2015年11月01日
ベーシック・インカム
気になっていた「ベーシック・インカム」を詳しく知るために、原田泰(はらだ・ゆたか)氏の本を読んでみました。
「ベーシック・インカム」というのは、国民すべてに最低限必要なお金を直接給付する、という制度です。
私がこれを知ったのは、「神との対話」によってです。ホリエモンさんの本「お金はいつも正しい」で、それが「ベーシック・インカム」と呼ばれる制度だと知りました。
その後、いろいろ調べてみると、これはなかなか良い解決策だとわかってきました。それで、本当に可能なのか、どのくらいの支給が可能なのかを知りたいと思い、この本を読んだのです。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「大部分の人は、たまたま所得を得る能力が低くても、子どもや女性に乱暴を働いたり、その所得を分別なく使ってしまったりはしない。まともでない人はごく少数だ。しかし、貧困は、ごく少数のまともでない人々の問題ではない。であるなら、貧困とは、大部分の人々には、所得が少ないという問題なのだから、すべての人々にBIを給付し、現在の福祉制度は、まともでない人々にまともになってもらうように尽力するような制度に改組すべきである。児童相談所は、無責任な、あるいは残虐ですらある親から、子どもを断固として守らなければならない。BIは、福祉官僚の仕事を減らし、彼らがしなければならない本来の仕事をする余裕をもたらすはずである。」(p.B)
BIというのは、ベーシック・インカムの略です。
原田氏は、BIは究極のセーフティー・ネットであり、憲法が保証する最低限度の健康で文化的な生活を保証するための、簡便な制度だと言います。
貧困の問題は、要は所得がないという問題なのだから、お金を与えれば解決するのは自明のことですね。
「高い賃金で人を雇っても引き合わないとなれば、企業は人を雇わなくなるだろう。雇わないばかりでなく、海外に工場を移してしまうかもしれない。」(p.18)
貧困問題を企業が正規雇用をしないせいだとして、最低賃金を上げるとか、非正規雇用を増やさないような規制を導入しようとしていますが、そういうことは効果が無いと原田氏は言います。
私も同感です。そんな苦労して益のないことをやるくらいなら、さっさとお金を配ってしまった方が簡単です。
働かなくても生きていけるなら、安い給料で働くことへの不満も減るでしょう。また、労働者の転職に対する精神的な障壁も低くなるので、労働市場が活性化すると思われます。
「要するに、日本の一人当たりの公的扶助給付額は主要先進国のなかで際立って高いが、公的扶助を実際に与えられている人は少ないことになる。これは極めて奇妙な制度である。
(中略)
私は、日本も、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカのように給付水準を引き下げて、生活保護を受ける人の比率を高くすべきであると考える。」(p.25)
ここを読むまでまったく知りませんでしたが、対GDP比で公的扶助総額を見ると、イギリスやフランスが4.1%、2.0%なのに対し、日本はわずか0.3%でしかありません。また公的扶助を与えられている人の総人口に占める比率は、イギリスやフランスが15.9%、2.3%なのに対し、日本はわずか0.7%です。
では、日本に貧しい人が少ないかというと、必ずしもそうではありません。生活保護水準以下の所得で暮らす人が、人口の13%もいるという調査もあります。
「しかし、その保険は、実際には勘定があっていない。より少ない年金保険料を集めて、より多くの年金を支払う制度になっている。保険料は現在の高齢者に支払ってしまい、将来の高齢者はさらに将来の若者に保険料を支払ってもらう仕組みだ。したがって、日本のように将来の若者が減少していく社会では、将来の若者一人当たりの保険料がとめどもなく上昇していき、その負担が不可能になれば、破綻するしかない仕組みだ。」(p.28)
よく知られている年金制度の問題です。現行の年金制度が破綻することは見え見えですが、これを自分が積み立てたものを受け取る制度に変えたとしても、まだ問題があります。
最近、年金資産の運用で10兆円が消えたというニュースがありましたよね。公務員が国民から預かったお金を、運用によって利益を出そうとすることが間違っています。失敗しても、誰も責任を取らないからです。せいぜい担当者が、良心の呵責に耐え切れずに自殺するくらいなものでしょう。
