案」を日本が世界で初めて出した。
白人至上主義がまかり通り、アフリカ、アジアを植民地とする。差別が当たり前、有色人種は家畜だと考え、奴隷状態におき搾取する。それが当然だと思っていた当時の世界情勢から見ると、大変な決意と度胸だったと思われる。」(p.147)
この提案は、11票対5票の多数で可決されるものの、アメリカ代表のウィルソン大統領が「重要な案件は全会一致でなければ決められない」と主張し、この決定を反故にされます。
白人至上主義による徹底的な差別を知らない現代の私たちが、当時の人の心情を理解するのは難しいかもしれません。けれども、想像してみることはできます。
家畜同様に扱われることが、どれほどつらいことか。そんな中、有色人種の国で唯一、白人の国と肩を並べていたのが日本です。そして、人種差別撤廃を訴えた。他の有色人種の人々から、どれほど期待されたかがわかります。
戦後、GHQは、徹底的に日本文化を破壊しようとします。「道」とつくものはすべて禁止。剣道、柔道などは、できなくなったのです。いかにアメリカが、日本の復活を恐れていたかがわかります。
「戦後、県道復活に奔走する国会議員・笹森順造に対して、GHQは条件を突きつけた。米海兵隊最強の銃剣術の使い手に勝てたら復活を許すと。アメリカ兵は本物の剣を付けた銃剣。日本人は古武道剣術の稽古用袋竹刀(四ツ割りの竹を牛皮の良革で包んで作った竹刀)。最初から日本武士殺害を目的とした条件だった。
そのような不利な条件でも飄々(ひょうひょう)と二つ返事で受けた日本の侍は、福島県出身で鹿島神流の使い手、国井善弥。あらゆる武道家から受けた挑戦にすべて勝利した「昭和の武蔵」だ。」(p.162)
この戦いは、国井氏がアメリカ兵の首根っこを竹刀で押さえつけて身動きがとれないようにして、完勝に終わりました。これによって、剣道復活の道が開かれたのです。
それにしても、こうまでするかというアメリカのやり方です。これが、世界の、特に白人社会の当たり前だったことを、私たちは忘れてはならないと思います。当時の日本人は、そういう世界の中で、勝ち残ろうとしていたのです。
「2004年、当時イラク大統領だったヤワール氏はシーアイランドサミットにおいて、「イラク国民が最も歓迎しているのは日本の自衛隊だ」と絶賛した。」(p.215)
イラク復興支援として派遣された自衛隊を、現地のイラク人は大歓迎したのです。その自衛隊が引き上げる時、こんなことが起こりました。
「イラク任務を終了し、自衛隊が撤収を始めると、多くのイラク人が集まり緊張が走る。
そこで前代未聞の不思議なデモが発生。イラク人たちは拳を振り上げ叫ぶ。しかしその内容は、「自衛隊よ帰らないでくれ。もっとイラクにいてくれ」だった。プラカードには、「自衛隊、ありがとう」と書かれていた。」(p.216)
恨まれることはあっても、感謝されることの少ない他国の軍隊と比べ、この対応の違いは驚くべきことです。自衛隊の規律の高さや献身的な態度は、東日本大震災の災害支援でも注目されました。これが日本の伝統的な軍隊なのだと思います。
戦争に負けた君主国家の君主が、無事に済まされることはありません。民衆の恨みを買って、処刑されるのが世界の常識です。
「アメリカは、戦争に負けた昭和天皇は日本にいられなくなると判断し、ロンドンか北京に亡命させようと考えていた。ところが天皇は亡命どころか、「国民のために自分の命は、どうなってもいい」と覚悟を決めていた。
その実践が全国巡幸だった。そして広島へと向かう。
原爆が落とされて2年後の昭和22年。当時は、誰も広島へは行きたがらなかった。「70年間は放射能の影響で草木も生えない」「広島県民と結婚すると子供もできない」と言われていた時代。」(p.229)
そんな広島へ天皇陛下が行かれた。だから広島県民は大喜びでお迎えしたのです。このことが、広島への偏見を払拭する一助となったことは、間違いないと思います。
私はタイで暮らしていますが、タイもまた親日国家です。周りのミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムなども、親日国家です。なぜアジアの国々は親日なのか? その理由が、この本を読むとよくわかります。
それは日本人が持っている徳によるものだと思います。困っている人がいたら助ける。相手を思いやる。規律を守る。そういう日本人が多かったから、日本は愛されたのでしょう。
