性的なことを綴った本の中で、かつてこれほど感動した本が他にあっただろうか?
タイトルだけ見ると、何やら怪しそうな感じもする。
実際、障害者のための性を介助するするボランティアがいて、それを取材して書かれたことも確かだ。
しかし、この本の主題は、そんなところにはありませんでした。
その簡潔なまとめが、本のあとがきに書かれていました。
引用しましょう。
障害者の性をめぐる取材は、私自身の性の彷徨(ほうこう)でもあったのかもしれない。
取材を始めた二年半前には、「障害者の性」はタブーであり、なにか触れてはいけないものであるような思いを抱いていた。だが、言うまでもなく、性とは人間の当然の欲求であり、それをタブーの闇に押し込めて、見ないふりをしているのは何かが違うと思い、取材を開始した。
(中略)
障害を持っていると不自由なことも多いことは事実だろう。しかし、それら障害から来る不自由さの壁を一枚一枚引き剥がしていくと、障害者、健常者という境界はどんどん曖昧(あいまい)になっていくような思いにとらわれた。そして、最後に残ったものは、障害の有無とは関係ない、私たちひとりひとりにも通じる性の問題だったのではないだろうか。
(中略)
取材、執筆にわたって、いつも私の胸底に響いていた言葉は、取材初期に出会った障害を持った女性の一言であった。
「性とは自分が生まれてきた意味を確認する作業である。」
深い、実に深い洞察。
もはやこれは哲学や宗教とも言えるほど、人間の心の奥底にある価値に迫るもの。
それを1人の女性作家がやったのだと思うと、私は感動せざるを得ません。
私が、著者の河合香織さんに深く共感します。
こういう本は、ぜひ青少年にも読んでほしい。
性を知らずして大人にはなれない。
また、もうすでに大人の人にも読んでもらいたい。
自分自身が性についての確固たる信念がなければ、どうして次の世代に人生の素晴らしさを伝えられるでしょうか。
素晴らしい本との出会いに感謝します。