この問題も、子どもから老人まで、すべての国民がBIを受け取る制度にすれば、消えてなくなります。せいぜい前年度に徴収した税金を、翌年度に支給するだけのことですから、運用する暇もありません。
「だが、政府が個人の名前と住所と年齢を知ることがプライバシーの侵害だというなら、そもそも福祉国家は成り立たない。個人を保護するためであるから、政府がその個人の名前と住所を把握することに意義はないだろう。」(p.33)
マイナンバー制度への批判に対して、原田氏はこう反論します。
私も同感です。BIを導入する時、すべての国民の銀行口座に振り込むことになるのですから、銀行口座も含めて政府が把握しておく必要がありますからね。
国民の側も、お金をもらえるのに情報を教えないなどと、おかしか考え方をするはずがないと、原田氏は別のところで言っています。
また、現行の年金保険料は、負担の上限があることを指摘しています。もしこれをBIに替えれば、税金は所得が多い人ほど多く納めるので、今の年金制度より良いと言います。
「一方、税は基本的には所得の高い人ほど負担する額が大きくなるわけだから、税による負担は、これまでよりも累進的になる。税による安心の制度の利点は、そこから漏れる人がいなくなることだ。税によってこそ本当の国民皆保険制度が実現できる。」(p.34)
年金保険料の未納問題も、税にすれば解決します。また、税務署以外の年金保険庁などの無駄な公務員や、無駄な作業もなくなるわけですから、コストも低く抑えられるというわけです。
「何よりも問題なのは、現在の日本の政策が、現実に貧困を減らしていないことである。
貧困の理由は、仕事のないこと、失業または疾病などにより働けないこと、働いても給与の低いことである。」(p.35)
OECDのレポートで、日本の相対的貧困率が先進14カ国中2番目に不平等だとなっているそうです。
私は最初、その理由がよくわかりませんでした。でも数字は間違いありません。おそらく、貧困層が多いのです。
「相対的貧困率とは、所得が高い人から低い人を並べてちょうど真ん中にある人の所得(中位所得)の半分以下の所得しかない人の比率である。」(p.35)
つまり、中位所得の所得額の半分以下の所得の人が多いのです。これは相対的なものですから、最下位と最上位の差はあまり関係ありません。所得の開きではなく、貧困層の人数が多いことが影響しているのです。
「しかし、最終的な可処分所得で不平等になるのは、児童手当、失業給付、生活保護などの支給額が少ないからである。例えば、前項で述べたように、日本の生活保護制度は、支給額は高いが限られた人にしか配らないという奇妙な制度となっている。また、失業給付制度も、職を失うことの少ない正社員には厚いが、職を失うことの多い非正規社員はその制度に入っていないという、これも奇妙な制度になっている。このような制度の下では、可処分所得で見た相対的貧困率が高くなるのは当然である。」(p.37)
つまり、本来、所得再配分の恩恵を受けるべき人に、それが届いていないということですね。
受け取れるのはごく一部の人で、本当にそれを必要としている多くの人に、その恩恵が届かない制度になっているのです。
本書では、第3章においてBI制度の実現性を検証しています。
「基本的にすべての人の年間所得は、「自分の所得×〇.七+BI八四万」となる。所得のない人も八四万円の基礎所得を保証されるが、自分の得た所得の三割を課税される。自分の所得が二八〇万円になると、その三割の税=八四万円を取られて、基礎所得と税が一致する。」(p.128)
実にシンプルですね。国民全員が年84万円の所得を無条件に受けとります。ただし未成年の子どもは、年36万円で考えているようです。
その代わり、扶養控除、基礎控除などは廃止して、すべてBIで代用することになります。
課税もシンプルにBI以外の所得の30%です。これなら計算も簡単だし、源泉徴収も単純ですから、取りっぱぐれもありません。
この試算した方法であれば、現在の予算からの組み換えで達成できると、原田氏は説明しています。
「BIは、移民を制限することになる。年八四万円のBIは、日本の生活コストが高いことを考えても、貧しい国の人々には魅力的なものとなりうる。移民は、年五〇〇万円以上を間違いなく稼げる人に限定して認めるしかない。福祉国家は、移民を制約する国家であることを、むしろあらかじめ明らかにしておくべきだ。」(p.152)
たしかに、BIだけを目当てに貧困層が流れ込んでくれば、BI制度そのものも成り立たなくなりますからね。