では、これからの日本は、世界から愛される国であり続けるのでしょうか? そのためには、現代を生きる私たちが、徳を持って生きなければならないと思います。そしてそれを、子孫に伝えていくことも重要でしょう。そのためにも歴史を正しく学ぶことが大切なのだと思います。
2017年03月17日
名医は虫歯を削らない
とても衝撃的な本を読みました。虫歯や歯周病に関するこれまでの常識を完全に覆す内容です。
著者は歯科医の小峰一雄(こみね・かずお)氏。これまでの削る虫歯治療から、まったく削らないで自然治癒を促す虫歯治療と予防へと踏み出し、実績をあげて来られました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「そこから虫歯ができる人とできない人の違いについて研究を重ね、虫歯ができる原因と予防法について、私なりの結論を導き出し、オリジナルの予防法を確立しました。そしてついに、歯を削らずに治療できる方法を見つけたのです。
この方法は、すでに多くの患者さんが体験され、多くの喜びの声をいただいています。虫歯を壊さず、痛みも与えない治療法です。この治療法は、歯科界を大きく変え、これからの歯科治療のスタンダードになる!」(p.11)
「さらに長年の研究の結果、歯の健康と体の健康がいかに密接に関わっているか、つまり虫歯や歯周病は体の病気、あるいは未病の表れであるということも分かってきました。」(p.11)
このように「はじめに」において、小峰氏が行っている治療法が、いかに効果があるかを語っています。
「人間には、壊れた細胞を自分の力で治す「自然治癒力」が備わっています。皮膚にできた傷がいつか自然に治るように、虫歯は放っておけば自然に治るのです。」(p.14)
これは衝撃的でした。傷や病気は自然治癒力で治るとしても、虫歯だけは治らないと思い込んでいたからです。しかし考えてみれば、虫歯も含めてすべて自然治癒力で治ると考えるのが、自然な考え方のように思います。
「実は海外では、20歳以下の子どもの歯は削ってはならないというのが常識になっています。なぜなら成長期の子どもの永久歯を削ってしまうと、30歳までに抜歯することになる確率が大変高いということが、統計的にも明らかになっているからです。」(p.24)
これも目からウロコでした。そんなことは全く知らず、虫歯になったら歯医者へ行って、削ってもらうものだと思っていましたから。
「なぜ予防に力を入れたり、できるだけ温存するなどの方法をとったりしないのでしょう。理由の1つに、歯医者自身の知識不足があるかもしれません。しかし実際のところ、現在の医療保険制度では歯を削らないと診療報酬がもらえないため、削らざるを得ないのです。」(p.26)
「そもそも現状の保険診療には、問題点がたくさんあります。最大の欠点は、診療内容が制約されるということ。たとえば、歯周病の急性炎症で来院された患者さんが、歯茎の処置のついでに歯石を取ってほしいと要望してきても、制約上できないのです。
もちろん歯医者側も、1度にたくさんの治療を行うと、保険点数の平均点が上がって厚生労働省に目をつけられてしまうため、できるだけ1回の治療は少なくし、通院回数を増やしてもらうようになります。この制度は私から見れば「保険診療は安い」と印象づけようという魂胆が見え隠れしているように思えてならないのですが(笑)。」(p.26 - 27)
保険診療の問題は、私もいろいろ聞いたことがあります。たしかに、こういう問題点はあると思います。実際、タイなら2回で終わる歯根治療が、日本ならその倍くらいかかってしまいますからね。タイは1回1時間近く治療しますが、日本では30分以下ですから。
「予防歯科に対する考えは、日本よりもヨーロッパ諸国のほうがはるかに進んでいます。基本的にこれらの地域では、患者さんの虫歯を予防できれば報酬が得られ、虫歯ができて削らなければならなくなると報酬が減らされてしまうという保険システムを導入しているため、歯科医は治療よりも予防に真剣に取り組んでいます。」(p.68)
どういうシステムかはわかりませんが、こういうシステムがあればいいと思います。少なくともヨーロッパでできているなら、日本でできないはずはないと思います。
小峰氏は、外に歯の傷がないにも関わらず、内部が虫歯になるケースがよくあることに注目します。そして、スタインマン博士が発見した「象牙質の液体移送システム」が鍵になると気づきました。