私はBIの支給は、日本国民であることに限っても良いと思っています。あとは、永住権のある人をどうするかですね。
「私は、世間の心配とは異なり、広く薄く配るバラマキ政策が悪いと考える根拠は何もないと思う。」(p.166)
「バラマキ=悪」と考えられていますが、そうではないと言います。目的に適うかどうか、その目的を達成するのに効果的かどうかで、政策を判断すべきだと。
たしかに指摘されてみれば、その通りだと思います。
「会社ではなく、国家が、社会の安心を直接保証すべきであり、貧困そのものも解消すべきである。国家は、すでにそのような力を持っている。現在、国家がなしているさまざまな業務をBIの支給に置き換えれば、国家は貧困を解消することができる。資本主義の矯正をもっとも効率的に行えるのがバラマキであり、究極のバラマキとしてのBIである。」(p.178)
貧富の格差是正に使われている様々な政策予算、および年金などの社会保障をBIに置き換えることは、十分に可能だと試算しています。
シンプルな制度によって、貧困そのものを直接的に解消するBIという制度。私もぜひ、このBI制度が実現してほしいと願っています。
2015年11月19日
神話のマネジメント
神田昌典さんの本を読みました。
神田さんはマーケッターであり、経営コンサルタントでもあります。
そんな神田さんの本を、これまでにも何冊か紹介してきました。「成功のための未来予報」、「マンガでわかる非常識な成功法則」、そして本の紹介ではありませんが、神田さんが提唱しておられる全脳思考(フューチャーマッピング)についての「直観を使う全脳思考」です。
神田さんは、私のメンターの吉江勝さんの師匠になります。そういうこともあって、本を読む機会も多いのです。
それと神田さんのマーケティング手法は、ある意味でスピリチュアルです。どこか通じるところがあるのです。
それは今年、神田さんのセミナーに参加したときに強く感じました。また、はせくらみゆきさんとコラボして、「おとひめカード」を販売されていることにも表れてます。
そんな神田さんの本なので、幸せになる考え方という点でも、参考になると思います。
ではさっそく、一部を引用しながら内容を紹介しましょう。
「いったいなぜ、経営者は無価値観を感じているのだろう? この原因は、経営者の幼い頃の家庭環境に根ざしている。
分かりやすく言おう。
親が厳しかったのである。親が厳しくて、「お前はダメだ」と言われ続けたのである。すると、自分は人より数倍努力しないと価値がない人間だと思い込む。このように無価値観が刷り込まれていく。」(p.58)
これは、何か問題が起こった時、それは自分に何かを気づかせるためだという話から始まっています。
会社がある規模から成長しないのは、経営者が無意識に人を育てないように、いい人を採用しないようにしているからだと。
なぜなら経営者は、いい人を部下に持つと自分の存在意義がなくなると感じてしまうからだと言うのです。
つまり会社がある規模から成長できないという問題は、経営者が幼い頃から培ってきた、自分の無価値観にあるというわけですね。
このような対人関係の連鎖は、ずっと続くことになります。このことから神田さんは、私たちは同じパターンを繰り返すと分析しました。それが「神話パターン」なのです。
「この方法論は、問題は起きるパターンが決まっているということが前提にある。結論から言えば、問題は神話の形式に沿って起こるのである。」(p.76)
「神話パターン」は、次の3つステージからなります。
第1幕:出立・離別・・・「偏狭ないままでの認識」「変化への拒否」「メンターとの出会い」「変化への第1歩」
第2幕/前半:試練・・・「テスト 最初の変化への挑戦」「大きな変化への準備」
第2幕/後半:通過儀礼・・・「試練 大きな変化」
第3幕:帰還・・・「努力 進歩と後退」「復活 変化への再挑戦」「クライマックス 最後の変化」「宝を持ち帰る 最終的な解決」
「ハリウッド映画は、前ページの図のように3幕構成に分かれていて1幕1幕に必ず障害が起こる。そして、この障害が、われわれの人生においても同じようなタイミングで起こるのである。」(p.78)
このように、私たちの人生においても、同じようなパターンが繰り返されると言います。
したがって、こういう構造を知っていれば、問題が起こっても解決策を得やすいと言います。
その方法は、次のミラクル・クエスチョン(魔法の質問)をすることです。
「・いったい、この問題によって私はどんな学びを得ようとしているのか?