「象牙質の液体移送システム」とは、「体を流れている物質はやがて歯の神経を通り、歯の表面に出てくる」という現象を言います。そしてこのことは、逆流することもあり得ることを示しています。つまり、口腔内の雑菌が歯の中に浸透し、神経を通じて体内に流れ込む。このことが、虫歯と体の病気とを関連付けるものだと小峰氏は考えるのです。
「スタイマン博士は、この体内の液体が歯を抜けて口の中に流れ出る「象牙質液体移送システム」が逆流したり、停滞する原因として、次の5つを挙げています。
(1)砂糖
(2)ストレス
(3)運動不足
(4)微小栄養素不足
(5)薬物」(p.51)
これらが原因となって「象牙質液体移送システム」の逆流を引き起こす。逆に言えば、これらを抑えれば、逆流を防ぐことができて、体の健康を保てることになります。それにしても、こんなこともまったく知りませんでしたよ。
「ちなみに歯磨きをすればするほど虫歯が予防できるかについては、WHO(世界保健機構)が2003年、「明確な相関関係を示す根拠はない」、つまりはっきり関係があるとは言い切れないと発表しています。そればかりか、頻繁に歯を磨くと虫歯ができる確率を高める場合もあります。」(p.57)
「実は食事をして歯に付いた酸性の食べ物は、歯の表面にあるエナメル質をやわらかくする性質があります。しかし唾液には口の中を中和し、エナメル質を再び修復する再石灰化の作用があるため、30分も経てば元の状態に戻ります。
ところが食後すぐに歯を磨いてしまうと、まだやわらかいエナメル質が削り取られるばかりか、再石灰化も途中で妨げられることになります。」(p.58)
これもまた、目からウロコの情報でした。小峰氏は、食後30分以上経ってから歯磨きするよう勧めています。
実は私は、ある時から、就寝前の1回しか歯を磨かなくなりました。けれども、虫歯はまったくできません。もちろん、それだけが原因ではないと思いますが、小峰氏が言われることに納得してしまいます。
「つまり虫歯を予防するためには、食事内容や生活を見直す必要があるのです。中でも砂糖を摂らないことは、非常に重要で、砂糖をやめれば、虫歯の約9割は予防することができると考えています。」(p.60)
ここでも砂糖が問題だということですね。私はすでに20年くらい、砂糖を摂らないようにしています。調理に砂糖を使わないし、清涼飲料水や甘い缶コーヒーは飲みません。
それでも、買って食べるものや外食の料理には、砂糖が使われているものも多いでしょう。完全に食べないことは難しいですが、意識して制限することはできます。そしてこれによって健康が保てていると、私も思っています。
「小峰式予防歯科プログラムの大きな柱となるのは、一切砂糖を摂らない「シュガー・カット」、そして砂糖を摂る量を制限する「シュガー・コントロール」です。具体的なプログラムは、患者さんの状態に合わせて作成していますが、基本は患者さんの食生活をお聞きし、気づかないうちに口にしている砂糖を見つけ出してやめていただくこと。さらに細かく言うと、虫歯の患者さんには炭水化物を控えていただくことで、症状を改善に導いています。」(p.63)
私はもう数年前から、炭水化物をなるべく食べないようにしています。そのことも虫歯ができないことに貢献しているのではないかと思いました。
「「小峰式予防歯科プログラム」は長い目でみれば虫歯・歯周病予防や虫歯の炎症、さらには体の健康に大変有効ですが、すでにできてしまった虫歯を治すには長い時間がかかります。そんなとき、ついに歯を削らずに、虫歯を治せる治療法に出会うことができました。それが、今からご紹介する「ドックベスト療法」です。
ドックベスト療法とは、アメリカで開発されたもので、ドックベストセメントという薬を使います。成分には、殺菌作用のある銅2%と鉄1%、そして複数のミネラルが含まれており、虫歯の穴に詰めることで、虫歯菌を死滅させ、歯の再石灰化を促してくれるのです。治療時間はわずか10分、フタで密閉して新たな菌の侵入を防げれば、徐々に痛みも消え、気づかないうちに虫歯も治っているという、まさに夢のような虫歯治療法です。」(p.73)
これも驚きました。すでにこんな治療法がわかっていたのですね。それならどうして、こんな良い治療法が広まらないのでしょう?