・この問題が第1幕の終わりだったとしたら、第2幕にはどんな問題がくるのだろう?」(p.79)
脳は、質問を与えれば答えを探してくる、と神田さんは言います。
そして早い段階で学びを得れば、その後の問題は起こらないと言うのです。つまり、二度あることは三度あると言うのは、最初の段階で学ばないからですね。私の失恋体験からしても、これは正しいと思います。
経営者の問題としては、会社が上手くいくと家庭が崩壊するということが多々あるそうです。
仕事と家庭のバランスをとることが重要なのですが、これはなかなか難しいことです。そこで神田さんは、次のように言います。
「もう1つは、問題があったっていいじゃないか、と開き直ることです。問題が生じても、それは自分の人生にとって必要事項だと開き直って、その問題に立ち向かう勇気を持つことです」(p.125)
たしかに問題が起こるのは、すべて自分のためです。起こることは必然で無駄がないのですから。
「人生はそもそも矛盾を抱えたものです。その矛盾を内包しているから、その人が成長するために、障害という形で課題を提出する。その課題に対して、結果を自分の意思で選択していくことが大事なのです。仕事を重視する人生を選択するか、家庭を重視する人生を選択するか、それともバランスを重視する生活を選択するかです。」(p.125)
どの答えが正解とは言い切れません。どの選択にも一長一短があります。そういう矛盾を内包する中で、自分にとってのベスト、つまり自分らしさを選択するのです。
「社員は、社長の器に合った人しか集まってきません。社員は、社長にとって必要な課題を与えるために、その会社に集まってくるのです。」(p.131)
スピリチュアルな考え方ではよく言われることですが、改めて自分につきつけなければならない考え方だと思いました。
神田さんは童話「桃太郎」の登場人物を例に、組織の問題を取り上げます。
桃太郎は起業家です。次に、実務家としての犬が仲間に加わります。次が管理者のさるで、最後がまとめ役のキジになります。
「起業家と管理者は、水と油ですから、通常は混じり合いません。そこで、双方が大きな器で、お互いを認め合って、協力していく関係を作り上げる必要があるのです」(p.151)
これは何も4人必要だという話ではありません。4つの面があるということで、時には1人で何役もこなすことがあると言います。
「考えてみれば、夫婦関係というのも、会社経営と似たところがあります。夫がやることに対して、妻がNOと言ってくれて、最大の批判者になってくれるからこそ、夫の事業が成功する。」(p.151)
つまりこれは人間関係全般に言えることなのです。私たちは、こういう人間関係を利用することで、自分の進化成長に役立てようとしている、と言えると思います。
「成長し続ける組織は、必ず成長がストップします。ですから、これから発展する企業というのは、成長ではなく、幸福を基準にして経営を進める会社なのです」(p.165)
これは企業だけでなく、国も同じだと思います。日本という国が、これからまた高度成長するのは難しいです。人口が減っていく社会では、経済成長どころか低下していくことも考えられます。
そういう成熟した社会では、成長に救いを求めるのではなく、方向性の転換が必要なのだと思います。
「教えているうちに分かってきたのが、能力を発揮するうえで、「難しい」という言葉が、きわめて致命的な言葉であるということである。「難しい」と口に出して言うことは、難しいということを今度は自分で証明し始める。だから、「こんなのできない」と思ったとたんに、本当にできなくなる。」(p.226)
このように、言葉の重要性を語ります。やはり使う言葉が、現実に大きな影響を及ぼすのですね。
「この病気を治す、とても簡単な方法がある。
「難しい」という口グセが出たとたん、「もし簡単だとすると……」という質問をしてみる。「分からない」という口グセが出たとたん、「もし分かるとすると……」という質問をする。すると何も問題なくできてしまう。」(p.227)
ここでも、質問することがポイントなのですね。解決策を考えるのではなく、まず適切な質問をするよう、心がけることが重要なのです。
「だから、儲けたいと思うのだったら、「自分は職人だ」とか「技術者だ」というセルフイメージだけしか持っていないと致命的なことになる。目標に応じて、それを達成できるように自分に対するイメージを変えていかなければならない。
つまり、自分の目標を楽々と達成するために、自分に都合のいいセルフイメージを持つのである。」(p.272 - 273)
自分の持つセルフイメージ以上には成長できないと言います。ですからまず、自分のセルフイメージを拡大することが大切なのですね。
このように、企業経営だけでなく、人生において役立つヒントが得られるのが、神田さんの本の特徴だと思います。
神田さんは特に、「直感を大切にする」ようにと言います。フューチャーマッピングにしてもフォトリーディングにしても、ポイントは直感にあります。直感とは、魂の導きとも言えますからね。
よりよい人生のために、神田さんの本は、大いに役立つと思います。
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