「ドッグベストについて書かれた多くの海外の文献を翻訳する中で、とんでもない論文を見つけてしまったのです。そこには「虫歯が自然に治ったりしたら、患者以外は誰も利益が得られなくなるため、これらの事実は葬り去られた」と書かれていました。つまり、虫歯が自然に治るということが人々に知られると、歯医者をはじめ、歯科に関する企業は存在する意味がなくなっってしまいます。そこで、この事実は伏せておくことになった、ということです。」(p.89)
さもありなん、という気がします。残念なことですが、こういうインセンティブは働くのかもしれません。
「しかし確かにリューマチの患者さんの歯の根っこの治療が完了すると、リューマチの症状が改善される例を何度も確認しています。逆にリューマチは、過去に歯の根っこの治療を行っていて、現在状態が悪く再治療が必要な人に多く見られることから、リューマチと虫歯・歯周病は非常に密接な関係があると考えられます。」(p.100)
これを歯性病巣感染と言うのだそうです。歯の根っこなどに病巣があって、そこから菌が全身に運ばれて、別の病気を引き起こすというものです。こういうことから、歯の状態と体の健康が密接に関係してくると、小峰氏は主張されるのです。
がん患者と歯周病患者には、共通する特徴があるそうです。「糖質を好む」「低体温である」「交感神経が常に優位にある」「呼吸が浅い」「酸性体質である」という5つの特徴です。
その中の酸性体質について、唾液のpH(ペーハー)を測定することで、虫歯になりやすいかどうかがわかると言います。たしかに、唾液が常時酸性なら、歯を溶かしやすいでしょうからね。
「唾液をアルカリ性に戻すと、かなりの確率で身体的症状が改善できるほか、虫歯の自然治癒も確認されています。また唾液のpHを測定することで隠れた体調不良を見つけ出すことができるため、この唾液検査が持つ可能性について、大きな期待を感じています。」(p.120)
体質を酸性からアルカリ性に変えるには、やはり食べ物が重要なようです。肉類や穀類、砂糖などを避けて、野菜やキノコ、海藻、果物といった食事を増やすことだそうです。
その他の特徴への対処では、体温を上げること、副交感神経を優位にすることなどについて、以下のように言っています。
「特に免疫力を高めるため、体温を上げることは重要で、私のクリニックでも食事療法に加え、体温を36.5℃まで上げるための体温上昇プログラムを行っています。体温を上げる一番簡単な方法は、半身浴を行うこと。さらに冷たい飲み物を控えて真夏でも温かい飲み物を飲んだり、日常的に運動することも効果的です。
また副交感神経を優位にするには、深呼吸をおすすめします。」(p.120)
「つまり歯周病はメタボリック・シンドロームが口の中に表れたものと言っていいでしょう。または、これから病気になる一歩手前の未病の状態とも言えます。歯周病は、初期であれば歯石を取ったり、ブラッシングをすることで治せる場合もあります。しかし重症化した歯周病は、口の中だけでは解決できないことも多く、完全に治すのは難しいと言われています。」(p.130)
肥大した脂肪細胞からサイトカインというホルモンが作られ、これが炎症を引き起こすのだそうです。ですから歯周病は、単にブラッシングの問題とか、口腔内細菌だけが原因ではないのです。
「よく「歯茎が腫れて噛めないから」とムリしてお粥ややわらかい麺類を食べる人がいますが、これは逆効果です。痛みがあるときは、むしろ食べないほうが歯に歯垢が付きにくく、細菌も増えないので早く治ります。どうしてもお腹が空いて我慢できない場合は、野菜ジュース(ただし生ジュース)を飲むといいでしょう。」(p.131)
体調が悪ければ食べない。それが動物の常識ですからね。どうしてもというなら野菜ジュース。これも癌の対処方法と同じですね。
「砂糖や糖質はなぜ、ここまで体に悪いのでしょう。その答えの1つとなるのが「糖反射」です。東京大学の研究によると、人間は砂糖を摂ると胃と十二指腸の働きが一時的にストップしてしまうことが分かりました。」(p.139)
こういうこともまったく知りませんでした。ものを食べたのに胃や腸が働かなければ消化不良になるし、体への負担も大きくなるでしょうね。
「また砂糖が悪影響を及ぼすのは、胃腸だけではありません。砂糖を摂ると、脳ではドーパミンという神経伝達物質が大量に分泌され、快感や多幸感が得られることが分かりました。疲れたときに甘いものを食べると、一瞬疲れが取れるように感じるのは、このためだと考えられます。
このドーパミンは増えすぎると感情の起伏が激しくなり、「怒り」「憎しみ」「恐怖感」というマイナスの感情が次々に沸き上がってきます。その一方で「優しさ」や「思いやり」が減ってしまうので、どんどん自分勝手になっていきます。またドーパミンの過剰な分泌は、精神病の1つである統合性失調症を引き起こすという見解もあり、イギリスのジョン・ワトキンス博士は「この世から白砂糖をなくしたら精神病はすべてなくなる」と断言しているほどです。」(p.140)
白砂糖は麻薬だという話は、前に紹介した「白米中毒」の中でもありました。中毒性があるため、最初は快感だけだったものが、徐々に依存するようになるのです。そうやって摂取量が増えるのです。
小峰氏は、歯の原料でもあるカルシウムについても、摂り過ぎは禁物だと警鐘を鳴らします。
「ただし人間に必要なカルシウム量は通常10〜10.7mg/dlと決まっており、これより多すぎても少なすぎても、歯に悪い影響をもたらします。具体的には、12mg/dl以上と多量の場合は歯周病に、8.8mg/dl以下と少量の場合は虫歯になるリスクが高まることが分かっています。」(p.152)
カルシウムの摂取が不足しているから、もっと多量に摂った方が良いと思っていただけに、これもまた目からウロコでした。でも、どうしてカルシウムを摂りすぎると良くないのでしょう?
「細胞内のカルシウムが増えすぎると、今度は細胞内の濃度のバランスをとるため、水分も取り込み始めます。すると細胞はどんどん膨れ上がり、あるときパチンと弾けてしまうのです。するとカルシウム同士が結び付き、結晶化した状態で体中のさまざまな臓器に蓄積します。そのカルシウムが蓄積した場所によって、腎臓や胆のうにたまれば腎臓結石や胆石に、脳にたまればアルツハイマーに、筋肉にたまれば肩こりや腰痛の原因になるのです。」(p.154)
血液中のカルシウム濃度は一定に保たれるため、摂りすぎると細胞に取り込まれるのですね。それにしても、結石やアルツハイマーなどの原因がカルシウもの摂りすぎとは、驚きました。
「さらに結晶化したカルシウムは血液中に流れ出し、ドロドロとした状態で血管の壁にこびり付いて血管を狭くします。これを「粥状(じょくじょう)アテローム」と呼んでいます。「血管の壁にこびり付いているあれって、コレステロールが固まったものではないの?」と思われた方も多いと思いますが、実は違います。あのドロドロの正体は、95%がカルシウムで、コレステロールはわずか5%に過ぎません。」(p.154)
これまた目からウロコの情報でした。動脈硬化や高血圧の原因と思われたコレステロールは、実は無関係だと言うのですから。そして本当の原因がカルシウムだとすると、もっとカルシウムを摂取すべきという常識が、いかに逆効果だったかと驚く他ありませんね。
「細胞内にたまったカルシウムを押し出すには、ある栄養素が必要となります。それはマグネシウムです。」(p.157)
つまりマグネシウムを摂取すれば、細胞内のカルシウムを押し出して体内を巡るようにすることが可能になるのだそうです。カルシウムだけでなく、マグネシウムを摂取することが重要なのです。では、そのマグネシウムは、どうすれば摂取できるのでしょう?
「マグネシウムは海藻類に多く含まれていますので、私たち日本人は日常の食事の中で、簡単に摂ることができます。」(p.157)
あるいは岩塩など天然塩にもマグネシウムが含まれているものがあるので、活用するとよいとのことです。
「そういうわけで、骨粗しょう症で悩んでいる人は、今日から薬やカルシウムを摂るのをやめ、ぜひマグネシウムを摂るようにしてください。」(p.158)
「結論として、虫歯予防のために必要なのは、シュガー・コントロールとカルシウム、そして歯周病予防には糖質制限と適度なカルシウム(摂りすぎないこと)、とマグネシウムが有効であると考えています。」(p.159)
虫歯や歯周病という口腔内の病気ですが、このように食べ物を管理することが重要なようです。そういえば100%当たるという占い師の水野南北氏も、食べ物によってその人の運命が決まるということを言っていましたね。ひすいこたろうさんの「ものの見方検定」という本にありました。
この本の帯には、「今までの歯科常識を打ち破る1冊!!」と書かれています。また本のサブタイトルは、「虫歯も歯周病も「自然治癒力」で治す方法」とあります。まさに、目からウロコの情報で驚きました。
しかし読んでみれば、きっとそうなのだろうなと納得できる内容でした。なぜなら、この小峰氏の考え方の方が、より自然なように感じるからです。
そして、これはひょっとすると歯科治療にレイキが貢献できるのではないかとも思いました。レイキは、虫歯による痛みを一時的に消すことができるからです。痛みがなければ放置できます。正しい食事と歯磨きをしつつ、レイキで痛みを消して放置する。それにレイキは、自然治癒力を活性化しますから、なおさら治りが早くなると思います。
この本は、歯科医やお母さん方、その他多くの方々に読んでいただきたいと思いました。目からウロコが落ちっぱなしの1冊です。
2017年03月20日
病気の9割を寄せつけないたった1つの習慣
歯科医の中城基雄(なかじょう・もとお)氏の本を読みました。歯科医が健康全体を語るのですから、歯や口腔と身体の関係かと思っていましたが、まったく違いました。
ついでに言うと、このタイトルもいささかあてが外れました。たとえば「特別なやり方で歯を磨く習慣を身につければ健康になれる」というようなものかと思っていたのですが、まったく違う意味での習慣だったからです。このことは、またあとで書きましょう。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「私が30年以上にわたり、のべ数万人の口腔を治療し、この10年で「歯の治療を終えると、なぜか全身の病気まで治る歯科医院」と噂されるまでに至った知見から、結論を申し上げましょう。
血液の状態
体液の流れ
自律神経
右に挙げた3つに生じた異常が、病気や不調を呼びます。」(p.1 - 2)
つまり、病気の原因は上記の3つの異常に集約されるということです。逆に言えば、この異常を正せば健康になるということですね。
「これからお伝えするのは、病院に通うことなく、誰もがいつでもどこでも血液の状態、体液の流れ、自律神経の異常を知ることで病気や不調を遠ざけ、今後気をつけるべき症状までわかるようになる方法です。
もちろん、あなたの体だけでなく、ご家族や友人、知人などの体内で知らぬ間に起きた異変にだって、いち早く気づけます。
さらには、初対面の人の体質や性格の傾向まで把握できるようになるのです。」(p.2)
先程の3つの異常を早く発見し、正しく対処できれば、病気を防いだり健康を維持することが可能になります。そのための方法が、この本には書かれているということです。しかし、医師でもないのに、そんな見立てが簡単にできるようになるものでしょうか?
「でも、これからご紹介する方法なら、その3つの状態を、誰でも、いつでも簡単にチェックできるようになります。
その方法とは。
ズバリ「みる」ことです。」(p.7 - 8)
ただぼんやり眺めるのではなく、ポイントをしっかりと見る必要があると言います。そのポイントが、この本で示されているのです。
ここまでが、「はじめに」に書かれていることです。ここから本編に入りますが、そこにはどこをどのように見るかが詳細に書かれています。たしかに、このように「みる」なら、正しい見立てができるのかもしれません。
しかし、「それはちょっと難しいんじゃないかな?」という気もします。たとえば顔が赤いとか青いとか黒いなど、色をどこまで正確に見分けられるでしょうか? 中城氏は、そういう意識を持って10年以上も患者を見てきたから、わかるようになったのではないかと思うのです。
たくさんの人を見て、判断し、確認することを繰り返すことで、その判断力が身についたのだと思います。ですから、素人がすぐに簡単にできることとは思えません。
もちろん、始めなければ上達しないわけですから、始めて続けさえすれば、同じように見立てられるようになるかもしれません。それが「みる」というたった1つの習慣を身につければ、病気を防げるということになるのでしょう。
「もうひとつは歯科医師として、どうしてもお伝えしたいことです。
なんだと思いますか?
それは、よく噛むこと。あまりにシンプルで誰でもできそうなので「本当に元気になるの?」「それくらいで健康になるなら、誰でもやっているよ」と思うかもしれません。ですが「誰でもできる」と思うだけで実践しないから、自ら健康を遠ざける人があとを絶たないのです。」(p.121)
これは私も同感です。実際、わたしの母は、よく噛むことを実践して、結核を治した実績がありますから。たった1つの習慣は、こちらの方ではないかと感じるくらいです。
「みる」ポイントは実に多彩で、その対処方法も様々にあります。本をざっと読んだくらいでは覚えられないし、いつも本を手元に置きながら自分や家族の状態を「みる」ということは、なかなか難しいだろうと思います。
ですが、それでも「みる」ということは基本だろうと思います。いつも見ていて、何か変化に気づいたら、改めて本を開いて探してみる。そういう使い方であれば、まだやりやすいかと思いました。
2017年03月24日
レイキの教科書
レイキにとっては非常に重要とされるシンボルとマントラを、本で公開したことで話題となった本を読みました。これはある意味で、レイキ界への反逆みたいなことですから。
著者は青木克行氏。オーラレイキアカデミーの校長だそうです。監修は青木勇一郎氏。オーラレイキアカデミーの理事長です。2人は兄弟です。
シンボルとマントラを公開するなんて、いったいどういう了見なのだろう? そういう、ある意味で不審感から興味を持ち、この本を買ってみました。読んでみて、「これはちょっと…」と感じる部分も多々あったのですが、レイキを極めるという姿勢に対しては共感しました。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「今まで、エネルギーを感じることができた人でも、「感じられるだろうか?」と自信がない人の真似をしながら感じようとすると、感じにくくなると思います。」(p.60)
「感じられる」と信じてやってみるから感じられる、ということはあると思います。逆に言えば、「感じられらないのでは?」と疑いながらやれば、感じられないということですね。
オーラレイキでは、まず気やオーラを感じることを重視しています。それによって、どうすれば気が出るのか、オーラが整うのか、その前にオーラはあるのか、チャクラはどうなのかなど、自分で感じられるからです。
こういうことは、たしかに重要なのだろうと思います。特に多くの西洋レイキが、感じることを重視しない姿勢があるため、せっかくのレイキが有効に使われないことが多いですから。
オーラレイキでは、エネルギーを感じられるようになる4つの方法を紹介しています。それは、「背筋を伸ばす」「グーパーする」「両手を擦る」「自信を持つ」です。先ほど紹介したのは、この中の「自信を持つ」という項に書かれていた文です。
これらの方法は、基礎エネルギー量を高めるものだと青木氏は言います。基礎エネルギー量が増えれば、エネルギーを感じられるというのです。
そしてさらに、エネルギーが感じられるようになるための極意を説明します。
「それは【ゆるむ(弛緩する)】ことです。」(p.62)
これは小林正観さんも、超能力を使えるようになるための極意として紹介しています。それにレイキでも、委ねるとか力を抜くなどの言葉で、同じことを求めています。
「そこで、硬くなった心と身体を【緩める】方法をお伝えします。それは【揺する】ことです。イライラしている時や、緊張している時には、ひたすら揺すってみてください。」(p.62)
ボイストレーニングでも身体を揺する方法を取り入れています。揺すったり、揺れたりすることは、気を出すのにも良さそうです。
「多くのレイキでは、ひたすら手当てを続けることを指導されますが、臼井霊気療法学会編「霊気療法のしおり」には、『精神の修養を積むこと』と第4章で説明する『霊授を受けること』が、たくさんレイキを受け取る方法だと書かれています。つまり、臼井先生は手当てではなく、この二つを続けることで宇宙の根源と繋がる回路が開かれ、エネルギーの量が増えると考えていました。」(p.93)
青木氏は、レイキの目的は「手当て」ではなく安心立命の悟りだと言います。そんな資料はどこにもないので、青木氏がどこからその情報を得たのかは疑問です。
そして、「霊気療法のしおり」に上記のように書いてあると言います。たしかに、レイキを強くする方法として、この2つが挙げられています。(p.36 - 42)
しかし、手当ての実践を奨励していることも事実で、これはいわば車の両輪のようにも思います。五戒にしたがって生きることが精神修養であり、手当ての実践ですから。霊授を受けるだけで良いのなら、レイキの実践など不要だと思われます。
「【五戒】を、潜在意識にインプットして、より高い自分を創るためのツールとして使うとしたら、【怒るな・心配するな】と唱えるよりも、日本一の高額納税者の斎藤一人さんが推奨されている天国言葉【ツイテル・うれしい・楽しい・感謝してます・幸せ・ありがとう・許します】などに変えて使った方が、ストレートに潜在意識に入りやすく、より効果的に【五戒】を実践することになるのではないでしょうか。」(p.100)
これは一理あると思います。おそらく「五戒」は、潜在意識のことを考えたものではなく、単に戒めなのでしょう。怒ってしまった時、「あーそうだ、怒ってはいけないのだった。」と自分を戒める。そのためのものだと思います。
「霊気は、手当てを入り口として悟り(安心立命)の境地に至ることが目的だと伝えられています。では、手当てと安心立命の接点は、なんだと思いますか? 色々な解釈ができると思いますが、
一つは、ゼロの状態になることではないでしょうか?
霊気では手当てをやる際に、治そうという意識や意念は持たずに、ただ霊気を中継するパイプになることが求められています。つまり、ただ、淡々と手当てを続け、結果は全て宇宙の流れに委ねるということです。これは、思い通りになってもならなくても、必要なものは、必要な時に与えられるという、絶対の信頼を生み出すトレーニングと心のクリアリングをしているということではないでしょうか?
つまり手当ては、【発霊法】や【瞑想】を兼ねているとも言えます。」(p.245 - 246)
ここでも、目的は安心立命であり、手当ては手段にすぎないというような書き方がされています。私は、何もこのように分ける必要はないと思っています。手当てが悟りへの道であるとしても、悟りは手当てへの道でもあると思います。
「ただし、身体を通したエネルギーには質と流れの影響があるので、回路を開いていない人や、クリアリングしていない人は、相手に粗いエネルギーを流してしまうことになります。また流れの法則を知らなければ、手当をすることでエネルギーを逆流させてしまい、敏感な人は息苦しく感じることもあります。これも、自分たちで、エネルギーの流れを感じて判ったことなので、知らない人も多いと思います。」(p.247)
臼井甕男氏や林忠次郎氏、高田ハワヨ氏などはレイキの回路が開いていると、写真をチェックすればわかると青木氏は言います。しかし、多くのレイキヒーラーは、回路が開いていないのだと。
つまり青木氏は、アチューンメントではレイキの回路は開かないと言い切ります。その一方で、レイキを習うなら回路が開いているマスターを選ぶべきだと。そうしたないと、自分の回路を開かせることができないからです。このことは、非常に矛盾を感じます。
それなら、高田ハワヨ氏から弟子へは、どうやってレイキが伝わったのでしょう? 高田氏は、正しい霊授を教えなかったのか、それとも弟子たちが間違えて覚えてしまったのでしょうか?
また、レイキをすることで様々な効果が出ていますが、回路が開いていないから思い込みにすぎないとか、暗示効果だと断定しているのも疑問です。もし、科学的に極めようとするなら、ひょっとしたら何かあるのかもしれないという態度を持ち続けることは、必要なことではないかと思うからです。
また青木氏は、臼井氏より林氏、高田氏の方が、多くの回路が開いていると言います。それもご自身でエネルギーをチェックしたからわかるのだと。そこから、第4シンボル(マスターシンボル)は林氏が考案したものではないかと推測しています。臼井氏より高いレベルに登ったのだと。
これにも疑問があります。もし林氏が考案したのなら、どうしてそれが直傳靈氣の山口千代子氏へ伝わらなかったのでしょう? 山口氏は、高田氏とほぼ同じ時期に林氏からレイキを習っています。また、そんな高みに登った林氏が、どうして自殺されたのでしょうね?
青木氏が感じたエネルギーを否定するつもりはありませんが、それは青木氏の感覚であって、普遍的なものかどうか何とも言えないという気がします。同じものを見ても「面白い」と言う人もいれば「つまらない」と言う人もいますから。
それともう1つ危うさを感じるのは、すべて青木氏の感覚の中に正解があって、それが誰の目にも明らかなものではないからです。青木氏は、こうすれば誰にもわかるというような説明をしていますが、感覚は微妙で、必ずしも同じとは言えないと思います。したがって、青木氏が「白」と言えば、お弟子さんはみな「白」と言わざるを得ないでしょう。
そして、もし誰にでもわかる感覚なのであれば、少なくとも直傳靈氣で病腺を感じられる人なら、みなわかるはずです。そんなに簡単にわかることが、どうして怪しまれずにいられるでしょうか?
この本では、レイキのシンボルとマントラを公開しています。しかしその内容は、必ずしも一般的な西洋レイキのものでもないし、直傳靈氣の印と呪文とはまったく違っています。使い方の一部は聞いて知っておられるようですが、どこまで体験した上でのことなのか、疑問に思いました。
ただし、青木氏が独自にレイキなどのエネルギーを調べ、実験を繰り返しながら独自の手法にたどり着いたことは、素晴らしいことだと思います。ただそのことを強調するがあまり、他を否定する表現が多いことが、少し残念なように感じます。むしろ過去のレイキとは距離を置いて、新しいエネルギーワークとされた方が良かったのではないかと思うくらいです。
「遠隔ヒーリングとは、目の前にいない人をヒーリングする手法のことです。例えば日本にいながら、ハワイにいる人をヒーリングすることができます。レイキで初めて遠隔ヒーリングを体験した人は、第三シンボルを使わないと遠隔ができないと思い込んでしまいがちですが、実はこのシンボルやマントラを使わなくても遠隔ヒーリングはできます。遠隔能力は、本来誰でも持っているものですが、自分にはできないという制限から、今まで使っていなかった能力の一つだからです。」(p.356)
これは私も同意します。ただ、もしそうなら、どうして遠隔だけが「本来誰でも持っているもの」なのでしょう? レイキの能力だって、そうではないのでしょうか? 回路が開いているか閉じているかと、1か0かで論じることに違和感を覚えます。
少々辛口の論評になりましたが、レイキを極めたいという青木氏の真摯な態度には共感しています。だからこの分厚い本を、最後まで読んだのですから。
私は、あまり盲信するタイプではありません。少なくとも話に筋が通っていると感じないと、信じてみようとは思いません。そして、信じてやってみるとしても、どこかに「他に何かあるかもしれない」という心を持つようにしています。それが盲信から救ってくれるからです。
私は今、レイキを信じて実践しています。それは自分の手や体で感じるものがあり、また、五戒やレイキの仕方が、実に本質的だと理論的にわかるからです。これを続けることで何か違和感を覚え、青木氏が感じたようなものを感じるようになるのかもしれません。
ただ今の私は、病腺は感じられても、レイキの回路が開いているかどうかなどということはわかりません。ですので、この本のことは頭の片隅に置きつつ、レイキの実践を続けようと思います。
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